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ももは気にくわない表情をしながらも承知した。
(家に置いてはきたものの本当に大丈夫か?このままおとなしくしてりゃいいんだが…。いやいや、俺が信じるももを信じろ!あいつは俺の愛犬で、でも、人間で…あれ?ってか何で人間なんだよ!?)
そう思いながら圭はバイト先へ向かった。
ちなみにバイト先は家から少し行ったところの喫茶店である。
いつも圭は学校帰りや休みの日に3時間程度働いていたが、今日は前もってマスターに仕事を一日中させてもらえるように頼んでおいた。
圭「はぁ。朝から仕事なんて鬱だ…」
圭は最後に首の蝶ネクタイをつけてロッカーについている鏡で確認する。
姫百合「あ!圭くん!」
大人びた女性の声が聞こえる。
圭「あ。姫百合さん、おはようございます」
楢 姫百合。
バイトの同僚であり、年は二年先輩である。
圭「今日は午前ですか?」
姫百合「うん!休みの日でも特に何もすることないからね。バイトした方が楽かな、ってね。圭くんは?」
圭「え?あ、ああ、お、俺もそうです!そうなんですよー、どうせ何もしないですし、身体動かそうかなって」
無理して嘘をつく。
姫百合「えらいね!私も見習うよ!」
圭「は、はは…」
少し罪悪感が込み上げた
最近では個人の喫茶店が少なくなってきた中、この喫茶店は不思議と客がきていた。
この店の名前はプリンセス、とネーミングセンスのかけらのない名前であったが、本格的なヒラヒラのウェイトレス服なのでそれを目当てにくる客も少なくない。
マスター「おはようございます」
圭「あ、マスター、おはようございます」
マスター。この喫茶店のマスターである。
ちなみにお笑い好き。
髪はなく、身体がガッチリとしていて一見こわく聞こえるが、優しそうな顔なので、そんなことはない。
マスター「しかし、頑張りますね。一日中働いてくれるなんて」
圭「た、たまには体を動かさないと鈍りますからね」
そう言って圭はテーブルを拭く。
マスター「偉いですね本田くんは」
圭「は、はは…」
罪悪感が膨らんでいく。
マスター「あ、そういえば」
圭「?」
何かを思い出したかのようにマスターは一言いれて、
マスター「本田くんにお客様が来ていますよ」
圭「え?お客?」
ギー、と圭が出てきた更衣室のドアが開く。
圭「!?!?!?」
もも「やあ」
ももは手を挙げてあいさつする。
圭「は!?なんでももがここにいるんだよ!?さっき家にいたはずなのに」
(さ、最悪だ…。しかも、)
姫百合「ひ!圭くん…あ、あれ…何?//」
姫百合はももの首にぶら下がっているものを指しながら赤面する。
(ああああああ!!首輪がぶら下がってるよ。何あれ?って首輪だよ!何で首のサイズ合わないからってぶら下げてきてんの!?)
圭は頭がおかしくなりそうだった。
いっそおかしくなった方が気が楽だったが。
圭「ち、ちが…」
姫百合「ま、まあいろいろな人がいるから…ハハ…」
苦笑いしながら姫百合はそう言って、テーブル拭きに行った。
(お、終わった…。完全に引かれた…)
圭はただ、ただ白目だった。
圭「何でここで働いてるってのが、分かったんだよ。てか、俺よりも出る時家にいたよね?」
もも「付いてきたからだよ」
圭「なるほど…っておい!」
どうみてもおかしい。
付いてきたんならなぜももが更衣室にいくまで気づかなかったのか。
もも「いいじゃん細かいことは気にしない」
圭「するわっ!」
圭は即つっこんだ。
マスター「それよりも、ももさん、バイトしませんか?」
圭「え、ええっ!マ、マスター!ってかもう着てるじゃねーか!」
更衣室から出てきたももはもう着替えていた。
圭「着替えてるなら首輪もはずせよ!」
もも「やる!」
圭「聞いてないし…」