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(どこに行くんだ?)


圭は商店街まで尾行しにきた。

まだ外は真っ暗だ。


圭「ん?」


冷夏の様子がおかしい。

冷夏は立ち止まっていた。


(れ、冷夏さん…!)


冷夏が黒い服の男に囲まれている。

よく見ると冷夏が何か話しているのに気づく。


圭はもう少し様子をみることにした。



男A「冷夏お嬢、調査は順調ですか」


声の低い黒ずくめの男がそう言った。


冷夏「ん?あ、ああ…」


冷夏はそれを素っ気ない返事で返す。


男B「冷夏お嬢、今日もいつもの調査しておきやした」


冷夏「ご苦労」


冷夏は周りを見る。

ここは夜といっても商店街。

人通りがないとも限らない。


冷夏「おい!話すなら裏通りで話せ」


そう考えた冷夏は黒ずくめの男たちにそう言う。


男たち「はい、お嬢!」


圭「あっ」


圭はよく話が聞こえなかった。


だが、冷夏が裏通りに入っていく。

絡まれたのか、と圭は身構える。


(くそ!冷夏さんは可愛いから、きっと…

あんなことや…

こんなことや…

そんなことをされるに違いない!!)


鼻を押さえながら圭はそんなことを考える。


いくらなんでも冷夏さんがあの人数を倒すのは無理ではないか。


圭は見ているだけじゃあいられなくなった。


だが相手は黒ずくめだ。


(何なんだ?)


圭は恐くてたまらない。


(落ち着け…)


思いきり深呼吸をする。


(もうどうにでもなれ!)


後先など見ていない。

だが、時間はない。

圭は飛び出す。

無心に、無謀に。



圭「まて!」


男C「何だ!?」


冷夏「け、圭!?」


圭「おまえら冷夏さんを離せ!!」


冷夏「圭、これは…」


圭は冷夏の話も聞かない。


圭「ウォォォォオオオオ!!」


男C「ガハァっ…!」


冷夏「…」


念のためにもってきておいたバットで黒ずくめの一人を殴った。


圭「冷夏さん!」


男D「本田圭か、ちょうどいい…。ここで試してやる」


そう言って男Dは小刀を手に持って構える。


冷夏「…」


圭「何故俺の名前を…。くそ、おまえら!消え失せろ!冷夏さんから離れろォォォオオオオ!!」


圭はバットを持ち走る。





その時。


冷夏「やめろ、お前ら!!」


言ったのは冷夏。

あまりの力強い声にそこにいた者、全員が圧倒されて動きがとまった。


冷夏「お前らは手を出すな」


冷夏はそう言って、圭の前に立ちはだかる。


圭「れ、冷夏さん…。お、お前らって…?」


圭には理解ができなかった。

さっきまで冷夏が言う『お前ら』から助けようと、死ぬ気で戦っていたからだ。


そして、冷夏はさらに圭を混乱させることを言う。


冷夏「消えるのは貴様だ」


確かにそう言った。

圭に向かって。


今度の圭は『理解ができない』から『信じられない』になった。


圭「えっ、俺?」


それしか言葉がでなかった。


冷夏「貴様……、よくも私の舎弟たちを…」


圭「どうしたんだよ!冷夏さん!!」


今度浮かんできた言葉はそれだけだった。


圭は『冷夏を助けることよりも『冷夏から逃げたい』ということしか頭の中になかった。


そのくらい、今の冷夏が恐かった。


だが、考えている暇はないのだ。

冷夏は向かってくる。


すぅ…と圭が息をした瞬間、冷夏は圭の目の前に立った。


圭「ひっ…!」


冷夏は圭の顎に下から右の手の平をつけて左の手で右のひじを支えるようにした。


とっさに圭は

『危ない!』

とおもった。


しかし、遅い。


冷夏「必殺!首頭血掌!」


右を思いきり冷夏は突き上げた。


圭「ワァアアアっ!」


圭はとっさによける。

もはや、反応して避けたというより条件反射で避けたようなものだ。


(この人、強すぎる…)


冷夏の戦いぶりは見たことはある。

しかし、敵ともなると勝てる気がしない。


(このままじゃ、殺される!)


圭はそう思った。


(でも、なぜ……!)


確かに殺されそうではある。

しかし、圭は何かただの殺気ではないと思った。


冷夏「私は朝倉家の血筋である麻倉組の長の娘…」


冷夏はそう言う。


圭「あ、麻倉組…!」


極道の娘。

聞いたことがある。

麻倉組というのは日本の中でも一位二位を争う組織。


冷夏「私は西軍の娘!おまえなどの敵は相手ではないわ」


冷夏はまたもや誰をも圧倒しそうな勢いで言う。

しかし、圭は違和感を感じる。


なぜか、冷夏の声に勢いがあるなら誰にだって殺気くらい感じられるはずなのに、冷夏の顔をみると、何も感じられない。圭は今まで声に圧倒され、恐くて顔を見られなかったが、勇気をだして冷夏の顔をみた時にそう思った。


つまり、『外見からは殺気を感じられるが、瞳の奥からは何も感じられない』

ということだ。


いや、そうではない。瞳の奥からは何も感じられない訳ではなく、そこからは寂しさを感じられたような気がした。


冷夏「な、なぜ。かかってこない…!」


圭「…」


圭はどうしても冷夏とは戦えなかった。

『恐い』から『助けたい』に変わった。変わったというよりも戻った。


冷夏「くっ、まあいい。今度あったときは貴様たちが壊滅するときだ」


冷夏は圭の前から去ってしまった。


圭「…」


圭の顔つきが引き締まる。

少年の中で何かが変わる。

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