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秋次「僕の先祖、小早川秀秋は豊臣秀吉様の正室の高台院の兄の5男として生ました。秀吉様は大層気に入られて秀秋を養子に育てました。昔から武にも秀でていた秀秋は、いづれは小早川の養子になり、筑前、筑後、肥前の一部30万7000石の筑前名島城主までも名を連ねたのです。しかし、ある事をきっかけに小早川一族はその繁栄を失ってしまった。それが」
秋次は少し間をおいて言った。
秋次「関ヶ原の合戦なんです」
圭「…」
秋次「実は秀秋は以前から東軍と内通していたのです。"この戦で秀秋殿が加勢してくだされば、形勢など関係なしに東軍は勝利する"と。しかし、下手にどちらかにつくと、負けてしまった時が恐いと思った秀秋は思ったんです。東西の形成で決めようと。
東軍が有利の時は東軍につく。
西軍が有利の時は西軍につく。
それだけのことです。
しかし、そう上手くはいかなかった。
関ヶ原が始まり、形勢は西軍に傾きつつありました。
秀秋はやはり寝返りは止めようと思っていた時に。
東軍が脅しをかけてきたのです。
やむを得ず秀秋は東軍に寝返り、東軍は勝利。しかし、西軍だった外様は小早川を裏切り者扱いしだしました。
あたりまえです。
もとは秀吉に可愛がられていたんですからね。西軍からの信頼も大きかった。
ずっと呼び続けられましたよ。
『裏切り者』と」
秋次「『裏切り者』と呼ばれる一族の気持ちはあなたには分からないでしょう。健やかに育ってきたあなたには」
裏切り者。
一族自体が呼ばれる。
圭にらそんなことはさっぱりだ。
圭「…分からないな」
秋次「…」
秋次はやっぱりと思っているのだろう。
圭「だから何なんだ」
秋次「…は?」
秋次は突然予想もしない答えに一文字しか言葉がでない。
圭「じゃあお前が秘密を打ち明けてくれたからいうが、俺は記憶喪失だ」
秋次「…ふざけているんですか」
秋次は少し機嫌が悪くなる。
圭「至って本気さ。3年前以前の記憶がまったくない」
秋次「…それが本当だとして何なんですか」
秋次は圭の言っていることがよく理解出来ていないようだ。
圭「お前に俺の気持ちが分かるか」
秋次「はっ?」
圭「俺の気持ちが分かるのか?記憶喪失になったときに親もいなくて、初めに見た者が警官だった俺の気持ちが」
秋次「…え。警官…」
秋次は少し本気の顔になる。
たぶん圭に起きたことは普通のことじゃないと察したのか。
圭「分かるわけないよな。じゃあ俺もお前のことなんて分かるわけないわな」
秋次「…」
あまりの正論に秋次は言葉を失う。
圭「正直な。俺は恐かった。親という存在を自分はしらない。そもそも自分は何なんだってね」
秋次「…」
孤独、絶望、焦燥。
目が覚めた圭は分からなかった。
何がなんだか。
よく分からない。
この不安の中で一人生きていかなければならない。
正直、嫌だった。
圭「でも、俺は変わった。一匹の愛犬のおかげで」
そうこの世界に生きているのは人間だけではない。
圭の家には一匹の犬がいた。
圭「愛犬は俺が不安で泣いているときも、孤独に負けそうになったときも、ずっと傍にいてくれたんだ」
秋次「…」
ただの犬。
されど犬。
圭は孤独ではなかった。
愛犬がいる。
犬だって生き物。
人間を元気にすることもできるのだ。
秋次「だからといって僕に犬でも買えと?」
秋次はまだ分からない。
圭が言いたいのはそんなことではないのだ。
圭「誰もそんなこといってねえ。ただお前には傍にいてくれる友人が必要だ」
秋次「ゆ、友人…?」
秋次は目を丸くする。
秋次には程遠い言葉だった。
ずっと秀康とここで暮らしてきて、誰にでも警戒心を持っている。
圭「俺がなるよ」
秋次「は!?」
圭「正直一族がどうちゃらこうちゃらとか知ったこっちゃない。そんなこと言う奴がいたら俺が槍で叩き斬ってやるから」
圭はそういって持っている棒で叩き斬るポーズをする。
秋次「…は」
秋次は初めてだった。
こんなに思ってくれた人が出来たのは。
秋次「ハハハハハッ!」
秀康「…!」
圭「え!?何ッ!?」
秋次は大声で笑っていた。
秀康はかなり驚いていた。
秋次「なんか、あなたの一匹の犬で何やらとかの話で一族の恨み何かどうでもよくなりましたよ」
圭「おい。俺のせっかくの素晴らしい思い出をどうでもいいゆうな」
秋次「はいはい。すみません」
秋次は笑いながら謝った。
秀康「どうじゃ、面白い奴と思わんか?」
秋次「はい。ライバルとして、友人として、おじ上、僕もこいつといっしょに戦おうと思います」
秀康「よし!!いいじゃろう」
圭「…」
秀康の"よし"という言葉にかなり感情がこもっている気がした。
直接は失礼なので敢えて言わない。
秀康「圭…だったかのう?おまえにもう何も言うことはない…」
圭「おい、弟子の名前忘れてその言い草は何なんだよ」
圭は冷静に突っ込む。
秀康「ここの山にいることがすべて修行じゃぞ」
圭「ただ俺を苦しめただけじゃねぇか」
秀康「はよ、帰ってくれ」
圭「だから…」
秀康「はよ!!」
圭「…」
圭の収穫は小早川秋次という友人ができたことだけで、身体的な収穫は何にも
なかった。
秀康「後は任せたぞ~秋次」
秀康はやる気のない声で秋次に手をパタパタと振った。
秋次「ハッ!おじ上!」
圭「おい、まだ俺の話は…」
秋次「早く下山しましょう」
秋次は圭の手を引っ張った。
圭「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ…」
秋次は圭を引っ張って木を伝いに山を降りていった。
秀康「やっと終わった…いや~めんどかったわい」
秀康は近くにある木のいすに座る。
秀康「これで生活費一人じめじゃあああああアアアアアア!ジジイtimeきたあああああ!」
秀康は一人で興奮する。
それとは裏腹に山は静けさを変えることはない。
秀康「…」
秀康の興奮は冷めた。
秀康「これはこれでやっぱり寂しいのぉ」
やはり孫はかわいい。
巣だっていく孫を見れたのだ、これ以上の幸せはないだろう。
秀康は静かに小屋へと入っていった。




