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圭は不思議な感覚だった。
(なんだこの感覚…。凄い体が軽くて、何か懐かしい)
そして、流れこむ記憶。
黒髪の男、写真でみたことがある。
(と、父さん…?)
圭の目の前の敵に集中しなければならない。
だが、それどころでもない。
この感覚に圭は懐かしさ、そして自分らしさを感じていた。
「圭。………………………」
父から教えられたこの気持ち。
これは代々伝えられてきた。
圭が自分が分からなくなる。
この状況が本当の自分なのか、普段の自分が本当の自分なのか。
それゆえに今はこの言葉に従うしかない。
統一「ヤァァ!!!」
統一は圭に突っ込む。
三節棍は圭の腹を狙っている。
腹に当たれば当然ただではすまないだろう。
だが圭は言葉に従うしかないのだ。
圭「槍は突くものじゃない…」
圭はボソッと口に出した。
圭はほうきを頭の上まで振り上げる。
何を言っているのか?と言わんばかりの顔で統一は突っ込んでくる。
そして、圭は叫ぶ、周りを気で倒さんばかりの大声で
圭「斬るものダァァァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
統一は思いきり降り下ろされるほうきに目をつむってしまった。
統一「…え?」
統一は茫然としていた。
三節棍が折れていた。
感覚がなかった。
それとも認めたくなかったのか。
統一はどういう状況かつかめなかった。
圭「どういうつもりだ!」
圭は言う。
圭「なんで俺を襲うんだ?」
統一「…あ、」
圭「なんで俺を殺そうとする!」
同じようなことを二回言った。
一回目は普通の口調で言ったが、二回目は少し命令する口調でいった。
もも「…」
冷夏「…」
ももも冷夏も一瞬の出来事にビックリして、声もでなかった。
統一「分かった」
統一が口を開く。
諦めたような顔で。
統一「お前…。関ヶ原の合戦のことは知っとるか?」
圭「あ、ああ…。あの徳川家康と誰かが戦ったっていう?」
統一「ああ。東軍の徳川と西軍の石田や」
圭「それがどうしたんだよ?」
統一「…」
少し間があった。そして、言う。
統一「また、始まるんや」
圭「え?」
冷夏「…」
圭は何を言っているんだ?と言わんばかりの顔をする。
現実ではありえないというより、もはやただの嘘にしか聞こえない。
だれも信じるはずのない領域である。
圭「な、何でそんなことをするんだよ!?昔の出来事だろ?そんなの起こるわけないだろ」
普通の反応はこれだろう。
もはや笑い話である。
統一「まだ西軍にはたくさんよく思わん者がおる。今まで争いがなかった訳やない…」
冷夏「裏では争いがあったとしても表に出さなければ争いにならないからね」
冷夏は圭の視線にウインクで応える。
統一「まさにその通りや。今まで400年争いがあった。両親もそれで殺されてな…。表には強盗やら通り魔やらの犯行と適当に出されただけや。でも、俺は見たんや…」
統一は思いだしたくないことを言ってしまったのか、統一はどことなく涙目だった。
統一「俺の両親が…オトンとオカンが殺されるところを」
圭「…」
全員は黙り込む。
信じる、信じないではなく、殺す、殺されるの世界。
圭はそんなことを考えるだけでも周りが、世界が変わる。
統一「お前は徳川守護神本多忠勝の末裔、お前を倒せば士気が下がる。徳川は降伏して、無駄な戦いを避けられる。そう思ったんや」
圭「…」
(ということは俺はこの戦いを本多忠勝の末裔として参加しなければならないのか!?)
とても信じられない。信じたくない。
だが、それがもし現実ならば、
圭「もしそうだとして、俺を倒してもその元凶を止めないと関ヶ原は終わらないんじゃないのか?」
統一「…」
統一は黙り込んだ。
圭の言っていることは正論だと思ったのだろう。
冷夏「確かに一時的に終わってもまた同じ事を繰り返すだけだわ」
冷夏もその意見には同意する。
統一「でも、俺みたいに悲しむ人を見たくないんや」
圭「…人は何かを守るために戦う」
統一「…!」
圭「それは、俺だってそうだし、みんなだってそうだろ」
統一「…」
圭の言葉に統一は反論ができない。
それが正しいからだ。
圭「あなたは無駄な戦いを避けたい、そう言ったな?」
統一「ああ」
圭「それも何かあってそういうことを思うようになったんじゃないのか?」
統一「…!」
その何か。
それを失って統一はこのふざけた世界、争いを未然に防ごうと思った。
圭「大切なものを失っていない人達はまだそんなことを思わない。俺だってそうだ。いや、そうじゃないのかもしれない」
圭は記憶がない。
もしかしたら欠けた記憶の中にはその何かがいたのかもしれない。突き動かす何かが。
冷夏「圭?」
不安そうな顔に冷夏は疑問をもつ。
統一「おまえ…」
圭「それにあなたのように争いを好まない人もいる。それは事実だ。なら、せめて分かっていない人に目を覚ましてもらうしかない」
統一「…」
統一は黙る。
この男は正しい、そう思っているのだろう。
圭「そして、争いはもう二度としない、そう思わせるしかない。そのためには東西どっちにつくかは関係ない」
統一「…!」
冷夏「えっ、じゃあどうするつもり?」
圭「東西どちらにもつかない。俺はこの争いを止める」
もしこういう争いの中にもう自分が飛び込んでいるのなら、東西どっちにもつきたいとは思わない。
ただ今を守るために、この争いを止める必要があるのは事実だ。
統一「はあ…」
統一は呆れているのか、よくわからない表情をする。
冷夏「そ、そんな…」
もも「かっこいい!」
圭「…」
発言に後悔した訳ではない。
だが、簡単にこんなこといいのかと思った。
統一「…」
統一は下を向く。
圭は心配になる。
圭「と、統一さ…」
圭は統一の前にたって心配そうにそう言う。
統一「ようそんなこと、ゆうたなぁ!俺感動したわー!もう死んでもいいってことやな?」
統一は顔を上げるとかなり上機嫌になっていた。
バンバン、と圭の背中を叩く。
圭「え?いや、そんなこと一言も…」
(めちゃくちゃ感動してるし!しかも死ぬ!?えっ)
統一「もう遅いわ」
圭「えっ?」
統一「統一流!影手裏剣!雨天投げ!」
そう言うと統一は学ランの裏にあった手裏剣を取り出し、上空へ投げた。
上空に上げた手裏剣は複数に分身し、雨のように降り注ぐ。
すると周りの民家から幾つか音が同時に聞こえる。
統一「残念ながら隠密がおったんや。もう複数の名家に知れわたったってことやな…」
圭「えっ!?」
統一「死んだな」
そう言うと統一は俺の肩をポンとたたいた。
圭「う、うそだろ?今、本当にいたの!?ってかこの話自体本当なのか!?」
統一「はあ。何やねんこいつ。口ではよういうが、手はだせへんっていう奴かいな?」
統一は圭を指して冷夏に言った。
冷夏「さあね。でも、言うことは立派じゃないの」
それはそもそも圭に現実味がないからではないだろうか。
もも「圭!早く学校行かないと遅刻しちゃうよ!」
ももは圭の袖を引っ張る。
圭「ちょ、俺どうなるんだよ!おい!」
圭は統一に言う。
もも「はーやーくー」
ももは圭を引っ張る。
圭「え?遅刻!?へっ!」
圭は腕時計を見る。
圭「あ!こらヤバイぞ!?早くいくぞもも!」
もう逃げで話はそっちのけにして学校へ向かう。
圭はもうさっきの話は自分の頭からすっかり消してしまおうと思った。
結局、統一がこの学校に転校してきたのを知ったのはこう思ってから約30分後のことだった。




