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約二十年前。


少女はある人にあこがれて魔術師になろうと決める。


もともと、上級魔術師の家柄であった彼女であったが、縛られることには抵抗があった。


自分の家柄に自分の未来を決められたくはない。


そんなプライドを持ちながら過ごしてきた。


クリスティー・モカ・ローレライ。


少女のあこがれの一級術師モカは小さい頃から姉のような存在だった。


落ち込んでいるときは笑顔。


自分が落ち込んでいるときも笑顔。


それがモカだった。


クリスティー家と言えばラピュール家ほどではないが魔術師の名家だった。


モカは昔から成績優秀、運動神経抜群、魔術師にも秀でていて、おまけに容姿端麗だった。


女、男関係なくモカは射止めることができた。

マドンナだった。


少女とそのあこがれの先輩モカがある日、ランチをイスでしているとモカが少女に尋ねた。


『ねぇ…恋ってなんだと思う?』


恋。


そればかりはどんな者でも勝つことができない。


たとえそれがマドンナでも。


その相手の名は。


本田 忠雄


という名前だった。


でも、少女は反対だった。


自分の姉を取られたような。


そんな気がした。


ある時、いつものように少女は魔術学校の中庭でサンドイッチを食べていた。


「すいません」


とっさに少女はその声に反応しました。


身長は170くらいの普通のアジア男性。


少女は何かと尋ねる。


その男はモカという女性を知らないか?と訊いてきた。


これで少女は察した。


本田忠雄、その人。


別に何かすごいものを秘めていそうなものはない。


しかし、忠雄の笑顔は本物だった。


何もかもさらけ出しても嘘はないくらいの笑顔。


正義感が強く、目の奥にはきれいな光さえ見えた。


少女はこの人なら…と思ってしまった。


忠雄の正体を知るまでは。


彼は兵士、いわゆる武士だった。


魔術師と兵士は無縁であり、縁を結べば禍を起こすといわれたほどだ。


もちろん、魔術師は武士とは添い遂げるのは許されない。


だが、少女はなんとかモカと忠雄を一緒にしたかった。


そして、少女は夜。


こっそり二人をその時いたイギリスから逃がすことになる。


だが、二人はこの禁断の愛に耐えきれなかった。


魔術師が追ってくる、忠雄への闇の刺客も何百といた。


そして、それに耐えきれなくなった忠雄とモカは。


その男の子は母に言いました。


「僕が守るよ」と。


それを父はいつも笑顔で見ていました。


父は帰ってくる時間が日に日に遅くなりました。


男の子は一生懸命修行しました。


ある時は山にたった一人で籠もり、


ある時は父から相手をしてもらっていました。


男の子はある夜


両親が何か口論しているところを目にしました。


男の子は怖くて布団に潜っていました。


次の日、恐る恐るリビングに出ると、両親は笑顔でおはようと言いました。


それが男には逆に怖いものでした。


あまりの不自然さに男の子は外に出ました。


男の子は人見知りの激しい子でした。


なので、友達もおらず、これといって遊ぶこともありませんでした。


なので、男の子は家に帰りました。


「ただいま」


リビングで自分の声がやけに大きく聞こえました。


家は静かでした。


まるで時間の止まった洋館みたいでした。


何か違う。


男の子はそう感じました。


今までにない雰囲気。


何か暗い。


安心感が全くない。


男の子は奥のリビングに向かいました。


やけに遠い。


そしてこの威圧感。


この部屋を取り巻く奇妙な威圧感。


男の子はリビングのドアの手すりに手をかけました。


そして、ゆっくり開けました。


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


血なまぐさい臭い。


赤い液体。


そして、二人の死体。


男の子は何が何だか分かりませんでした。


降り注ぐ雨。


暗い部屋。


赤い部屋。

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