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冬の童話祭2013参加作品

キツネと魔女

作者: 城田寺 皓

 あるところに、たいそういたずら好きなキツネがいた。

 毎日毎日飽きもせず、毎日毎日だれかれ構わず、キツネはいたずらをくり返していた。

 そんな怖いもの知らずのキツネは、あるとき魔女にいたずらをしてやろうとたくらんだ。

 魔女の留守を見計らって家に忍び込むと、キツネは魔女の大事な品々を壊してまわった。

 しかし生憎のこと、なんといたずらの途中で魔女が帰ってきてしまった。

「悪ふざけが過ぎたな、この薄汚いキツネめ」

 魔女はキツネを捕まえると、両手両足を縛りあげた。

「さて、どうやって殺してやろうか。そうだ火あぶりにするのがいい」

 するとキツネは言った。

「いやいや、やめておいたほうがいい。キツネは火の化身だぞ。そんなことをすれば火の神の怒りを買う」

「ふむ、それもそうだ」

 魔女は考えた。

「そうだ、ならばナイフで心臓を一突きにしてやろう」

 するとキツネは言った。

「いやいや、やめておいたほうがいい。キツネの心臓は非常に小さい。とてもじゃないが一突きになんてできないさ」

「ふむ、それもそうだ」

 またまた魔女は考えた。

「そうだ、ならば毒薬を作って飲ませよう。いくらキツネでも毒を飲めば死んでしまう」

 するとキツネはうなだれた。

「ううむ、確かにそれならば俺はひとたまりもないだろう」

 魔女はさっそく毒薬作りの準備に取りかかった。

「お前にはあえて弱い毒薬を飲ませてやろう。じわじわと苦しんで死んでいくがいいさ」

 魔女は愉快そうに笑って言った。

 するとキツネは驚いた顔をした。

「おいおい、まさかそんな毒でキツネが死ぬと思っているのか。キツネは虫も食えば、死肉も漁る。そんな毒薬俺にとっちゃただの飲み物だ」

「ふむ、それもそうだ」

 魔女は弱い毒薬ではなく、強力な毒薬を作った。

「さあ完成したぞ。これを飲むんだ」

 魔女はキツネの顔に毒薬を近づけた。

 するとキツネは呆れた表情をした。

「やれやれ、この手足を縛られた格好でどう飲めというんだ。無理やり飲まされれば、むせてお前の顔に吹きかけてしまうぞ」

「ふむ、それもそうだ」

 魔女はキツネの拘束を解いてやった。

「さあ、今度こそ飲んでもらうぞ。そしてお前は死ぬんだ」

 魔女はキツネに毒薬を手渡した。

 するとキツネは渋い顔つきになった。

「まてまて、これは本当に強力な毒薬なのか。もしかしたら間違えて作っているかもしれない。ちゃんと自分で飲んで確かめたほうがいいぞ」

「ふむ、それもそうだ」

 魔女はキツネから毒薬を受け取ると、ぐいと一口飲んだ。

「うむ、確かに強力な毒薬だ。さあ、次はお前の番だ」

 キツネは腹の中でほくそ笑んだ。

(まったく、こうも騙されるとは馬鹿な魔女だ。お前が飲んで死なないなら、俺だって死ぬはずがないだろう)

 キツネは勝ち誇ったように毒薬を飲むと、その場に倒れこみ苦しみだした。

「これはいったい、どういうことだ」

 もがき苦しむキツネを見ながら、魔女は静かに言った。

「まったく、私を罠にはめようとは馬鹿なキツネだ。魔女がキツネ用の毒で死ぬはずがないだろう」

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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ、オチがいいねェ まあ、魔女さんもどこまで本気にするのかと思っていたが、最後に大どんでん返しでしたね おもしろかったです 納得させられました。
[一言] 初めまして、糸香です。 キツネと魔女の掛け合いが、テンポ良くて面白かったです。 思わず笑ってしまいました(^^) キツネは死んでしまうのにね… 楽しいお話し有難うございました。
[一言] 前の方が書いたとおりテンポがいいですね。 単純に狐が切り抜けるだけでなかったところもなかなか。 短く、分かりやすく、童話らしい作品でした。
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