真夏日の月
星が落ちてきそうな夜に、僕達は何度目かのキスをした。
時間の感覚を無くした蝉が煽るように近くで鳴き立ててくる真夏の夜に、二人は汗だくになりながら生暖かい抱擁を繰り返した。
やがて彼女は「暑いね」と言った。そして彼女が身に纏っていたオーロラが落ちる音がした。
彼女がワンピース一枚で過ごしていたことは分かっていた。僕は怖くて目を瞑ったまま彼女を抱き寄せる。一糸纏わぬ彼女の身体は熟れた桃のように柔らかく、繊細だった。
熱帯夜は彼女の身体を濡らし僕に迫る。柔らかな唇がじっとりと誘惑する。
僕はどうすればいいのか分からず、小刻みに震えるばかりだった。
僕を優しく包み込んだ彼女は何も言わないまま、ただ熱くなっていく身体を寄せていた。
そしてそのまま何分かが経った。
熱帯夜のピークも過ぎたころ、二人は振り出しに戻った。
満月の夜。僕は狼男。
この日は最後まで目を開けることはなかった。