初恋
わからないの。
あなたに対するこの想い…
こんな気持ち、生まれて初めて…
あなたを見ると、周りが見えなくなって
目を細めてあなたに視点をあわせる私がいる。
頭がおかしくなっちゃったみたい…
「おっはよ〜〜」
元気の良い声が教室に響き渡る。
その声の持ち主は、顔を見なくったって分かるよ。
鈴木 滉大…
クラスのムードメーカーで、いつも周りには人が溢れてる。
私もあの中に入れたらな…なんて思ってる。
「あ。武田ぉはょ!!」
何人か集まってる人の近くを通ったら、人だかりの中から顔をぴょこんと出して
彼が私にあいさつをしてくれた。
「お…はよ!!」
ビックリしてムダに大きな声になった…
なんで声をかけられただけでこんなに慌てちゃうんだろ?
昼休み、私は仲良しの美々と佳奈子と話しをしていた。
話題はやっぱり、今流行?の恋バナ。
「佳奈子ー…田中とはどぉなの?」
弁当を口にいれながら美々は佳奈子の恋愛事情を聞いた。
「何よ…どぅもなってないですー」
ジュースを飲もうとした佳奈子は一旦手を止めた。
ちょっと顔が赤くなったのがわかる。
「そうかなぁ〜…両思いに見えるのに…ね?伊麻。」
恋バナっていっても私はよく分からない…
「ぅ〜ん…じゃなぃか…なぁ?」
頼りなさげの返事に佳奈子は口を出した。
「伊麻は恋のことよく分かんないんだからそゆこと言わないの。」
苦笑いをして佳奈子を見つめる。変かな?
「純粋で可愛いなぁ〜伊麻。」
美々は私の方を向いて満面の笑みをくれた。
「ぁりがと…。」
恋の話をしたいとは思うんだけど…
「カッコイイと思う人とかいないの?」
佳奈子の質問にちょっと困る。
「ほら。一緒にいたいな…とか。気になる程度の人くらいいるんじゃない?」
更に聞いてくる佳奈子は顔がマジだ。
「う〜ん…好きとか…どういう気持ちになることか分かんない。」
ごめんね。と言ったが、今度は美々が食いついてきた。
「クラスの男子だったら誰と話すのが好き??」
それは……
「鈴木…君?」
2人は顔を見合わせてじたばたした。
「それって恋じゃないの!?」
「気が早いよ…だって鈴木君面白いし。話してて楽しいだけ。」
そんな驚かれると思ってなかったので、手を素早く振って誤解を解く。
「ぇぇぇ〜〜〜…何かありそうなのに〜〜」
あ…この変な気持ちのこと聞いてみようかな…
「でも…」
キーンコーン……
「ぁ!!鐘なった!!やばぃ先生くる!!またあとで話して。」
バタバタと皆が自分の席に着いていく。
「まぁいっか。」
私もがたんと席に着いた。
私の斜め前のもう一つ前が鈴木君だ。
また授業に集中せず、彼の方に目がいってしまった。
キーンコーンカーンコーン
「伊麻ーバイバーイ☆明日ね〜。」
「ぅんばいばい!」
今日は少し勉強してから帰ろうと思い、
私は図書室へと向かった。
誰もいない図書室内はしんとしていてた。
歴史の本の棚の近くに座り、鞄から勉強道具を取り出したが
外がにぎやかで少し窓に歩み寄って外を眺めた。
「ぁ…野球部…」
そう呟くと、自然と野球部の鈴木君の姿を探していた。
……いた!!ついつい顔はゆるむ。
やっぱりもっと話したいな…近づきたいって思う…
6時をまわって、外も暗くなってきたので私は
図書室を出て下駄箱へ向かった。
ガタガタ…
「ん?(誰か帰るトコなのかな?)」
そう思いそっと覗くと、彼がいた。私に気付くと声をかけてくれた。
「お?武田、今帰るとこなの?」
彼は泥で汚れたユニフォーム姿で、手にはズックの入った袋を持っていた。
「うん…あ。鈴木君は?まだ部活?」
「まぁなーちょっと替えの靴取り入ってた。」
偶然に会えたのがなんだか嬉しくて、私は舞い上がったのかも知れない。
「鈴木君…少し時間なぃ…かなぁ?」
もっと話したくて部活で忙しい鈴木君を呼び止めてしまった。
でも鈴木君はにこっと笑って、
「いいよ。10分位で戻れば何にも言われないし。」
と言ってくれた。
「ごめんね。ありがとう。」
私達は下駄箱の段差に座り、私は鈴木君に最近自分が変になっていることを話した。
「なんか…授業中でもその人のことふと見ちゃうんだ。」
「そっかぁー…」
鈴木君は足を伸ばした。
「もっと話したいと思ったり、声かけられただけでビクッとして…」
「うん。」
「大勢人がいるなか目で探したり……私変になったんだと思う…」
鈴木君は私の目を見た。
ドキドキドキドキ…
どうしてこんなに心臓が早く動くんだろう…
それに鈴木君に見られると、なんか恥ずかしい…
「誰に対してそうなるの?」
彼は不思議そうな目をしながら聞いてきた。
誰にって……
「鈴木君に…なんだけど…」
彼は一瞬でタコのように顔を真っ赤にさせた。
「あ。ごめん…変なこと言った?」
鈴木君は急に立ち上がり、一歩下がって言った。
「俺も…武田に対して、そうなるよ!!」
ばたばたとグラウンドへ走っていってしまった。
「な…鈴木君も…?」
変なのは私だけじゃなかった…でも…私のこと見てくれてるって事?
なんだか身体が熱くなってくるのがわかった。
しばらくぼーっとしてると後ろから声が聞こえた。
「伊麻??こんなとこで1人でなにしてんの!?」
振り返るとそこには佳奈子がいた。
「佳奈子……テニス部終わったの?」
「うん☆伊麻茶道部だから今日ないもんね〜〜〜。」
いいなーと私の横に佳奈子は座った。
「んで何してたの?」
「あのね、今日の昼休み話そうとしてたことなんだけど…」
「なになに??」
「私、鈴木君のことをいつも目で追っちゃって…」
私は変な感情を全部佳奈子に話した。
すると彼女は目を丸くした後、満面の笑みでこういった。
「それが恋だよ…伊麻。」
心臓が、今までにないくらいバクバクと動いているのが分かった。
初めての…恋。
彼の言葉が頭をよぎった。
実る初恋もありますよね…