………死
結局、僕はその場所を本を読むための場所にした。
大きな理由はない。ただ静かだな、そう思っただけだ。
新しい学年に進級し、春になって、その中で暇な時間ができれば屋上に本を持ち込む。
そんなことを何カ月も適当に、有意義に、そして満足に繰り返していたら、それはいつしか『日常の一部』になっていて、この屋上も僕の世界の一部となっていた。
だから僕は今日の最後の授業が自習になったと聞いてすぐに屋上に行くことを考えた。
回想終了。
昨日買った文庫本のうちの一冊を持ち、廊下に出る。
ちなみにそれは推理小説だ。さらにいえば昨日買った二冊の文庫本は推理小説の、あるシリーズの一巻と二巻であり、一巻はすでに昨日読み切ったので今持っているのはその二巻だ。
本をめくり、目次を見ながら歩き、途中で屋上への道を塞ぐ防火扉をいつものように鍵を使って開ける。
登場人物の説明を読みながら(ちなみに一巻では探偵と助手とそして犯人以外の全員が天に召された。Mobキャラにきつい仕打ちの小説だ。)階段を上り、いつものように屋上への扉の前に立って、そこで僕は気づいた。
「? 鍵がかかってない」
扉のロックは解除されていた。はて、この前来た時にかけ忘れていたのかと思い返してみるが昨日はここに来ていないし、というよりここ一週間はご無沙汰だったためそんなことはまったく思いだせない。
まぁ、屋上の鍵のかけ忘れくらいどうでもいいやと思い、片手で持っていた本(開いたままキープしていた)の物語が始まるページまで自分でも器用と評価してもいいような指の動きで片手持ちのままページをめくり、それに視線を落としながら、残った片手でドアノブをひねって押した。
物語では一行目から犠牲者が血だまりに沈んでいて、屋上では少年が死んでいた。




