出会い
2005年4月---
桜の木に囲まれた体育館で、私は真新しい制服に身を包んでいた。
同じく新しい制服の、これから机を並べるであろう生徒たちと共に期待に心を躍らせながらパイプ椅子に腰かけている。
後ろには、カメラを携えた父と母も保護者席に座っていることだろう。
壇上には白髪頭の校長がマイクの前に立っていて、祝辞を述べている。
「暖かな春の陽射しが降り注ぐこの善き日、こうして入学式を執り行うことができました。
校舎が最近建て直されましたが、そんな新しいこの学び舎で、みなさんの思い出という歴史を刻んでいってもらいたいと、思っております。
さて、------------―…………
我が校では文武両道を目指し、勉学のみでなく部活動においても----……」
……どこの学校でも、校長の話というものは長い。
延々と続く話に退屈を感じてふと窓の外を見る。
風に吹かれてピンクの花びらがひらひらと舞うのがよく見えた。
------きれい。
呑気に眺めながら、数週間前の日を回想する。
その日は、春の訪れを感じさせてくれる、穏やかに晴れた日だった。
舞は、中学校の友人とともに並んで憧れの高校の門をくぐった。
「わっ、もう人だかりができてる!」
舞が思わず呟くと、隣を歩く友紀が応える。
「うん、でもまだ張り出されてるわけじゃないみたいだね。」
この日は、高校受験の合格発表だった。
勉強に取り組んできた日々、とりあえず今日その成果が出る。
正面には、薄い桃色の壁が輝く校舎。
少し家は遠いが、最寄駅から歩いて5分という利便さと、可愛らしく清潔感のある校舎に心惹かれ、
この桜花高校に決めた。
もちろん、幼馴染ばかりの中学校とは違い、新たな出会いを期待して、という
少し不純な動機もあったのだけれど。
校舎脇に、同じ中学校からの志望者が固まって立っていた。
友紀とともにその群れに溶け込んでいく。
腕時計をみると、発表まで残り10分を切っていた。
「緊張するね~!!」
みんなで言い合う。
舞もそわそわしてくるのを実感し、落ち着こうとポケットのお守りを探る。
受験だから、と母が神社で買ってきてくれたものだった。
もらってすぐ、万が一落としてもすぐわかるように小さな鈴をつけた。
ポケットを探る手が、馴れた感触のお守りに触れる。
握りしめて取り出すと、どこに引っ掛けたのか鈴とお守りを繋ぐ糸が切れてしまった。
「あっ!」
転がっていくその青い鈴を、反射的に追いかける。
大変遅くなりましたが;;
読んでくださっている方いるでしょうか^^