第17話
危機は続く。
「おのれ・・・お前ごときになにができる!」
「お前は、この魔剣『ヴォイドイーター』の恐ろしさを知らぬと見える。」
「ならばよろしい・・・空間もろとも、葬り去ってくれる!」
ベルグはヴォイドイーターを構え、ハイティとリアに向けて攻撃を放とうとしていた。
・・・すると
ハイティの背後で、リアがそっと、ハイティの裾を掴んだ。
「ハイティ・・・私、やってみる。こいつを、止めてみせる」
彼女の瞳から涙が消え、代わりに深紅の魔力が渦巻き始めていた。
「・・・リア・・・準備できてるのか?」
「うん。あなたは『私の痛みを受け止める』と言った」
「だから、私は・・・あなたを信じてみる!」
「私は・・・もう怖くない!」
リアが前へ踏み出す。
その小さな手が、ベルグに向けられた。
「消えて!」
リアは詠唱を始めた。
「・・・時は満ちた・・・」
「・・・因果の鎖を焼き切りて・・・永劫の眠りをここに・・・」
「・・・来たれ、世界を呑み干す劫火!」
「【終焉の炎第0番】!!!!!!」
(ゴォォォォォォォォッ!!)
ありえないほどの閃光と共に訪れたのは、すさまじい衝撃だった。
地下室全体が揺れるほどの衝撃。
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【終焉の炎第0番】とは、ラグナロクのいわば簡易版である。
リアは、この地下空間を消し去るホンモノの【ラグナロク】を放つことをためらった。
【ラグナロク】を使えば、無論、通常であれば味方にも被害が及ぶことは必定である。
しかし、そこは一国の『守護者』ハイティ。
ハイティのクタカへの付随効果『絶対領域』で、周囲の環境を保存することは可能だった。
だが、リアはまだハイティの能力の全貌を知らない。
リアはとっさの判断で、周囲の環境を破壊しつくさない範囲で、ベルグを葬ることを考えた。
だから、ラグナロクの簡易版である【第0番】を放ったのだった。
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本来なら、リアの身体を内側から焼き千切るはずの絶大な魔力反動。
しかし、その凄まじい「痛み」と「熱」は、繋がれた手を通じて、すべてハイティのHP 99,999という無限の海へと流れ込んでいく。
「あれ、ちょっと熱いかも・・・?」
ハイティがケロリとしている間に、特殊部隊はベルグもろとも、跡形もなく、清浄な白い炎によって蒸発していった。
・・・静まり返る地下室。
リアは自分の手を見つめ、そして、隣で平然と立っているハイティを見上げた。
「・・・私・・・本当に、痛くない!」
「・・・魔法を使ったのに・・・使ったのに、痛くないよ!ハイティ!!」
リアが満面の笑みでハイティに抱きついた。
王城の地下深くで、最強の「矛」と最強の「盾」が、ついに完全に噛み合った瞬間だった。




