第14話
翌朝、王都中に号外が配られた。
『特務騎士団長ハイティ、一人で魔王軍先遣隊を撃破! 自治都市を包む炎を歩くだけで鎮火させる!』
王宮に戻ったハイティは、「割と身に覚えのない手柄」の報告書を前に、深くため息をついた。
「ジル・・・。俺はただ歩いてただけなんだ。本当に・・・」
「ええ、存じておりますわ」
「じゃあ、さっきからなんでそんなに嬉しそうに俺をほめるんだよ」
「ハイティ様のことはわたくしたちがよく存じ上げておりますもの・・・」
「どういうことだ?」
傍らで瞳を輝かせるエリィが言った
「わたくしたち、物事をよくわかっているのですよ!・・・ハイティ様にとっては、ただ歩くことすら救済の儀式なのですよね!」
・・・ハイティは諦めたように、ふかふかの椅子に沈み込んだのだった。
その頃、スラムの酒場でその号外を目にしたグレンたちは、震える手でボロボロのパンを分け合っていた。
「・・・歩くだけで、魔王軍を・・・?」
もはや、嫉妬する気力すら起きない。
自分たちがどれほどの「化け物」を、ただの「便利屋」として扱っていたのか。
その罪の重さと、失ったものの大きさに、彼らはただ涙するしかなかった。
・・・ハイティの伝説は、まだ始まったばかりである。
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数日後・・・
王宮の会議室にて、対魔王広域会議が行われていた。
そこには、宰相、担当大臣、騎士団長、宮廷鑑定士、担当官僚・・・
すべての構成員は、この世の衰亡の現況たる魔王を滅するべく、対策を練る。
当然、特務騎士団長たるハイティも参加していた。
まず、国の中枢たる宰相が口を開く
「来る魔王討伐軍の編成であるが、何か意見はあるか?」
軍部大臣が言う
「その件につきましては、重大事項があるため、これまで内密にしていた件をあわせて、担当官僚からご報告させていただきます。ノエル君、よろしく頼む」
ノエルと呼ばれた官僚が厳かに言った。
「これまで、宮廷鑑定士を含め、構成員数名にて内密に協議していた『211号案件』についてご報告させていただきます」
「これまで、我々は対魔王決戦兵器たる『211号兵器』を極秘裏に発見、これを秘匿しておりました」
「しかし、『211号兵器』には、ある致命的な欠陥があるため、これまでその潜在能力が莫大であることが判明していながら、対外的に公表されることがありませんでした」
「ところが、S級スキルを持つハイティ様のご登場により事態は急変しました」
「ここに、『211号兵器』の存在を公表し、当該兵器のもとへと、ハイティ様にご同行いただき、事態の推移をみることを提案させていただきます」
ハイティは何がなんだかわからなかった
「・・・ちょ待てよ!なんで俺が関係してくるんだよ・・・!」
官僚は答える
「申し訳ありません。これまで秘匿していた兵器に関することでありますゆえ、詳細は後ほどご説明させていただきたく存じます」
軍部大臣が言う
「私からも、謝罪させていただきたく思います。まことに申し訳ないハイティ殿。ことは重大ゆえ、なにとぞご容赦を・・・」
大臣までに謝られ、立つ瀬を失ったハイティは、
「わ、わかりましたよ。それじゃ、早くその211号なんたらっていうのに引き合わせてもらえますか?」
そう不貞腐れたように言うのが精一杯だった・・・




