第12話
数日後。
王都の片隅にある酒場。
そこには、やつれて見る影もなくなったグレン、ラッティ、キュイ、ナニエル、ゼクスの姿があった。
「・・・ハイティが、騎士団長!?」
ラッティが、震える手で安酒をあおる。
「嘘よ!そんなの何かの間違いに決まっているわ!」
キュイがヒステリックに叫ぶが、その声に以前のような張りはない。
「本当だったんだ・・・この目で確かに見た。あれは、ハイティだった。あいつはもう、俺たちの知ってる『しがない支援術師』じゃなくなったのさ・・・」
グレンが力なく言った。
「だったら・・・だったら、謝りに行きましょう!そう、それがいいわ!」
ナニエルが身を乗り出す。
「私たちが誠心誠意謝れば、彼も以前の私たちとの生活を思い出してくれるはず。それに、彼はまだ騎士団長になって日が浅いわ。経歴から言っても、知った仲間が周りにいた方がいいでしょ・・・きっと、彼は良いようにしてくれるはずよ!」
「無理だ・・・」
グレンは首を振った。
「あいつの目は、確かに俺に対する敵意は無さそうに見えた。・・・見えたが、だが、あいつは俺のことを本当の意味で『見て』はいなかった。・・・そう、眼中にないという言い方が正しいかもしれない。なんにせよ、ギルド端末でリンクを解除した時から、あいつとの縁は切れたのさ・・・」
その時、酒場の隅で話を聞いていた年老いた冒険者が、話に割って入ってきた。
老人は、鼻で笑いながら言う
「おい、お前さんたち。まさか、ハイティ様の恩恵に預かりながら、あの方をパーティーから放り出したっていう、例の『大馬鹿パーティー』か?」
「なんだと!?」
ラッティが凄む
「界隈じゃ有名なんだがな・・・自分たちの実力と勘違いして、S級の守護者を捨てたマヌケな若造どもの話はな。俺たちの間では、鑑定士の重要性が再認識されたって訳だがな。残念だったな!運が悪かったと思って諦めな!」
酒場中に嘲笑が広がる。
かつて、グレンたちがハイティに向けた「哀れみ」の視線が、今、何倍にもなって自分たちに突き刺さってきたのであった。
___________________
一方、王宮の執務室。
ハイティは山積みになった書類を前に、ジルが淹れてくれた紅茶を飲んでいた。
「ハイティ様、また各国のギルドから、共同任務の要請が来ております」
「あー・・・それかぁ。適当に捌いといて。俺、まだハイオーク倒した時のショックから立ち直ってないんだから」
「ふふふ・・・冗談がうまいんですね、ハイティ様。あんな魔物、ハイティ様の溜息一つで消し飛んでしまいますよ」
エリィがクスクスと笑いながら、肩を揉む。
ハイティは窓の外、広大な王都を見下ろした。
かつてはあの中の、一番安い宿で震えていた。
自分を信じられず、ただひたすらに自分の命を削っていた。
(・・・結局、自分を一番過小評価していたのは、俺自身だったのかな・・・?)
不意に、グレンたちの顔が浮かんだが、不思議と怒りは湧かなかった。
ただ、今の自分を支えてくれる人々のため、そしてこの国のために、この能力を使おう。
「よし、やるか」
ハイティはペンを取った。




