第11話
一方、大樹の森でボロボロになったグレンたちは、命からがら王都へ帰還していた。
彼らの身体は大樹の森での戦闘のせいもあり、まともに歩くことすら困難になっていた。
~数週間後
グレン一行のその後の経過は悲惨だった。
「嘘だろ・・・なんで俺たちが、こんな薄汚いスラムで・・・」
旅費は尽きた。
冒険に行っても、以前のようにはいかず、たった数匹の戦果で帰らざるを得ない日々だった。
しかも、その数匹との戦闘でさえ、満足いく結果が残せず、負傷を追う羽目になった。
治療費も満足に払えず、宿すら追い出された。
そんな散々な日が続く中・・・
ある日、グレンたちの耳に、街の喧騒が届く。
「おい、こっち来いよ!特務騎士団長、ハイティ=ムクール様の就任記念パレードだぞ!」
一人の男が嬉しそうに叫ぶ。
グレンは自分の耳を疑う。
(・・・ん?まさかな・・・ハイティ・・・まさかな)
「おい、お前、ハイティって誰のことだ?」
グレンが先ほどの男をつかまえて聞く
「知らないのか?この前街の掲示板に張り出されたろ。新進気鋭の騎士団長らしいぜ。なんでも、S級スキルを持ってるとかいう話だが・・・」
「今日、そいつがパレードをするっていうのか?」
「ああ、何だったらお前も見に行ったらどうだ?ルシファー通りに行くと見れるぜ!」
グレンは急いで仲間のもとに戻り、事情を話した。
「まさか、同姓同名の別人だろ?」
いつものごとく言うラッティ
「でも、一応確認した方がいいんじゃないの?」
不満そうにナニエルが言う
「あなた一人で確認しに行ってきてくれる?ゼクスも私も無料で診てくれるっていう知り合いの病院に行かなきゃならないの」
キュイがつまらなそうに言った
「そうか・・・わかった」
グレンは静かに言った
_________________
数時間後
そこには、まばゆいばかりに日光を反射する鎧をまとい、立派な馬にまたがり、堂々と民衆に手をふるハイティの姿があった。
「ハイティ様!!」
「国の守護者様!!万歳!!!」
群衆は沸いていた。
老若男女問わず、みなハイティに喝采を浴びせている。
「う・・・嘘だろ・・・」
自分の目を疑うグレン
白銀の鎧を身に包み、堂々と馬を駆るその姿。だが、兜はつけていなかった。
見間違うはずがない。
それは紛れもなく、自分たちが「不要」と蔑み、その努力すら否定し、1万ドラクマン札を投げつけて追い出した、あのハイティだった。
グレンは震える足で、一歩前へ出た。
・・・と、その足を騎士団員が2人がかりで止めに入る
「何者だ!」
「下がれ!」
しかし、グレンは大声で叫ぶ
「ハ、ハイティ!そうだろ?ハイティだろ!?」
必死に声を張り上げたが、その声は民衆にかき消された・・・かに見えた。
かつての仲間がそこにいると気づいたのか、ハイティがふと、グレンのいる方角へと視線を向けたのだ。
(!!)
(気づいたか?)
(そうだ、俺だ!リーダーのグレンだ!)
グレンは縋るような思いで手を振った。
今の自分たちはどん底だ。ハイティが騎士団長になったのなら、彼に頼めばまたあの「無敵」だった日々に戻れる。
・・・いや、それが無理でも、昔のよしみで、自分たちを何らかの形で拾ってくれるはずだ。
しかし、ハイティの瞳に映ったのは、親愛でも憎悪でもなかった。
それは、あるいは名前も思い出せない過去の知人を見るような、得も言われぬ「遠いまなざし」だった。
ハイティはその目を一瞬だけ細めると、何事もなかったかのように前を向き、再び民衆の歓声に応えて右手を上げた。
「待て・・・待ってくれ! ハイティ!」
グレンが人混みをかき分けて追いかけようとしたその時、先ほどの騎士の槍がグレンの胸元を遮った。
「下がれ、不届き者。閣下の御前であるぞ」
「違うんだ、俺はあいつの・・・いや、ハイティの親友で・・・!」
「黙れ。そのような身なりの者が、我が国の守護者と知り合いなはずがなかろう」
騎士に突き飛ばされ、グレンは泥水の中に尻餅をついた。
見上げれば、ハイティの背中は遠ざかっていった・・・




