君は突然いなくなる
俺は長くても後1年で死を迎える。
でもそれは誰にも言わないつもりだ。 俺は死ぬまで出来るだけ普通に暮らしたい。しかし友人、父親が自分が死ぬことを知ったら普通には暮らせないだろう。でももし死ぬことを知られてしまったら、、 友人も父親もみんな優しい、きっと気を使うだろう。でもそれは気を使われる度に死という現実を目の当たりにすることでもある。俺はそれが怖い。
朝、いつも通り父さんから弁当を受け取ると「行ってくる!」父さんはネクタイを締めながら「おーう」とだけ言って俺は家を出た。このやり取りは後何回できるんだろうか。「おはよう!」駅で背中を叩いてきたのは小学校からの同級生の隆斗だ。「いてーよ」そう言うと隆斗は笑って俺に喋りかけた。「英語の課題やってねーわ」「流石に今日は見せねーぞ」「そこを何とか」「ちゃんと怒られて反省しろ」そんなくだらない会話をしていたら電車が開いて俺と隆斗は電車に乗り込んだ。
一ヶ月前― ここ数日頭のズキズキが取れない。 父さんは「勇輝、お前体調悪くないか」と心配したが「夜遅くまで起きてただけだから大丈夫、すぐ治るよ」とその場を誤魔化した。でも少し心配だったから次の日、近くの病院に一人で行った。単なる頭痛だと思っていた。なのに医者は「後1年持つかも分からないです」俺は頭が真っ白になった、信じられない。それでも俺は何も言えなかった。
俺と隆斗は学校に着くとそれぞれの教室に向かっていった。俺は教室に入り席に着いた、俺の席は真ん中の列の前から二番目だ。運が悪い。
そして前の席は「おはよ!朝からしけた面しやがってシャキっとしろよ」このうるさいやつは悠聖、朝から耳が痛い。
「朝はせめて音量は下げてくれ」「これでもテンションは低めだぜ?」勘弁してくれよと思うと同時に心の底にある不安が少し消えた気がした。
「おーい、席つけー」教室の扉がガラッと空き担任の山本先生が入ってきた。
そのタイミングで後ろから勢い良く扉が空いた「セーフ!」「中本ギリギリアウトだ、もっと早く来れないのか?」「はーい、すいません」そう言うと笑いながらゆっくり席に着いた。いつも通りの日常、でも俺にとっては当たり前じゃない。