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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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不帰の迷宮①


時空庫は本当に便利だ。

魔法を持ってない人ももちろん居るけど、空間を広げる付与魔法があるから、お金さえ出せば誰でもマジックバッグは買える。


空間魔法は広げるだけだから、比較的安価。

空間魔法+時空魔法の付与で作る時間停止タイプだと、超高額──性能差が桁違いだから当たり前の価格ね。


製作に必要な魔法に加えて、付与魔法も持ってないと作れない物だから。

作り手が希少なのも、値下がりしない理由なんだけどね。


そんなことを考えつつ──私は時空庫から作業台、材料、工具を取り出した。


ピンクの龍革は、端切れだけに下処理済みで良かったわ……どうにかハーネスを作る分は間に合いそう。

リード部分は違う色の革か龍の髭を編むことになるけど、まあ良いだろう。

カルミラの依頼で、ケルベロスのハーネスは何回も作ったことがあるから楽勝。

パンジーちゃんサイズに既存の型紙を作り直せばいいだけ。


「あっ」


ドラゴン革用工具、メイ爺に貸したままだ。

バタバタしてて、依頼中の馬具も取りに行けてなかったから仕方ない。


──革のカットは魔法でやるしかないな。


仕方ないので、革にきちんとペンでラインを書いて……空中に魔力で革をピンと張って、水圧でカットだね。

ザクザク切る分には楽な方法だけど、カーブとや細部は、集中必須。


水魔法は一番苦手なんだけど……光のレーザーだと焦げちゃうし、仕方ない。

まあ頑張りましょ。


そこまで難しい構造でもないので、カット自体は2時間程で終わった。

外周に『糸』を通すための穴も、均等に穿っておく。


──後は縫い合わせていくだけ。


ドラゴンの髭のうぶ毛が糸の代用品。

まずちぎれないからね、今回は強度が最優先だから。

惜しみなく、使えるものは使っていかないとね。


パンジーちゃんのお世話は二人に任せて、私は徹夜でハーネスを縫い上げた。


ちなみにリードは、雑なフレスベルグがティティ監修のもとで龍の髭を編み上げた。

あれは握力と腕力が必要だから──適材適所よ。


金具部分は幸い、作り置きのストックが大量にあるからちょうど良いのを選ぶだけだ。



完成したハーネスはパンジーちゃんにピッタリだった。

リードはクリーム色だけど、意外と馴染んでいる。

カルミラのお城ではフリフリドレス着せられていた"姫"のパンジーちゃんは、装備品には慣れてるみたい。

これなら、ハーネスをつけっぱなしにしていても問題なさそう。

有事の際は、フレスベルグがリードをつけるということで、彼がリード所持することに決まった。


リード作製が上手に出来たのに気を良くしたフレスベルグが、龍の髭でパンジーちゃんと綱引きをするオモチャを作り上げていて、フレスベルグとパンジーちゃんは、なんだかんだで仲良くやってるみたい。


冒険者の4人もお隣スペースにテントを張って、いつでも出発可能になっている。

彼らは『同行するだけ』で、戦闘中は距離を取ってもらう約束だ。


念のため、こちらに悪意を向けないよう行動制限の魔法契約もしてある。

対価は『一緒に帰還』だ。


4人の話から、下に降りる階段は数時間毎に移動するという事がわかっていたので、全員移動で階段探しからスタートだ。


先を歩いていた私の横に来たフレスベルグが、話し掛けてきた。


「なぁ。ジューンはお酒好きだろ」


「そうね、大好きね」


「なんであの4人には酒出さないの?」


「今大人だからって──14歳から16歳でここに来た人たちが、お酒に慣れてるわけ無いでしょ」


「あ、そうか。確かにな」


「飲酒経験はあると思うけど、慣れてない人が酔ったら事故のリスク高いから、ね」


「このダンジョンいつアレが出てくるか、予想つかないもんな!」


「そういうことよ」


フレスベルグがリードを取り出した。


「良く考えたらさー、パンジーが突っ込んだとき咄嗟に抱え込むじゃん?そしたらリードつける暇無くね?」


「……言われてみたらそうね。じゃあ、私がリード持っておくわ」


フレスベルグは実はバカではないのだ。

──アホの子だけど。


ほどなく階段は見つかり、トラブルもなく階下に到達。


10日ほどかけて、どんどん進んだ。

人間が一緒なので、夜はきちんと休息もとったからのんびりペースではあるけれど50階層以上は見て回った。


「現在57フロア見て回ってるけど──」


夕食時に、私はデータの共有をした。


「57のうち、元々のゴブリン層が31。干渉されて侵食されていると推測される魔物層は26ね。あなた達が言ってた半分くらいは動物層だった……という話と整合してるわ」


うん、と頷く冒険者たち。


「当面、夜のキャンプはこれまで通り動物層で」


湿地、川、湖、海──とにかく水が多い。

もちろん溶岩とか砂漠も出てくるけど──


「……圧倒的にじめじめしたフロアが多いわねぇ、魔物フロアは」


扉や、妙な魔物にも何回か遭遇している。


見えているのに存在しない魔物は、距離を取って近付いていない。

扉は、見つける度に私だけで覗きに行く。


8回ほど覗いた『向こう側』も僅かだが、鑑定の文字化けが減ってきた。


何度も見ることによって、私の理解力が上がったからだろう。


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