表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/219

ゴブリンのダンジョン⑥


私はパンジーに魔力水を与え、自分も水筒から水分補給した。


食事以外での休憩時の水分は、水が一番好ましい。

匂いの出ないもの、ここが肝要。

──リスク管理ってやつよ。


「で、羽が形成されるまでは動かない方がいいよな?」


フレスベルグは不安らしく、手のひらからティティを下ろさず考え始めた。


「私の一番のオススメは、フロア移動ね。考えるにしても、もうちょっと安全な場所がいい」


(──私一人だったら、絶対カエルの謎が解けるまで引き下がらないけどね。

探求心が、私の『生きる』理由だもの。

何にも興味が無くなった時が、死ぬ時よ)


「それが一番安全策だよな、階段探すのに一票」


「うんうん、とりあえず他行こ!」


私達はティティの羽が生えるのを待たず、フレスベルグは手のひらに妖精を乗せたまま、階段をうろうろと探し回った。


魔物はそれなりに出てきたが、凍らせて砕いておしまい。


「えげつねぇ……」


「効率的って言ってちょうだい」


────結果だけを言うと、数時間かけても階段は見つからなかった。

正直、このパーティは持久力があるので数日ぶっ通しで行動できる。

ケルベロスも、使役犬だから頑強だしね。

──パンジーちゃんは愛玩犬っぽいけど。


「うーん、カエルんとこ戻るしか無くね?」


ティティの羽は完成していたが、念のため私のポシェットに入って、そこから身を乗り出している。


「──剣が要るわね。貸してあげるわ」


私はコレクションの中から、かなり気に入ってる剣をフレスベルグに貸し出すことにした。


「お、サンキュ!うおっ!?」


フレスベルグが慌てふためいた。


「あー、これダメ!風属性エグくて……俺、風と相性悪いんだよー!つーか、なんて物出してくるんだよ!怖いんだけどこの剣!」


「フラガラッハは名剣なのよ?銘もスタンプじゃないしー」


「くっ……」


「んー、それ、すッごいどこにでもありそう!普通の剣じゃないのォ?」


「いやいや、やたら魔王感あるぞ!なんなのコレ」


私はせっかく出したフラガラッハをしまい、ドワーフ謹製の大剣を手渡した。

──フラガラッハは片手剣だし、フレスベルグは大剣の方が好きなんでしょうね。


「これなら属性無いから大丈夫でしょ」


「おお、いいなこれ!で、フラなんとかってアレか?魔剣!」


「魔剣ではないわね。かなり昔、地球じゃない世界から来た異世人がいてね──普通のオッサンだったけど、面白い人でね」


「ほんと、異世人ってどこからでも来るんだなー」


「そうね。リルは飲み友だったんだけど──寿命でそろそろ亡くなるって時に、借りた金返せないからって貰ったのよ」


「借金のカタで!?そんな剣、普通の人間に扱える!?」


「人間じゃあなかったと思うのよね。まあ、昔の話よ」


私は肩をすくめた。

──昔の思い出話。

今を生きる者には、必要の無いものよ。


「そろそろ、カエルポイントだよォ~」


ティティが間延びした声をあげ、少しだけポシェットの奥に体をずらした。


「──居るなぁ」


「やっぱり見えないよォ~?」


今回は、パンジーちゃんも一緒にカエルの5m前付近に回り込む。


「うーん、やっぱ居るけど居ないよなぁ───おい待て!パンジー!!」


パンジーちゃんが一瞬でカエルに到達した。


──子犬の目が深紅だ。


「フレスベルグ!パンジーはケルベロスモードよ!」


「嘘だろ、おいパンジー!待て!待てったら──」


パンジーがカエルに『噛みついた』


カエルの居た『空間』に亀裂が走る。


パンジーちゃんは、亀裂に頭どころか前足まで突っ込んでいき、微かに咆哮や唸り声が漏れてくる。


「フレスベルグ!!パンジーを抑えて!引きずり込まれちゃう!」


フレスベルグがパンジーちゃんの胴体を抱え込み、必死に引っ張っている。


私は努めて冷静に、裂け目を観察した。


──境界面の偏差?違う。

居相の乱れ?違う。

空間界面の歪み?違う、なにかもっとこう──根源的な。


──一体『コレ』は何?


頭を使え──考えろ、考えろ────存在?存在──存在境界か!

なら、これは存在軸の捻れ!


──パンジーを引き戻さないと!


いってしまったら、戻す術がない──


「フレスベルグ!まだ間に合うわ!絶対パンジー離すんじゃないわよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ