ゴブリンのダンジョン③
2階層は、草原だった。
フレスベルグは転がったままだ。
「さっさと起きなさいよ」
「大丈夫?とかないの!ねえ!」
「怪我人が出たら帰るわよ?」
草原は見通しがよく、のどかな光景だ。
ダンジョンにしては全く殺伐感がない。
時折、遠くで跳ねる兎。
のんびりと草を食む牛──牛?
「これは──家畜じゃないの」
「どう見ても乳牛」
ティティが上空から周囲を見渡して、煙を見つけたようだ。
「あっちに煙が見えるゥ!」
少し元気になったパンジーちゃんの涙を拭き取り、私達はティティの誘導で『煙』方角へと足を進めた。
「畑だな」
「畑ね」
立派な畑が、広がっている。
どういう理屈なのか、青々と繁りとても元気に育っている作物。
「──ゴブリンだぞ」
ゴブリンは、まだこちらに気付いていない。
パニックにさせたら気の毒なので、全員に隠蔽魔法をかけ、接近。
まだ二階層だというのに、そこにはゴブリンの集落があった───
「なんで?」
私達は、ヒソヒソと話し合った。
なんで?ってホント、なんで?よね。
こんなことってある?
深い階層ならともかく、2層目よ?
──いや、ゴブリンのダンジョンだし……非常識な事が起きても違和感ないわ……
こそこそ相談して、同じ妖精族のティティが偵察に行くことになった。
ヒラヒラと、ティティが翔んでいくのを見送り、パンジーちゃんを撫でながら待つこと30分。
優雅に風に乗り、ゆらりゆらりと漂って戻って来たティティの話によると──
・一応村らしい
・ゴブリン6人家族と7人家族の2世帯が住んでいる
・でも何故かティティが数えたら、ゴブリンは17人居た。
・ダンジョンから出られなくなって、長い間ここに住んでいるらしい。
・しかもここは深層、ゴブリンの話では50階~80階と意見が割れている。
・他の階層にも、似たような村がある模様。
「そんなことってある?しかも人数合わないけど、そこはゴブリンだから想定内よね……」
「ここ2層だよな?」
私達は困惑し、村から少し離れて話し合ったが、結論は出なかった。
だってゴブリンの迷宮だよ?
考えても意味なさそうじゃない?
「──真面目に考えるのは、すごく無駄な気がするわね」
「だよなぁ、ゴブリンの迷宮だもんな。性質がゴブリンっぽかったら、お手上げだよなー」
──ゴブリンっぽい迷宮!なにそれ怖い。
めっちゃホラーだよね?
とりあえず、階層を『降りる』階段を探そう、と言うことでパンジーちゃんの協力の元、村から離れた場所に、草むらに隠れた階段を見つけた。
誰が先に行くか、暫く揉めたが……パンジーちゃんがフレスベルグを勢い良く突き落としたので、今回もフレスベルグが先陣!と言うことになった。




