表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/116

◆お家の整備①そしてピンク髪に初遭遇

最後にサービスで出てきた胃がスッキリすると言うハーブティを飲み干して。


──私は機嫌良く街道に面したヴィルヌの輪を後にした。


この大きな街道の1本奥が商店街だ。

酒屋行って、八百屋行って…と計画を練りつつ脇道に入ると……いきなり目の前で、衝突事故が起こった。


見るからにお忍びであろう良家の坊っちゃんと、パンを加えながら爆走していた女の子の衝突事故だ。


自分からぶつかった挙げ句に弾き返されて尻餅を付いた女の子は「いった~い!」と大声で叫んでいる。

だが、坊っちゃんも負けてはいない。


「ぶつかってきたのはそっちだろ!」


若い二人はギャンギャンと言い合いを始めた。


前世でも今世でも、パンを咥えながら爆走する女の子を見るのは初めてだ。

興味深く観察しているうちに表情豊かな若い女の子は「もう最悪ぅ!」と捨て台詞を残し、走り去った。


坊っちゃん呆然。

ずいぶん見目が整った美しい少年だ。

いかにも高位貴族って感じ。


なんかの、イベントってやつだろうか?

あの女の子、髪がピンクだったし。


私はメモ帳を取り出し、日時とパンを咥えたピンク髪…とメモをした。


経験上、ピンク髪の女はトラブルメーカーが多い。


要注意人物だ。

今まで何人か見てきたが、危険物率100%だ。


商店街をぶらぶら歩き、目的の酒を買って果物を売っている店で青いピーヌの話を聞いたところで陽が傾いてきた。

思ってたより長く、商店街で過ごしていたようだ。


そろそろ森を抜けて、家に戻らなくては。


私は、周囲の状況を把握するまでは……転移は使わないのが『賢明』だ、と思ってるから。

普通に歩いて帰宅してると思ってもらわないと、困るからね。

森の道は獣道だったが、傍に薬草やキノコ、木の実がいっぱいで豊穣そのもの。

この辺の人は……こういう物を採取しないんだろうか?

結構役立つものが多そうに見えるけど。


家に戻ったら、とりあえず家具を出さないと。

さすがになにもない状態だと、生活が不便なので──寄り道はまた今度だ。


時間はいつだってたっぷりあるし、慌ててしなきゃいけない事なんて滅多にないからね。


何事もなく到着したが、家に入る前に敷地を囲う木の柵に細工をしなくちゃ。

一定間隔でメア・バインの種を落としながらぐるっと柵を一周し、魔法で一気に成長させれば木の柵に蔦が絡まり自分よりちょっと高さのある丈夫な柵の完成だ。


メア・バインは火にも強いし、とにかく頑丈で──育ってしまえば、切るのも大変。

時折魔力さえ与えておけば、世話も必要がないのでメア大陸では──『防犯』に良く利用されているのだ。


──アルシア王国のあるネイシス大陸は、圧倒的に人間族が多い。

メア大陸は、あんまりヒト型の生物はおらず、いわゆる魔物や動植物がメインで……たまに見掛けるヒト型はだいたい魔族か妖精。


五大陸の中では一番小さいのだが、そこそこ凶悪な大陸だ。


当然ながら、そんな大陸に生えているメア・バインも普通の蔦ではない。

魔力を通して発芽したメア・バインは、発芽させたものの意思を──ある程度理解して成長するので、今回は番人としての指示を刷り込んだ。


私以外が迂闊に近づけば、絡み付くだろう。


私が柵の中に入ると、門の代わりになるようにシュルシュルと蔦が伸びて、隙間をふさいだ。

家自体にも防護魔法を掛ければ、ほぼ完璧に安全な住居だ。


リビングにはソファーやテーブル。

2階の寝室にはベッド…といった具合に以前の住居で使っていた家具を、ポイポイと設置していく。


一階の小さい部屋は"メイ"の部屋と言うことで、古い小さなベッド、ランプ、サイドテーブルを置いてこっちの平民が着ていそうな服を、数着衣類かけに引っかけておく。


小さいタンスに安価なアクセサリー、靴下や下着類。

ベッドの下に使い古して処分を迷ってた靴を3足押し込んだ。


誰も入れるつもりはないが、念のためのメイド部屋の偽装工作だ。


後は魔道具の起動。

キッチンや風呂、トイレを稼働させる為には属性魔核が必要なので──ちょうど良さそうな大きさの魔核を入れれば良いだけだ。


キッチンには火と風。

トイレは水と聖。

風呂は水、火、聖。


聖核は除菌とか衛生面に作用する物で、水回りには必須アイテムだ。

核は魔物から取れるけれど、聖属性の魔物は稀有。

いたとしても聖獣として保護されている。


入手経路が無いので聖核だけは人工物になり、他の魔核に比べるとかなり値段が高い。

なので、聖核をいれて使うタイプの設備があるこの家の持ち主だった魔法使いは、お金持ちか、貴族だったのだろう。


普通の庶民の収入では気軽に買える価格じゃないものね。


この大陸でもかなりの価格のはずだ。

ここに来る前にしばらく住んでいたイヴォーグ大陸だと2cmの聖核が金貨8枚くらいだったはず。


1年ほどもつとは言っても庶民が消耗品に使うには高価で贅沢品といって言い物だ。


だけど私は自分で作れるから問題無し。

5年くらいあっという間だし、このまま引きこもって正式な許可証を待つのも悪くない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ