ダンジョン行くー?
「壮大な話だった──あ!でよー、今からダンジョン行かね?」
──始まったわ、フレスベルグの行き当たりばったり。
「まず薬局に行って、魔結石薬買ってきなさいよ」
「絶対ジューン持ってるじゃん?くれ!!」
私は舌打ちしながら、薬をフレスベルグに投げつけた。
──仕方ない、たまには遊んであげようじゃないの。
「じゃあ、ミシュティはユーニウスのお世話お願いね」
「はい、ジューン様!」
フレスベルグと私はティティを迎えに行き────
「行くダンジョンすら決まってないって、どういう事?」
「だって今決めたんだもん……いってえ!!」
私は穏やかなエルフだ。
イライラなんて、滅多にしないのよ。
今のはうっかり足が当たっただけ。
私はキャッキャウフフと相談を始めたコンビを、ジーッと眺めた。
フレスベルグはとにかく火力重視。
しかも、ヘイト管理は出来ないタイプ。
ティティは手のひらサイズ。
火力しか無いアホの子と、撹乱特化のチビ。
このパーティ【守】が無いじゃないの。
タンクが必要なのに気づいてない感じ?
──頭にワタアメ詰まってるのかしら。
治癒魔法のヒーラーは、軍隊じゃないから居なくてもいいけど。
え、まさか私にタンクさせる気じゃないでしょうね?
──やっぱりエリートバカなのかしら?
「ねえ、お忘れかもしれないけど──私は魔術師ですからね」
「えっ」
「えっ」
コンビは心底驚いた様子で、私を見た。
「エルフですけど、なにか?」
「…………」
「…………」
いち早く気を取り直したティティが、喋り始めた。
「じゃあさ、魔王組合からもう一人──ゼグとか!」
「巨人族が入れるダンジョンがあればね」
「じゃあ、セレナ!!」
「人魚の行けるダンジョンも限られてるんじゃ?」
「うー…カルミラはダンジョン嫌いだし」
「じゃあよ、後いる候補はレスターかネモおじさんじゃん?ネモおじさん、今親戚の子供預かってるんだよなー」
「レスターも魔術師じゃないの」
「…………」
「あっ!子犬付きケルベロス借りようぜ!」
フレスベルグが、ドヤ顔で親指を立てた。
「カルミラがいいって言えばね?」
「ちょっと聞いてくる!!」
フレスベルグが走り去った後、ティティがダンジョンの話を始めた。
「ほんとはゴブリンの秘密迷宮に行きたいんだけどー」
──待って。
ゴブリンの迷宮!?
「ねえ、ゴブリンってそこに行ったら、ちゃんと帰ってこれるの……?」
「ううん、帰ってこれないよ?なんか迷宮内に住んじゃってるー」
「それ、行方不明ってことよね?」
「うん!だからたまーに上に住んでる子が手紙持っていってるよ」
「手紙持っていったゴブリンは……」
「そのまま迷宮に住んでるー!あ、でもね、たまに転移できる人が来たら、みんなで帰ってるっぽいよ?」
絶対、そのダンジョンには行きたくないわ。
──でもフラグが立った気がする!
「ティティの彼氏、ゴブリンだからさァ、秘密迷宮の場所教えてもらったんだよねェ!」
ゴブリンと付き合ってるですって!?
嘘でしょ!?
「──そのゴブリン、お話は上手なのかしら」
私は、内心の動揺を必死に隠しながらティティに尋ねた。
「うん!レッドキャップだから、ちゃんと喋れるよォ!」
レッドキャップですって!?
──私がギルドに捜索依頼出してるヤツじゃないの。
『灯台もと暗し』とはこういう事を言うのよね……。
「いいわ、ゴブリン迷宮行くわ。終わったらレッドキャップを紹介して!お仕事頼みたいから」
「お仕事?いいよォ~?」




