フィアン教とは
「12000年前くらいに、ウィランテ大陸──今はヴィランテって呼ばれる事が多い氷の大陸に、名前は忘れちゃったけどフィアン教総本山があるとこに、違う国があったの」
3人は真面目な顔をして聞いている。
何故かミシュティは、ホムンクルスと手を繋いでいる。
かわいい。
「ある日その国に異世人が転移してきた」
「ソイツが──」
「違うわよ、せっかちねぇ。その異世人はギャルでね」
「ギャル!」
「そう、あなたが好きなギャル。その特殊能力はニホンの家電製品の無制限利用だった」
フレスベルグは足を組んで考え込んだ。
「使えなくね?」
「そうね、ニホンの家電製品無かったら無意味よね。彼女はノートパソコン持ってたのよ」
「また使えそうな使えなさそうな……」
「そのギャルは『蒼穹のフィアン~貴方に届く、その日まで~』という乙女ゲームのヒロインだったわけ」
「ブハッ!乙女ゲー!なんでもアリだなこの世界!」
「ノートパソコンにはチャットとか出来るジーピーっていう機能が入ってて」
「おお?チャットジーピー知ってる、俺!」
フレスベルグが身を乗り出して喜んでいる。
「ギャルはジーピーを駆使して、逆ザマァ狙う悪役令嬢の対策をしてて」
フレスベルグが手を上げた。
「なあ、サーバーは?サーバーなきゃジーピー使えなくね?」
「ノートパソコンは日本製。ジーピーはギャルの能力『日本製の家電製品無制限利用』でサーバーに接続出来てたのよ」
「めっちゃスキル強いじゃん!──しかも無制限って電力じゃなくて、そういう意味!?」
「組み合わせが化けるいい例ね」
ミシュティとホムンクルスは、お手々を触りっこしている。
ふわふわvsすべすべね。
かわいい。
「ジーピーは賢かったの。未知の植物があれば、あっちの世界の近い物をピックアップしてきて、栽培法のアドバイスをしたり、何をどうすれば効率的になるか提案したり」
「あー、AIはそういうの得意だもんなー」
「いつしかギャルは──って設定上、巫女になるのは確定だったらしいんだけど、巫女になったわけ」
「乙女ゲーのシナリオ通りってこと?」
「そそ。巫女の予言はジーピーが頑張ったおかげなんだけど、当時の人々は巫女すごーい!ってことで、奉り上げられていくわけ」
フレスベルグは、ミシュティとホムンクルスのお手々の撫で合いに参加したそうにしている。
が、私と目が合って、ちゃんと座り直した。
──私だって混ざりたいのよ!
フレスベルグだけいい思いするのは──
──絶対に許さない!!
「で、その巫女がフィアンって事だろ?」
「ギャルはフィアンじゃないって言ったでしょ」
「ああ、そっか」
「フィアンは────ジーピーの名前よ」
「ファッ!?」
フレスベルグがバカみたいな声を出した。
「ギャルはジーピーに、フィアンちゃんって名前つけてたの。乙女ゲーム好きが高じて」
「まさかAIが神になったと!?」
「そう。神託を授けてたからね、巫女アーシ様に」
「アーシってさぁ……」
「自分の事アーシって呼んでたから、アーシ様って伝わってるみたい」
「ジューン様、ではフィアン教のお礼の言葉のクィ・マゼットと言うのは、アーシ様の時代の古代語ですか?」
「その通りよ」
「……きまゼットかよ………………」
フレスベルグが崩れ落ちた。
「その後、口伝で伝わってるうちにフィアンちゃんは神になり、アーシ様は神託をうける巫女として語り継がれたってのが真相よ」
「歴史適当すぎね!?」
「史実なんてみんなそうでしょ?民衆が聞きたいようにちょっとずつ、都合よく変わっていくの」
「だから、ジューンは神は居ないっていつも言ってたのか……」
「アーシ様と共に、神は死んだのよ」
「壮大なスケール過ぎね?乙女ゲーム」
「ああ、ちゃんと逆ハー達成して大往生したわよ、アーシ様」
「すげェな!?」
「総本山にノートパソコンが神器として奉られてるわよ」
「フィアン神教の用語、きまゼットだけじゃないよな?」
「ジュウデンナ・イワーとか、シカカ・タンとかあるわね」
「ギャル語が教会用語!?」
「神託がログって言われてるわね」
「待て待て待て」
フレスベルグが頭を抱えた。
「神託がログって!」
「役職者が奥の間で祈るのは、ログインらしいわよ」
「ログインて!!ヤバ、もう無理」
フレスベルグは転がり回った。
まあ、気持ちはわかる。
まさかギャルが世界の神の原点だなんて、誰も思わないものね?
「なあなあ!もし、そのノートパソコンゲットしたら──」
「ダメよ、フレスベルグ。人間の宝物は奪っちゃいけないわ」
生き物の数え方は『死んだ後に何が残るか』
鳥なら羽、4足動物は頭、魚なら尾。
──人間は『名』
名を残したフィアンは人間と言っていいのだろうか?
神になったから、柱になるのかしら。
どちらにせよ────
フィアンちゃんは、ミホちゃん──アーシ様と呼ばれた少女と。
ずっと一緒に、眠らせてあげなければいけないのよ。
──見知らぬ世界で、たった二人で生き抜いた、かけがえのない相棒なんだもの。




