可愛いメイド達
「ギャルが!?てかレイワってめっちゃ俺の世代じゃん!」
フレスベルグが立ち上がった。
「レイワ……ですか?」
ミシュティが聞きなれない言葉に反応した。
「時代の番号みたいなものよ、ミシュティ。1万年以上前にフレスベルグと同じ時代の人がいたのは──そうねぇ、『転移元/先の時代は無作為説』が優位。『何故か』はまだ専門家が研究中よ」
「なるほどなぁ。来る時代も行き先も時間軸も、めちゃくちゃなんだなぁ」
「そうね、全く法則性がないのよね。いろんな世界から異世人が来るけど、時代はバラバラ」
ミシュティが首を傾げた。
「時間軸……ですか?」
「要約すると、同じ時代の異世人が今だったり1万年も前に来ることもある」
「まあ!──でも、確かに世界を越えちゃうならそういうのはあり得そうですねぇ……」
「フィアン神教は1万2千年前から、記録が残ってるのよ。私、その頃にたまたま居合わせてて──」
「待って、ジューンってそんなバ──お、お姉さまなのか!?」
「そうだけど?15271歳か15273歳。途中までちゃんと覚えてたんだけど──どっちかわかんなくなっちゃったのよね」
「──まあ、誤差?」
「そうね、2年なんて誤差よねぇ」
(……1000年くらい間違ってるかもしれないけど、まあいいわ)
歩き回っていたフレスベルグは座り直し──ふと思い出したかのように口を開いた。
「なあ、魔結石ってさぁ、薬を飲んだらどうなんの?」
「小さい結石は溶けて無くなるわよ。あなたのはまだ小さいから薬で充分ね」
「放置で大きくなる?」
「なる。切るか砕くしかないわよ」
「こわ!!切るのは想像つくけど、砕くってなによ?パンチされるとか?」
「なに言ってるのよ。そんなわけ無いでしょ!体内砕石魔術の専門医が砕いて小さくする……って治療よ」
「その魔術、響きがもう……こわ!」
ミシュティとホムンクルスが、心配そうにフレスベルグを見上げた。
「フレスベルグ様、病院が怖いのです?」
そう尋ねるミシュティに、ホムンクルスが答えた。
「フレスベルグ様は、注射がお嫌いなのデス」
このホムンクルス、体型はヒト型だけど透明なゼリーのような外見をしている。
心臓部分に動力である魔核が透けて見えていて、なんともファンタスティック。
頭も同じ材質だけれど、この部分に隠蔽魔法のかかった魔道回路が隠されている……うまく作ってあるわね──
──ボディは女の子寄りだし、猫ミミ仕様なのは完全にフレスベルグの趣味ね。
「そうですわ!フィアン教についてのお話をしてくださるのでしたら、お茶を淹れますわ」
ミシュティとホムンクルスは、クスクス笑い声を響かせて体をぶつけ合い、仲良くキッチンへ消えていった。
「尊い……」
「それだけは同意するわ」
可愛いメイド達が戻って来て、テーブルに軽食と紅茶が手際よく並べられた。
「──さて、フィアンのお話ね」




