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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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大森林スタンピード③


ガッシャン!!!!


6mほど落下した私は、強化魔法で落ちても無傷の予定だった。


──何故団長が私の下敷きに……?


ガシャって音は、鎧同士のぶつかる音だったのね……。


「……無事か」


「おかげさまで」


「レディに……地を這わせるわけには、いかぬからな」


そうね、私は15273歳のレディ。

422歳のドラゴンなんて、小娘よ、小娘。

鎧込みの私、多分60kg超えてるけど、団長大丈夫か?


「お気遣い感謝するわ」


団長が起き上がり、私を起こした後に真顔で呟いた。


「なに、当然の事だ。ではな」


団長は、そのまま第五騎士団長と事後処理の相談をするとの事でその場を去っていった。


私はユーニウスを呼び寄せ、一旦家に連れ帰ってからひよこ島へ。

血だらけの馬体をチェックしたが、外傷も無いし不穏な様子もない。


ただ、未だ興奮状態ではあるらしく鼻息が荒い。

体力的に大丈夫そうだったので。

きれいに洗ってやり、乾かして丁寧にブラッシングした。


ユーニウスはのんびり草を食み始めた。

私は家に転移して、魔法で汚れを取り払って紺色のシンプルワンピースに着替えた。


領主屋敷前の公園に、行かなくちゃ。

住人の避難場所だからね。


公園は有事の際の避難場所だけあって、正しく機能していた。


怪我人を収容する天幕。

大容量の調理が前提の炊事場。

ギルドの簡易事務所的な天幕。

住人の休憩スペース天幕。

見守りやすい狭い範囲だが、子供用の遊戯場。

誰をどこに行かせるか、采配する受付。


この布陣は【有事】が多い辺境ならでは、だけど。


このオン・オフ──普段はぼんやりしたおじさんだけど、ここの領主は相当策士ね。

切れ者だわ。


ドラゴンマニアの領主、絶対頭欲しがる。

綺麗に殺した私に感謝するべきね。

もしかしたら、秘蔵のヴァリ作品のレイピア売ってくれるかも!

よし、頭だけ権利主張して、交渉材料に使おう。

私はメモにドラゴンの頭、と記入した。


「ジューン様!」


ミシュティが駆け寄ってきた。

ミシュティは、どうやら救護スペースにいたようだ。


「救護にいたの?炊事にいるかと思ってたわ」


「はい。ちょっとだけですけど、闇魔法が使えるので……」


なるほど、いい采配ね。

闇魔法って、呪いとかとか恐怖に着目されて忌避する人も居るけど──


鎮静、睡眠、麻酔といった側面も持っているからね。

"ちょっとだけ"でもパニックを鎮静したり、怪我の処置に軽い麻酔──で充分役に立つものね。


私は炊事場まで行って、食料品の寄付をした。

野菜、果物ね。

主食や塩漬のタンパク源は、領内の備蓄があるはず。

なので寄付は新鮮な野菜、ちょっとした甘味としての果物で充分かな。


明日からまた少し手伝うとして、今日はもうミシュティを休ませないと。

私もお風呂入りたいし。


こっそり公園を抜け出し、領主の森でひよこ島に帰還。

夜まで、各自休憩って事にした。


ひよこ島の私の家は平屋だけど、大きめリビングでキッチンも本格的。

部屋はダイニング、私室2部屋と来客用の4部屋、来賓室小さいメイド部屋だけ。

自慢の温泉は外。

立派な湯殿と脱衣場があるの。


「ふぁーーーー」


熱々の温泉最高!


20分遠いミシュティの自宅も、温泉引いてあるけれど──ぬるいんじゃない?

って思って聞いたら、ミシュティはぬるいのが好きなんだって。

私は断然、熱々派!


猫だから猫舌、猫ボディ?

そう思って聞いたら、家族は熱々派らしい。

猫の外見なだけで、実際は妖精だから────

生き物って面白いよね。


温泉でリフレッシュした私は、その後30分ほど仮眠した。

さすがに疲れたもの。


14時からスタンピード参戦、17時にドラゴン。

19時にミシュティと合流。

気が付いたら夜も更けて、すっかり真っ暗。

小規模スタンピードで本当に良かったわ。


軽くお粥を食べて、食後のお茶をミシュティに淹れて貰っていると、ミシュティがそう言えば……と言い出した。


「お昼に小包が届いてたんです。スタンピードで失念してました」


ミシュティが転移で辺境まで取ってきた小包の中身は、10冊の本。


「まあ、本。ジューン様、明日は読書して過ごされます?」


「──ああ、これね。これ、300年くらい前にイヴォークの出版社に頼まれて、異世人向けのガイドブックを出したの」


「まあ!執筆を?」


「簡単な注意事項よ。去年、世情を踏まえて改稿したの。出来上がったから送ってきたんじゃ無いかしらね?」


「…………表紙すら読めません」


「でしょうね、これ日本語だもの」


「ジューン様、異世語も堪能なのですね!」


「ううん、昔知り合いがいただけなのよ。でも、魔界で出てる著書もあるから読むならあげるわよ」


ミシュティは飛び上がって喜んだ。

希望通りサインをいれた後、私はミシュティに制限魔法をかけた。


「私のことは内緒よ?ペンネームはペンネーム。私じゃないからね」


ミシュティは、本を抱きしめながら勢い良く頷いた。

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