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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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大森林スタンピード①


「来たか」


「ええ」


会話してる暇はない。


ニーヴの凄いことよ、白銀のフェンリルは雷を纏い、魔物を焦がし、その息吹はまさに氷雪。

その冷気で動きの鈍った魔物を周囲の冒険者が、仕留めていく。


ここに到達してるのは、鳥系とか足の早い小型が多い。

ニーヴは、スピード系魔物に最適の相性ね。


私達は魔物を押し返しつつ、住民の避難経路を構築。


団長の指示で自警団が戦闘離脱、住民の誘導を始めた。


チラリと振り返ると、ミシュティが子供二人抱えて走り去る姿が見えた。


意外に力持ちねぇ……


「さて」


甲冑を華麗に着こなした団長が、周囲を確認してから前進の指示を出した。


血の匂いが立ち込めてる。

少しずつ進むにつれ、魔物の種類も変わって来て、そこそこ移動スピードが早いモンスター。


二番手は山犬やイノシシのような魔物。

ハグィエアの固有種なのか、見たことはない。


「……っ!」


カイが吹っ飛ばされてる⎯⎯

熊か。


「気をつけて、この群れに混ざってるって事はその熊スピード特化よ」


素材回収、気にしてる場合じゃなくなってきた。

まだ民家エリア、逃げ遅れた住民が半壊した家で必死に身を守っている。

⎯⎯ほぼ動物タイプ。

危険なのは、ハグィエア担当第五騎士団が、森の近くで食い止めているのか。


住人の避難経路を確保しつつ、カイに夢中の熊に蔦を這わせて拘束。

そのまま首を斬り飛ばそうとモーションに入った時、馬の嘶きが聞こえてきた。


ああ──なぜ私はユーニウスをこんなタイミングで、連れてきてしまったの。

逸る気持ちを抑えながら、体勢の変わった熊の心臓に剣を差し込み斬り上げる。

グシャ、ガガッ!ゴッ!

骨を断つ振動が手に伝わってくる。


他の魔物も待ってはくれない。

体当たりしてきたイノシシっぽいのを、数頭氷漬けにして。

魔物の氷像を、魔剣の柄頭で打ち砕くと固い氷が崩れ落ちる。

乾いたガシャ、ドシャッという音が響き渡る。


熊さえいなければ問題ない。


私はあと少しの距離の貸し馬屋まで、歩を進めた。

馬が嘶き──あれはクッキーちゃんだ!

セバ爺の愛馬、超大型スレイプニル。

とても穏やかな子が騒ぎ立てている。

────小さい魔物をグシャ、グチャ、と踏み潰してる。


「セバ爺!」


セバ爺は血塗れで、座り込んでカウンターにもたれ掛かっていた。


「嬢ちゃん、キャンディが、キャンディが」


「落ち着いて。怪我は?」


セバ爺が手当てを受けている間、状況を尋ねたら商店街並びといっても、民家の更に森側にあった貸し馬屋。

いち早く魔物が到達してるは当たり前。


魔馬2頭が小屋を蹴破り、脱出。

セバ爺を襲っていた魔物をユーニウスが突き上げ、吹っ飛ばし、クッキーちゃんが踏み潰す、という分業で周辺を守ったらしい。


クッキーちゃんはこの場に留まっていたようだけど、ユーニウスは────?


「興奮した様子で飛び出していった」


「団長。私はユーニウスを探しに行くわ。もちろん魔物は掃除するから」


「いいだろう、行け」


本当の大型種はもっと奥、森側のはず。

私は目的地までモンスターを、雷で殲滅……を試みた。


厳密にいうと私の魔法は「雷」ではなく、「電離する大気を刃とした殺意」とすら言える精密さ。

現実の雷のように空から落ちてくる一撃ではなく、一点を狙い焼き切る、工業用レーザーのような閃光。

これを指定範囲で降らせれば、生きてられる魔物はほぼいない。

もちろん人間もだけど。


その熱と圧力で、周囲の空気が爆音をともなって爆ぜる。

魔力により制御された“稲妻”は、自然界の雷よりも異様に「音が遅れてくる」のよ。


つまり、死んだ後に、それを送る音が続くの。

私からの葬送って事で。


私はプスプスと白煙を上げながら、立ったまま絶命している魔物達を見渡した。

見た目は綺麗だけど、素材としてはアウト。

内臓や筋肉、水分のあるところは膨張して破裂するから……ぐちゃぐちゃな上に焼き加減はウェルダンよ。

とてもじゃないけど、素材にはならないわね。


私は焼きすぎウェルダン御一行の横を通りすぎて、ユーニウスを探した。


少し離れた所に、妙な範囲がある。

濃密で触れてしまいそうな漆黒。

魔物を障壁でふっとばしつつ、慎重に"漆黒"に近よってみると、途中から怨嗟のような不気味な音がし始めた。


"ォォォォォォオオ──"


生き物が出す音ではない。

これは──一定範囲に閉じ込められた高圧過ぎる魔力が軋む音。


"漆黒"は移動しながら森へ向かっている。

更に近づくと、ソレの移動ルートの後は死屍累々。

うーん、外傷無しだけど、立ったままもいる。

雷に近いような気がするけど何か違う。

焼けてるんじゃなくて干からびてる……?

鑑定してみると、絶命した魔物は魔臓だけが干からびていた。


ヤバい魔物が現れてるわね……

魔臓破壊に特化してる魔物は初耳だわ。

遠くから焼き切る、氷漬けくらい?

いったいどういう魔物?

一匹なのか、集合体なのか。

あの漆黒は集合体なのか、それともなにかを覆ってるだけ?


とりあえず、強風をぶつけてみる?


私は霧っぽいのを払う目的で、突風を漆黒に向けて撃ち込んだ。






ユーニウスだったわ………








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