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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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人間関係って難しい

今日はアニスの店に行って、付与のお仕事をする仕事だ。


エイプリルの家からエイプリルとして、お店へ向かう。

アニスは機嫌が良く、すぐにエイプリルは作業場へ案内された。


⎯⎯ああ、やっぱり今回も全部同じペンダントチャームだ……

多分一番作るのに時間が掛からないのだろう、シンプルなハート型だ。


「今回も同じ付与でね!」


アニスは付与のおかげで、あっという間に高値で売れたことで、見誤ってしまったようだ。

彫金細工師としてのアニス、商売人としてのアニス⎯⎯⎯⎯

どちらもアニスだけれど、付与が無くなったらどうするんだろうか。

今回は前回より多くて、エイプリルに対する提示金額も大きい。

私は素直に指示通りの付与を施し、代金を受け取った。


「アニスさん」


「なにかしら」


機嫌の良いアニスに、冷水をぶっかける事を言うのは残酷な気はするけど。


「申し訳ないけど、契約は今回でおしまいにさせて貰うわ」


「ええー?困るわ、だって⎯⎯」


「あなたは商売人なのですか?それとも彫金細工師ですか?」


アニスは思った通り、気を悪くしてしまったようだった。


「どういう意味?私は細工師よ、なにが言いたいの?」


「付与ありき、の全部同じチャームは細工師としてのあなたを殺すわよ。じゃ、契約は破棄させて貰うわ。さようなら」


私はその足で魔術ギルドに行き、アニスとの契約が無くなった事を登録し直した。


「理由を伺っても?」


魔術ギルドの職員が穏やかに尋ねてきた。

ここは嘘をつくべきじゃない、仕事だから。


「何度か一緒にお仕事させていただいたんですけど、段々付与ありき、になっちゃって……アニスさんの細工師としての未来がちょっと」


「ああ、そういうことですか。若い職人にありがちな勘違いですね……わかりました、契約の破綻は悪意のない判断と言うことで処理します」


エイプリルは無職になってしまった。

単発で良さそうなのがあったら、受ける形にしようかな。

人間関係ってほんと難しい。


まあ、これはこれで良いかな。

先の約束がある生活は慌ただしいもの。



時は少しすぎ、もうじき11月という頃。

ひよこ島の工事は終わり、ユーニウスも移住させてある。

無事ミシュティとユーニウスは仲良くなり、こちらは順風満帆。

エイプリルも単発で仕事をして、コンスタントに働いて実績を積み重ねている。


現在、グリュックゼーリヒカ以外で、私を煩わさせる人間は居ない。

グリュック……春男は頻繁に王都の私の家にやってくるのだ。

先月王都に到着した彼らは、言語習得のため勉強の日々のはずなのだけど。

どこかで私の家を聞いたらしい。


「でさー、王城の部屋がさぁ」


彼らは自立するまで、王城に住むんだって。

春男には、私が日本語堪能なのを漏らせないよう制約魔法をかけてある。


「メイドがさ、美人なのは良いんだけど、年増だし長袖長スカートなんだよ」


「そりゃそうでしょ、王城のメイドはベテランしか居ないし、プロだよ?若いわけないでしょ」


「メイド服ってあんなんじゃなくない?」


「メイド服は制服。作業着なの。ロングスカートが当たり前よ」


「異世界のロマンは?」


「ここはあなたが居た世界とは違うけど、現実世界なのよ。ロマンなんて無いのよ、春男」


「春男って言うなよ!グリュックゼーリヒカって呼んでくれよー」


「嫌よ、長いもの」


春男は頭を抱えた。

まあ、気持ちはわかるよ。

私も剣と魔法の世界!ってワクワクしたもの。

エルフってのがちょっとアレだったけど。


「で、今日はなに?」


「龍だよ、龍。強くて魔力が強大!」


「そうね、この世界では最強種族なんじゃない?」


私を除けば、ね。


「だからさぁ、人に化けれるんじゃないかと思って!ワンチャンあるよな?」


「聞いたこと無いわねえ、龍も竜も喋らないから……本龍達に聞いたってわかんないし」


「いや、だからさぁー、知能も高いって云うし……」


「前も言ったと思うんだけど。龍が人になるメリット無いじゃない」


「あるよ、あるある!食べ物とか、人間界にしかない美味しいものが」


「ああ、確かにポテトフライ好きな龍は居たわね……」


「だろ!だから──」


「龍はね、人間の食べ物は嗜好品枠だから、量も食べないしそこまでの誘引力は無いんじゃないかしら。食べたかったら襲いに来るだけよ」


「普段なに食ってるんだ、龍って」


「龍によるんじゃない?果物しか食べないタイプもいるし……大体は魔物を丸飲みにしてる」


「人化はしない……?」


「しない。する意味がないもの」


「喋らない?」


「喋らない。龍同士ではコミュニケーション取ってるわよ、あとこっちの言ってることも分かってる」


「じゃあなんで──」


こっち来て2ヶ月足らず、納得いかないんだろうな。

思い描いた世界とは、違うものね。

気持ちはわかるけど、先入観は早めに捨てないと痛い目見ると思うよ、春男。


「あ、迎えが来たわよ」


春男は兵士に連行されて帰っていった。


異世人か。

魔法が使えない代わりに、彼らは特殊能力を幾つか授かって来る。

スキル、と言ったら一番近いだろうか。

ヨッシーオは剣技とか体力強化を持っていたな。

勇者召喚した場合は、それっぽい特殊能力を持ったヒトが来るけど……。



普通の転移は戦闘向きじゃない人の方が多い。

春男は、失せ物探しと占い。

ファンタジーじゃないけど、悪くない組み合わせだ。


仕事につければ生きていけるもの。

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