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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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ひよこ島爆誕!と、ケット・シー

「今回もキラキラシリーズにしようと思って」


アニスは沢山の同じペンダントチャームをテーブルに並べた。


「この前のね、3日で完売しちゃって。売り物が無くなっちゃって急遽お店を閉めて、ひたすら作ってたのよ」


アニスはご機嫌だ。

自分の作品が付与ありきの物、に考えが向いちゃうと彫金の腕前上がらなくなっちゃうんじゃないかな……

非常に危うい気がする。

かといって親しくもないのに、そんな発言されたら、アニスはいい気がしないだろう。


私はおとなしく、前回の3倍以上の量のペンダントチャームに付与魔術を掛けた。

アニスの作品は素朴だが、モチーフが絶妙にデフォルメされていて可愛らしい。

銀の溶接部分も丁寧だし、腕は間違いなくいいと思う。

それだけに、付与が当たって売れ行きが良いと言う理由で技術力や想像力が停滞してしまうのは勿体無く思える。

………数回続くようなら、ここは契約を打ち切った方が良いかもしれない。

私は曖昧に微笑み、金貨3枚を受け取って店を辞した。


人付き合いって難しいなぁ。


思ったことを言えばトラブルになるし、言わなきゃ言わないでトラブルを呼ぶ。

多分、私の主成分がもう空気読めないエルフだからなんだろうなぁ。

エルフ歴15127年だからね…


そうだ、予定はしばらく無いし、島を鑑定しなくちゃ。

私は事故現場の島へ転移した。


「はい鑑定鑑定」


▶ひよこ島

所有者 ジューン


おおー!名付け出来ちゃってる!!


特に特徴の無い島だから、あっさりしてる。

鑑定って自分が考えてることが反映されがちだもんねぇ。

だから日によって違う項目が出てきたりするし、びっくり情報が掘り出せることもあるから…なんか奧が深いよね。


とりあえず温泉は欲しい。

だけどポイント探し、掘削、汲み上げ、揚湯管、湯殿……を自力でやるとなるとちょっと手間だ。

忙しくないならのんびり自分で出来るけれど、今回は業者に頼んだ方が良いだろうな。


私は忘れる前に魔界へ転移し、土木系に強い"ここ掘れ組"を訪ねた。

ここはコボルトの商会なのよ。

犬獣人っぽい見た目だが、妖精族だ。

犬獣人の外見は多種多様だけど、コボルトは二足歩行の…ほぼゴールデンレトリバーだ。

仕事もきっちり丁寧にやるし見てて癒されるし、最高の土木商会なのだ。


「温泉の掘削?得意!得意!お任せください!」


組長のゴンタさんは、嬉しそうにメモを取り始めた。

可愛いが、コボルト2000人を抱える遣り手でもある。

暗め金色の、ちょっと癖のある毛がふわふわしていて素敵だ。


「我が組にはコボルトだけではなく、ノームも在籍してるので…温泉がどの辺にあるか、ですね。まず有無を確認しないと」


そりゃそうだよね、あるかどうかわからん温泉掘削の仕事は受けられないよね。


「御安心下さい!我が組のノームは地質調査のプロですから!」


ゴンタさんは真っ黒なつぶらな瞳をキラキラさせて、交渉に入った。

結果、私が現地までの送迎をやるということで、金貨3枚で温泉探しをやってくれるみたい。


「じゃあ今からー!」


フッ軽!!


ノーム4名コボルト4名で転移。

各自ペアを組んで、張り切って四方八方散らばっていった。

ノームさん達は本当に小人さんなので、コボルトが移動補助……乗り物代わりらしいよ。

ノームは本当にこういう調査に向いていて、まさに適材適所。


3時間で全域調べ終わったようで、島の中心部からやや東のポイントで温泉が出るだろう、と4名のノームが確定診断をくだしたので、みんなでここ掘れ組に転移。


どうやらノームの乗り物役だったコボルトの中に、ゴンタ社長もいたらしい。

温泉ポイントで熱心にメモしてたのは社長だったからかぁ。


コボルトの手、どうやってペン持ってるんだろうか。

ジーッと見てると、ゴンタさんがニヤニヤして手のひらを向けてきた。

ペンは、肉球にキュッと挟まれていた。


「結構気にする人多いんですよね」


「でしょうねぇ…」


私とここ掘れ組は、もう数千年のお付き合いがある。

今のゴンタさんは22代目だ。

絶大なる信頼感よ。


「ジューンさんの今の預託金で間に合いそうですよ」


ゴンタさんは、予算を弾き出した。

宝貨5枚くらい。


ごりごりとお金が減っていく。

まあ、素材売れば良いだけなんだけど……。


「準備があるから4日後また来て欲しい!資材と人員転移させて貰えれば、飯場建てて作業します。その後は5日に一回くらい様子見に来てくれれば良いですよ」


資材の好みを伝え、湯殿デザインを決めてから、並びにある魔界紹店に向かった。


ギルドがないのでね、酒場を兼ねた紹介所がある。

魔界は他大陸と一切交流がないし、人間達は魔界の存在すら知らない…って人が多いと思う。

店主1人なので酒はドワーフの火酒のみ。

注文するとグラスに入った火酒を渡され、銀貨1枚支払う。

割り材は隅に色々あるのでセルフサービスだ。


「あらお久しぶり」


店主のルイーダさんは、ネモと同じ不死族のスケルトン系統。

ネモが絶賛してるから、多分美人だと思う。


「家政婦と言うか管理人を探していて…」


私はルイーダに渡された用紙に希望を書いた。


・種族希望 無し

・魔馬の世話(一般的な範疇)

・住居、温泉設備の管理

・簡単な家事

・必須所持魔法 転移

・期間 長期

・勤務形態 応相談(出張あり)

・勤務地 無人島

・注意事項 人間と関わる場合があります


ルイーダは記入用紙をじっくり吟味した。


「ああー、無人島ね?転移無いと困るものね。ケット・シーなんていいんじゃない?結構登録あるわよ。長期ならみんな嬉しいんじゃないかしらね、ここ単発から短期の依頼がほとんどだから」


ルイーダは7枚の紙を見せてくれた。

ケット・シーは家妖精の系統で猫の外見。

コボルトみたいに二足歩行タイプだけど外見はバラバラ。

全部に目を通して、すべての条件を満たせるミシュティという女性ケット・シーを第1候補にした。


「ミシュティね。この子は言うべき事はハッキリ言うし真面目だし穏やかだから、ジューンとは相性良さそうだね。ただ女性雇用主限定なのと長期希望だから、うちの需要と合致しなくて…200年就活してる子でね。確か祖父母の家が魔馬牧場だし……馬も好きだと思うの」


条件ピッタリ!


「とりあえず軽くお試しで10年でどうかしらね?お互いオーケーだったら本採用後は1000年更新くらいで」


「良いんじゃないかな、転移持ちだから今呼び出すわ。待ってて」


カウンターの後ろにケット・シーが現れた。

小花柄のワンピースに白いフリルのエプロン。

半長毛なのか、毛足はやや長め。

ネオンカラーの蒼い目をしたパステルカラーの三毛猫さんだ。

控えめにいって、アイドル目指した方が良さそうなカワイコちゃんだ…

私は興奮を気取られぬよう、冷静に条件についてミシュティと話し合いをした。

仕事は仕事だからね、ちゃんとやって貰えないのは困るし。

 

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