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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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愛♡魔馬倶楽部

入浴後、メア・バインに久しぶりの魔力をあたえてから王都に戻った私。

ユーニウスの世話をしてからメイ爺のお店まで歩いていくことにした。

店頭を通って工房に入ると、メイ爺が出迎えてくれたので早速龍革を見せる。

メイ爺は革をかなりの時間吟味して、満足そうに頷いた。


「革はまったく問題ないですね。見事な仕上がりの龍革です……ただ、古龍にうちの刃物が通るかどうかが……」


メイ爺は奥の棚から箱を持ってきた。


「これがドラゴン革用の細工セットなんですがね……ああああ、やはり傷ひとつ入らんなぁ……どうしたものか。裁断は魔術師に頼むか?しかし…」


ぶつぶつ言っているメイ爺。


「私個人の革細工セットをお貸ししましょうか?古の大剣龍の鱗だから、何でも切れると思うんですけど。なにぶん鱗なので一般的な形状じゃなくて……慣れるまで使いにくいかもだけど」


剣龍の鱗は外側が薄く、刃物のように切れ味が鋭いのだけれど革切り包丁にちょうど良さそうな部分はちょっと楕円形。

まっすぐなスタンダードの革切り包丁と比べると、鱗そのものを流用した私の包丁は両端がカーブしてるのよね。

穴あけとか針などの細かい用具はドワーフ謹製のオリハルコンだ。


「まーたそんなとんでもなさそうな龍の鱗……ほう?どれ……ああ、うん?なるほど、魔力か。魔力を使いながらだといけそうだな…クセはあるが良い道具だ」


王都に名高い名人なら、余裕で使いこなせるでしょうねぇ。

私が何でもほぼ完璧に出来て、素晴らしいエルフなのは間違いないけれど……持って生まれた才能ってことになると話は別。


所謂才能、天才の領域にはどう頑張っても辿り着けないのよ。


「この糸の束は同じ龍のヒゲの、細いとこのを選んで来たんです。油脂クリームも同じ龍ので」


「おお、これはまた……いい糸代わりになりそうですなぁ。ああ、ひげの間に生えてるパヤパヤしてる毛ですか。長さも1mはあるし、これだけ本数があれば大丈夫。クリームは…うん、馴染みがいいですね。作業中の手入れに使わせて貰います」


自分の細工セットをメイ爺に預け、今後は何かあったら家に手紙を……ということになった。

革は厚みを見ながら最適な部位を切り出すから、他のものに流用出来るサイズでは残せないかもしれないとの事。


それでいい、と答えて私は家に戻った。

どうせなら、一番良いものを作ってもらいたいし。

さ、今日こそこのままユーニウスを連れて、一旦辺境へ帰ろう。


ワタシは愛馬と一緒に辺境の家の庭に転移した。

街へ向かう為には森を抜けなきゃいけない。

獣道レベルの狭さだけど、ユーニウスは器用に歩いて難なくクリア。

そこから、ユーニウスの早歩きならセバ爺の馬屋まで10分程度だ。

さすがに人通りの多い中心部は気を遣ってゆっくり歩かせたけれど。


貸し馬屋に着くと、すぐにセバ爺が出てきた。

ユーニウスは嬉しそうに、以前のようにセバ爺にすり寄っていく。

セバ爺は少々驚いてはいたが、私が説明する前にユーニウスがキャンディであると見抜いたようだ。


「おやまあ。キャンディ、随分と色が変わったもんだなぁ」


え、セバ爺凄くなーい?

さすがだなぁ、さすが人工哺乳でユーニウスを育てただけあるわ。

特別な絆でもあるのでしょうね、やっぱり。


「……と言うわけでして。で、餌の量も3倍、魔草も欲しがるようになって…あ、運動量も上がってます」


「なるほど、なるほど。餌に関しては追加料金はいただくが、用意するのは問題ない。運動はちとうちじゃ厳しいかもしれんな…」


「一時的に預かって貰うって感じで当面お願いできます?一応運動出来そうな物件用意しようかとは思ってるんです、近々」


「そうかそうか、運動はちょいと走らせるくらいしか出来ないがね。ワシ以外は乗れんだろうからな……あ。こりゃダメだな」


ユーニウスはセバ爺に撫でさせたり、自ら甘えにスリスリと寄って行くのは変わらなかったけれど。

セバ爺を背に乗せるのは、嫌がった。

でも、セバ爺の事は本当に好きなのだろう。

怒りもしないし威嚇もしない……ただ、後ずさって乗せないだけなのだ。

つぶらな瞳で可愛い顔をして見せている。


「そうかそうか、まさに【主人を決めた魔馬】というわけだなぁ!ご主人が決まっても、ワシだけはイケると思ってたんだがなぁ……」


セバ爺はちょっと寂しそうだったが、賢い魔馬にはありがちな事だ、といって笑った。


「メイソンに馬具頼んだって?よく割り込めたな?………ああ、王子殿下が…なるほど。うんうん、メイソンは馬バカだが、腕は確かだからな!キャ…ユーニウスには良いんじゃねえか」


セバ爺は何か思い出して話しだした。


「あれだ。殿下の本宅にいる執事。ジョンって言うんだがね……執事長?そりゃたまげた!へぇ……アイツは魔馬に詳しいから…うん、魔馬関係の本も2冊出してたはず…王都ならいい運動方法があるかもしれんよ」


王都には、愛♡魔馬倶楽部と言うものがあるらしい。

もちろん執事長もメイ爺も会員らしい……。

第五王子殿下もだ!


セバ爺が言うには、変人もとい有識者も多いので……ユーニウスが運動出来るよう、なんらかのアイデアは出てくるかもしれんよ?と言うことだった。


とりあえずセバ爺にユーニウスを預け、商店街から辺境の家に転移して脳内対策会議だ。


私は内心ちょっと焦っていた。

ユーニウスどうしよう問題だ。

いや、毎日お世話するのが苦痛なわけじゃないからそこは問題じゃない。

そもそも魔馬は、数十日飲まず食わずでも生きていられるし。

運動量を確保してやれないのが一番問題。

慢性的な運動不足は、走るのが好きなユーニウスのストレスになるからね。

セバ爺が騎乗不可能となると、話は変わってくる。

愛♡魔馬倶楽部は……名前からして……ちょっとって感じだし。

人間と仲良くなるのは楽しいけれど、そういう濃そうなしがらみを作っちゃうと、後々私がしんどくなりそうだからパス。

積極的には関わっていかない方針で。


やはり無人島に本拠地を作るしかないかな。

家は時空庫に幾つか土台もろとも引っこ抜いた物があるし、馬に危険な場所は障壁を張れば良い。

私はメモに“家、島の掃除”と記入した。



翌日、私は島に行ってどうするか考えた。

ぐるっと砂浜に囲まれてて、馬に危険なのは北にある険しい山と西にある工房位かな?

山の部分が面してる砂浜は、そこそこ切り立っている崖だから……落石や地崩れの対策が必要だなぁ。

島を自由にうろうろさせる予定のユーニウスが、怪我をしたら困る。

とりあえず崖に保存と固定で、防災処置をした後に山の麓の工房に障壁を。


家はどの辺に置こうかなぁ……

上空から眺めて決めようかな?

私は、島全体が視界に入る高度まで上昇して興味深く観察する。

ずっと知らなかったけど、この島は楕円形じゃなかったみたい。

アレ、アレに似てる。

ヒヨコ型のお饅頭。


ひよこ島じゃん。


………島って名前付けられるんだろうか?


名前は勝手に呼ぶことは出来るけど、本質的な意味での魔力名付けとか、出来るのかしら。


「ひよこ島……」


なにも起こらない。


「ひよこ島!」

「ひよこ島ーー!」


こうなったら……と、乗せられる最大の魔力を乗せて叫んでみる。


「ひ よ こ 島 ー !」





視界が暗転した。



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