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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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馬具屋さんはお爺ちゃん

翌日、朝にいつも通りのお世話を終え、貴族区側へ徒歩10分のところにある馬具店へ。

"メイソン馬具店"

王室御用達というから凄い店かと思ったら、質実剛健って雰囲気の職人魂を感じる工房だった。

中に入って券を出すと、若い職人さんが奥へ走っていった。

年配の頑固そうな爺さんが出てきた。

爺さんって言っても、私の方が婆さんを通り越して遺物なお年頃だけどさ。


「おお、早速来ていただいて」


予想に反して物腰が柔らかい。


「ふむふむ……まずどういう感じで普段乗馬されてますか」


「好みとしては裸馬で障害物ありの早駆けですね」


「おやまあ!魔馬で?これはかなりの上級者ですなぁ!ああ、ジョンから聞いてますよ、すんげー馬って言ってました」


「ふふっ。なので、がっちり装備を付けるのは戦闘を想定した時なんです。希望を言えば、馬体の動きを制限しない最小限のもので、かつ安定性のあるもの。魔馬の属性が闇と雷なので、その辺も考慮していただいて」


「そうですなぁ、話を伺う限り体感的にがっちり装備より余計なものは省いて…最低限のパーツで機能性重視が良さそうですな。戦闘を考慮してとなると頑丈さも……馬はいつ連れてこられます?」


「あ、うち歩いて10分のとこで」


「じゃあ見に行きますかね」


メイソン爺さんと家に戻り、庭へ入って貰う。

ユーニウスは一瞬緊張して耳を倒したけれど、私を見てすぐに警戒を解いた。


「絶大なる信頼感ですなぁ!主人に良く懐いている…何て賢い子なんだ!これはまたなんとも見事な…筋肉も多い…おおぅ、蹄から魔雲がこんなに…ああ闇が多いと。ふーん…馬体は通常馬より大きめ…うんうん、骨格もしっかりしてるし…んんん?ほぅ…」


メイ爺は私をそっちのけにしてユーニウスに夢中だ。

ユーニウスもおとなしく可愛い顔をしている。


「お嬢さん、私がこの馬に触れても大丈夫ですか」


「どうぞ」


メイ爺はいそいそとバッグから色々な器具を取り出し、ユーニウスを計測した。

ユーニウスはメイ爺の上着のポケットを鼻でまさぐっている、


「鼻がいいな」


メイ爺はポケットから角砂糖を取り出し、チラリと私を見た。


「どうぞ、あげてくださいな」


角砂糖を貰ってユーニウスはご機嫌の様子。


「5日程度で仮の型を作ります。その時に乗馬が出来るスタイルで……ああ、あぶみの位置も他の締めるものも、その時に正式に計測するから、この子と一緒に来てくれれば」


「そんなに早く出来るんですか」


「あの券は私が最初から最後まで作る券でしてね。出来上がりまで他の仕事はやりません」


特急コースすごい!


「いやぁ、いい馬ですなぁ…こう言っちゃ失礼かもしれんが、人間には到底主従関係の構築は無理でしょうな。この魔力!魔力が高ければ高いほど荒いし気位も高くなりますからな…この子の魔力を制御できるのはやはりエルフ……いったいこの魔馬はどこの厩舎から…?」


「グレディスの貸し馬屋さんから譲り受けたんです。誰も乗れなくて赤字馬だったみたいで」


「セバスチャンのとこですかな、いやあそこには6本足の青馬と栗毛の魔馬だったし…となると東の村方面の…あそこの馬は葦毛だったし牝のはず…」


世間って狭いんだね。

その栗毛ちゃんだわ。


「このユーニウスはセバスチャンさんのとこの栗毛でした。覚醒したらこういう色になりまして。まだセバスチャンさんにも報告出来てないんですけど」


メイ爺は呆然としてしばらく無言だったが、ユーニウスをもう一度まじまじと見た。


「おまえ、キャンディなのか?」


ユーニウスは、ぷひん!と返事をした。


メイ爺はさめざめと泣き出した。

途切れ途切れの話を聞くと、メイ爺の愛馬だったスターチェという名の馬が産んだ牝馬がセバ爺の厩舎にお嫁に行ってキャンディを産んだらしい。

だけど逆子の難産で、お母さん馬は亡くなってしまいキャンディだけがスターチェの血を引く馬なのだと。

メイ爺は急にキリッとした顔で宣言した。


「このメイソン、命を掛けて馬具を作りますぞ!スターチェの孫は私の孫も同然!」


「ゆっくりでいいですよ、戦闘予定もないですし…無理なさらないで」


「エルフが優しい…」


「あら、エルフをご存じで?」


「王宮横の魔術研究所に一人いますよ、名前は知りませんが。そのエルフの部下が良く居酒屋で泣いてるって聞きましたね…」


「…………泣かされるだけなら、それは相当温厚なエルフだと思いますよ」


「皆さんそう仰いますな。そしてお嬢さんも穏やかないいエルフなんですなぁ」


いいエルフは死んだエルフだけだよ、メイ爺。


「人間社会に住んでるエルフは異端なんです。おかしいエルフなので、基準にしちゃだめです。知らないエルフを見たら逃げてくださいね?」


「ははは、そうします。さて、私は戻って仮の型を裁断してきます」


メイ爺はユーニウスを撫でて帰っていった。


「ユーニウス、お爺ちゃんだってー」


ぶるる!ぷひん!


私は室内に入り、ソファーに腰掛けた。

タマゴサンドを食べながら、鞍に使えそうな革を考えてみる。

4つめを飲み込んだところで、ハグイェア大森林で倒した蛇のことを思い出した。

ハグイェアヘルペトン!あれは確か魔法防御が凄くて物理にもそこそこ強かった気がする。

だけど、魔法は障壁張れるしなぁ…あ、でもユーニウスだけの時に遠距離攻撃の警戒するならありかも。

蛇の革って薄いのよね…なにかと貼り合わせる?


メイ爺なら馬具にいい素材知ってるだろうし、聞いてから決めればいいかな。

ユーニウスは仮の型が出来るまで辺境に返せないし、どうしようかな。

愛馬の戦闘能力を知るために一回どっかで騎乗して何かを狩りに行くべき?

運動無人島はあんまり魔物居ないし…

そもそも草食動物だから、動きが攻撃主体じゃないよね。

サシでの勝負には向かないと思うわ…

馬ってやっぱり主が乗ってこそ真価を発揮するんじゃないかしらね?

ユニコーンもそうだったし。

戦闘でどれだけ動けるのか、何が出来るのか確認しておくのは大事かも。


私はしっかりメモ帳に書き記した。

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