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魔馬キャンディの問題

私はメアリに1ヶ月程王都に行く事を告げ、準備に取り掛かった。

準備と言っても…コケット村の小さな雑貨店でタマゴサンドの大量注文しただけだけど。


マルシェの翌日、すぐにメイの姿でコケット村に行った私はパン屋さんを探した。

村の人に尋ねると、そんなものはない、あるのは雑貨屋だけだと言う。

あのお姉さん、確かにパン屋とは言ってなかったかも?と思い返しつつ、教えて貰った雑貨屋さんへ。

いかにもお母さんって感じのマダムが店番をしていたので、おそるおそるサンドイッチはあるかと聞いてみた。


「ああー、マルシェのタマゴサンドのお客さんかい。早速来たんだね」


どうやら情報共有されているみたい。


「実は、私の主がいたくタマゴを気に入っておりまして…」

私の【設定】は偏食気味の主に言い付けられてタマゴサンドを大量購入しに来ているメイド、という立ち位置。


「注文は受けてるけども、いたみやすいよ?大丈夫なのかい?」

マダムが心配そうに説明を始めた。

「当日中に食べないならオススメ出来ないよ」


私は時間停止を付与した箱をいそいそと取り出した。

この為だけに急遽作ったマジックボックスだ。


「こちらに時間停止型の保存箱があるんです。容量はさほど無いのですが…あのサンドイッチなら300個は入ると思います。とにかく数が欲しいので」


「あれまあ。そんな高価な?お貴族様のおつかいだったのかい」


いい感じに誤解してくれたので、私は曖昧に言葉を濁し、微笑んだ。

小さいわりに銅貨5枚と中々いいお値段のするタマゴサンドだが、何しろアルセンコケットだからね。


「そうだねえ、出荷しなかったタマゴでこしらえてるもんでね、毎日作れる数が違うんだけど。これなら出来た分だけ都度入れていっても問題なさそうだね」


「はい。箱に300個入ったら、こちらに知らせが来るよう設定してありますので、私が回収に参ります。おそらく数回頼むことになると思うのでよろしくお願いいたします」


マダムは注文数に驚きつつも、喜んで請け負ってくれた。

私は前金で金貨15枚を支払い、ついでに店頭にあったタマゴサンドを3つ買って帰ってきた。

これでタマゴサンド問題は解消されたので、心配事が減って大満足だ。

あの保存箱は一旦入れたら私以外は取り出せないし、安心安全。

ああ、本当に美味しい!自分で作ってもこうはいかない。

さすが売り物、さすがアルセンコケット。


私は2つめのタマゴサンドを食べながら、機嫌よく地図を眺めた。

セバ爺からの事前情報によると、乗り合い馬車を乗り継いで王都まで行く場合20日以上かかるようだ。

途中で馬を変えて走らせる伝令などの早馬だと6、7日で走破できるらしい。

キャンディならもっと短い日程で行けるだろう。

王都までは大きな街が2つあるけれど、基本寄らないで一気に行くつもり。

野営出来る地点は、セバ爺に地図に印をつけてもらっている。

自分以外入れない魔道具のテントを張って、中で転移して家に戻れば良いだけだしね。


王族である団長は、王都と行き来出来る個人の転移陣を屋敷に設置してるらしいけれど…

個人限定の転移陣だと、他の人は使えないんだけど月に2回くらい王都に戻ってるって話だ。


転移陣というものは大量の魔力を注入して専門家が描くもので、その内包魔力を消費して転移が発動する仕組みなので回数制限がある。

製作者の魔方陣師が魔力を再注入すれば、陣の延命は可能だけど、それも数回が限度。

いずれ陣自体が磨耗して、壊れる。

個人限定の転移陣だと陣の消費魔力が少ないからちょっとコスパは良いかもしれないけど。

どちらにせよ、高額なものだから庶民には関係の無いものだ。

数人一度に転移させるような魔方陣だと、使い捨てになる場合も多いし。


人間の場合、転移魔法を持っている人は距離が基準になってるから、一度の転移で行けるのは1000km位が限界みたいだから、私のように距離に関係なく転移する事は出来ないらしい。

そういう特徴もあって、人間が描ける転移陣には限界距離があるんだって。

今のところ、2400kmが最高記録らしい。

多分ここのギルドにも、緊急用の転移陣はあると思うけれど。

チェシャはギルド所有の馬を乗り変えて、特急コースで行くって言ってた気がするなぁ。


私は道中のどこでキャンディの休憩を取って、野営するかを決めて地図に印を付けた。

大きな街近辺では、転移ポイントも決めておこうと思ってる。

庭で大量の牧草を育てて、キャンディのご飯も確保。

野営の時は地面に生やしてもいいけど、休憩中のちょい食べには刈った牧草でいい。

キャンディは水遊びが好きだから、1時間くらいは休憩をする予定。


セバ爺のところに行くと、キャンディの支度は出来ていてルンルンで外に出されていた。


「嬢ちゃん、キャンディだがな、見てみろ」

セバ爺がたてがみを指す。

額の白星以外は栗毛だったキャンディのたてがみが黒っぽい。


「あら?黒っぽい?」


「魔馬だからな、色変わりの可能性もあるなぁ」


「私、鑑定してみるわ。得意だから任せて」


▶魔馬サエウス(先祖返り)

「※未命名」通称キャンディ

6歳牡馬(未去勢)

草食

健康 良好

魔力 特大(未覚醒)

属性 闇、雷

概要 闘争心が強く、残忍で気の荒いことで知られる馬型魔物サエウスのほぼ純血。

代々は温厚な馬からの先祖返りであり、気性は人間に育てられた為、魔馬としては穏やか。


「…健康みたいよ?人間に育てられたから魔馬としては穏やかなんだってー」


「そうかそうか、健康ならええわ」


セバ爺に別れを告げ…キャンディを駆って王都に向かう街道を、道が狭くなるまでハイスピードで飛ばしていく。


サエウスかぁ…イヴォークで有名な【人喰い幽馬伝説】の元になった魔物だよねぇ。

馬は草食だから肉は食べないけど、アイツらほんと気性荒いもんね、人間を噛みちぎるとかは余裕でやりそう。

色は黒っぽくて、蹄から黒煙が立ち上ってるように見える魔物だ。

言われてみたらキャンディも蹄からユラユラと魔力が漏れ出てるよね。

まあ、キャンディはキャンディだから良いんだけれども。


問題はさ、通称キャンディって所だよ。


この魔馬、名付けを受け入れていない…

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