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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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コケットランド

ギルドから出て歩き始めた私は、ゴブリンについて考えた。

このまま行ってもまた混乱するだろうから、通訳みたいな人が欲しい。

ゴブリンにパニックを起こさせない人が良いんだけど。

確かゴブリンの亜種みたいなレッドキャップは普通に会話出来てたと思うのだが…

ヨッシーオと居たペイペイはもう居ないし、今のレッドキャップを探すしかないか…。


ゴブリン一族に稀に現れるレッドキャップは、必ず1人。

先代が亡くなったら次代のレッドキャップが産まれるらしいって噂なら知ってるけれど、ペイペイ以外のレッドキャップは見たことが無いのよね。


私はもう一度ギルドに戻った。

忘れ物ですか?って顔をしているチェシャに、私も捜索願いを出したい…と事情を説明した。

お互いに込み上げる笑いを抑え込みつつ手続きを進める。


「レッドキャップの捜索ですね。どうします?見つかった場合」


「ギルド経由で本人からこの支部に連絡くれるようにして貰える?見つけた時に、ゴブリンとの通訳依頼って言っちゃって構わないから」


金貨3枚支払って、依頼完了。

後は放置でいいや。

私は再度チェシャと挨拶を交わし、家に帰る事にした。


「なんかこう、バタついてる気がする…」

一人暮らしだと独り言多くなるよね。

時空庫から取り出したパンに、バターを塗りながら、予定を組み立てていく。

コケットランドに行く、これは最優先。

フレスベルグの動向監視。やりたくないけど自衛のため必要だろう。

ゴブリン。これはレッドキャップが見つかるまで放置でいい。

早めに王都に行って、非合法でいいから違う身分証明書を用意したい。

コケットランドに行ったら、しばらく王都に行こう。


パンを食べ終え、紅茶を淹れて。

今日はガゼボでのんびり過ごす事にしよう。

スローライフを楽しむなら人間社会では無理よね。

気忙しく時が流れているもの。

だからこそ、人間は魅力的なのだけど。


なんだかテンションの下がった私は、20日になるまで家から一歩も出なかった。

長く長く生きていると…

したくない事や避けられない事が起きるからこそ、緩急がついて生きていくのが退屈じゃないってのは理解してる。

だからと言ってやりたくない事はやりたくないのよね。

それを貫くには、1人で山奥に籠るしかなさそうだ。


気を取り直して、早朝から楽しみだったコケットランドに行く。

きっと良い気分転換になるだろう。

朝の市に間に合うよう、私はメイの姿になってキャンディと共にコケットランドへ向かった。


早朝の空気は気持ちがいい。

少しずつ気温は下がってきてるがまだまだ暑い季節だ。

昨日誰かが草を刈ったのか、草の香り漂う早朝のひんやりした空気はキャンディも走りやすいんじゃないかな。

あっという間に東の村を通り過ぎ、コケットランドに近づくにつれチラホラと荷馬車や人の姿が見られるようになってきた。

道は広めだけど、スピードは出さない方が良さそう。

ポクポク歩く馬も良いものだ。

私はキャンディの心地よい揺れに身を任せ、景色を楽しみたくて周囲の馬や馬車と歩調を合わせると、キャンディはちょっと不満げに鼻を鳴らした。


しばらく経つとコケットランドが見えてきた。

無料の広い馬留めが用意されているけど、キャンディは魔馬なので念のため有料の馬留めに入れる事にした。

場所だけ借りる感じで白銅貨2枚、世話は自分でやるシステム。

無料の倍のスペースがあって周囲の馬とも離れているのがありがたい。

魔力水を用意して周囲に草も生やしておく。

軽く水を掛けてやると水遊びが好きなキャンディは喜んだ。

私はキャンディの馬体をキッチリと乾かしてからマルシェに向かった。


おお、青いピーネが売ってる!

早速普段目にしない物がどんどん視界に飛び込んでくる。

会場は広いけど、数時間で一回り出来そう。

出店の並びは整合性がなくて、野菜の隣が革製品だったり、乳製品のお店だったり。

場所取りは早い者勝ちなんだろうか。

私はアレコレ買い物を楽しみながら、マルシェを歩き回った。


サンドイッチのお店は3つあった。

もちろんタマゴサンドを買って、味比べをしたよ。

一番好みの味だったお店で、在庫が幾つあるか聞いてみたら60個くらい作ってきたとの事。

買い占めは良くないだろうから、何個なら売って貰えるか訪ねると40個売って貰えた。


「アルセンコケットの卵は濃厚なんですよ。そんなに気に入ってくれるなんて、父母が聞いたら喜びます」

売り子のお姉さんがニッコリ。

聞けばまさにコケットランド直営店というか、アルセンコケット養鶏所の商品だった。

普段はコケットランドの方ではなくて、もう少し先の方に行った村で販売してるらしい。


「歩いて10分くらいですよ。市が立つ日はお休みですけど」


村の名前を聞くと、お姉さんはちょっと恥ずかしそうにコケット村です…と小さな声でと言った。

お礼を言って、しばらくあちこち見て回った後に教えてもらった通りの道を歩いてみる。

もちろん転移ポイントを探すためだ。

コケットランドからコケット村までは綺麗に整備されていて、全く隙がなかった。

村に入ると住人が不思議そうにこっちを見ている。

確かに広い道からは逸れたルートにある村なので、住人や商売人以外でわざわざ来る人は少ないのかも。

小さな村を通り抜け、反対側から出てみると中々いい感じの森があった。

良さげな場所を決めて、コケットランドに戻る事にしたけれど…。

頻繁に来たら怪しまれそうだなぁ…


悩みながらマルシェに戻ると、ちょうどお姉さんが店じまいしているところだった。

思いきって大量注文を受け付けているかどうか聞いてみた。


「村のお店には母がいるので、今度そっちで相談してみてください。多分大丈夫だとおもいますよ?たまにそういう注文も入るので」


そう言ってお姉さんは片付けを終えて撤収していった。

私はその後も色々買い込んで、ちょうど開催されていた馬の競りを見学した。

セバ爺の姿もあったけれど、今の私はメイなので声は掛けられなかった。

マルシェといっても朝市に近いんだろうね、ポツポツ撤収し始めてる。

道が混み合う前に帰った方が良さそうだ。


キャンディは草を食べ尽くし、静かに待っていたので御褒美にプルナをあげた。

魔法水の桶を片付けて…と。

早めに切り上げたおかげで帰る人々はまだ殆どいない。

広々とした道を、キャンディの好みのスピードで駆けさせた。

ちゃんと走らせればコケットランドまで1時間掛からないみたい。

この距離だと、休憩も要らなさそう。


私はキャンディをセバ爺の厩舎に戻し、王都に行く日程を明後日に決めた。

王都では色々やることがあるから、何事も早めにだ。

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