会議②
「オムライスは却下。女性だけが奉仕係だなんてあり得ないし」
カルミラがバッサリと斬り捨てた。
「んじゃ……」
「屋台だろ、お好み焼きかたこ焼き、焼きそばがいいんじゃない?」
「あー、ヨッシーオ懐かしレシピ集に載ってるヤタイメシってやつ?」
「それそれ」
「鉄板あれば出来るし、焼きそばがいいんじゃない?」
「あ、南沖に小さいクラーケンがいるらしいって昨日聞いたけど」
「へえ、どのへん? 小さいとなると若い個体ね。柔らかいからいいかも」
「んっと……死の島より南東」
「おっけー、とりあえずクラーケン獲ってくる」
フレスベルグとゼグが張り切って出かけ、あわててティティもついて行った。
「……クラーケンならたこ焼きだよな?」
レスターが生真面目な顔で聞いてきた。
「たこ焼きの鉄板はレスターが作るのよ」
「なぁに? たこ焼きにするの? 他に何が要る?」
カルミラがメモを取りながら首を傾げた。
「そんなに珍しい物は要らないはずよ。でも、紅生姜をどうするか」
この世界、梅は存在しないのよね。
つまり梅干しが無いから梅酢も無いのだ。
「生姜はピクルスでいいんじゃね?」
「まあ、酢漬けには変わらないからそれで」
「たこ焼き自体は試作しないとだし、鉄板には油を馴染ませないといけないから……俺は帰ってたこ焼き鉄板を作るわ」
「そうね」
「出来上がったらタコパな」
レスターは手を振り、転移していった。
「ねえ、タコパって?」
セレナがようやく口を開いた。
「たこ焼きパーティよ。……ってどうしたのその目の隈」
疲れ切った様子のセレナは溜息をついた。
「勇者の航路をどういう感じでガードするかでマーメイド連合が紛糾してて」
「セレナの魔亜冥怒連合……まだあったのね」
「さすがにもう暴走はしてないんだけどさ、自警団みたいな感じで続いてるのよ。今は三代目が頭張ってて──」
黙っていれば可憐な乙女にしか見えないセレナだが、若い頃はレディースの初代総長だったのだ。
夜光クラゲでデコられ、連なって暴走するリヴァイアサンたちは圧巻だった。
当時は海底火山付近の熱泉を巡っての抗争だった記憶があるのだけれど。
今はマーメイドたちのスパとしてリゾート地みたいになっている。
「警護のルート?」
「それもあるけど──ほら、試練を与えたほうが良いんじゃないかとか」
「試練ねぇ……」
「序盤にスラムで奴隷美少女拾ってたと思うんだけど……」
「ちょっと待って……うん、双子の美少女ね。履歴書あるわよ、ほら」
「どんぐり歌劇団研究生か」
「この子たちあんまり放送されてないけど、雑用係として勇者パーティに帯同してるのよ」
「へえ」
「なにこれ、イヴォークでも奴隷のお姉さん救出してるの?」
私は思わず口を開いた。
「ジューン、さては勇者チャンネル見てないわね……
?」
「ダイジェストなら見てる。で、この奴隷お姉さんは?」
「その人は、団長の三番目の娘さん」
「まさかの!」
「尺の問題があって、お色気枠を増やしたみたい」
「三女、サキュバスじゃないの。勇者大丈夫なの?」
「大丈夫、番組は全年齢対象だから変なことはしてない」
セレナが少し元気になって、顔を上げた。
「で、試練というか見せ場があったほうがいいでしょう? 航海中も」
「それはそう」
「だから、とりあえず中盤で襲撃して奴隷美少女か奴隷お姉さん死亡で盛り上げようかと……」
「あら、いいわね。何処かに寄港する前日とかがいいんじゃない」
私はまとめられた書類にざっと目を通し、頷いた。
「やるなら双子ね。序盤から一緒だし、パーティメンバーとも打ち解けて人間関係がしっかり出来上がっている」
「そこで一旦盛り上がって、立ち直ってで」
「うんうん、じゃあそういう方向性で……」
「決まったら早めに報告を。アラインに詳細を伝えておかないと、返り討ちにされちゃうから」
「エルフほんと怖いんだけど」
「……アラインはかなり温厚よ? 頭もいいし」
「エルフなのに?」
「エルフにしては、ね」
セレナはなんとなく方向性が決まって、安心したようだ。
いつもの笑顔が戻ってきた。
「エルフもだけど」
カルミラがセレナをマジマジと見つめながら呟いた。
「マーメイドも相当短気よね……?」




