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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
スローライフ所望のエルフ

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教育


「そういうわけで、教師を探してる」


 アマンダはタバコの煙を吐き出し、唸るように言った。


「自分の方が人脈あるでしょうに」


 私の呆れた声に、アマンダは渋面を作った。

 今日はこれから用があるらしく、お酒はなし。


「だって、商会と私とはさすがに紐付けられないでしょう」


 それもそうだ。

 王族から逃げ出そうというのに、王家御用達の商会という表の力を使うわけには行かないものね。


「うーん、侍女見習い……侍女の教師なら心当たりがないことはないんだけど……」


 王族と物語の強制力から逃げたいというセシリアとアマンダの計画はこうだ。

 既にセシリアには、『ヴェラ』という名の別の身分を作ってある。

 数年前に断絶した他大陸の低位貴族の娘の身分を金に物を言わせて入手したらしい。

 平民となったヴェラ嬢本人は救貧院で身分不詳のまま病死しているとのこと。

 裏には裏の流通経路があるということね。


 (そのヴェラとして、セシリアは生きていくと……)


「二年後に逃げるとしても、その後よ。今からヴェラとしての実績を作っておかないといけないでしょう? 怪しまれないように」


「この国で生きていくなら、そのほうがいいでしょうね」


「アタシがこの国から動けないから仕方ないのよ」


「で、侍女として二年の実績を作ると」


 アマンダは頷き、新たなタバコに火をつけた。


「うち……本宅でと思ったんだけど、母の目があるから誤魔化せないと思うのよ」


「そりゃ居ないのに居た事にするのは無理よ、あのヘレナさんが見逃すわけないもの」


「そこなのよぉ!」


 アマンダが大声を上げた。

 相当な切実さが伝わってくるけれど、商会頭としての顔しか知らない母親なのだから裏事情を持っていけないのは致し方ないと思う。


「ヴェラ嬢の経歴は入手してあるの。万が一知り合いに会っても、誤魔化せるくらいには」


 元々社交デビュー前に平民になっているので、知り合いもほぼ居ないと言っていい。

 髪の色は金、瞳は茶色。

 これは魔道具で誤魔化せる。

 顔立ちも、化粧でどうにでもなる。

 学園に通ってるセシリアは相当な厚化粧で、幼くタレ目に仕上げているから。

 実際のセシリアは素顔でも可愛いのだが、乙女ゲームのセシリアにより近付けた結果、そうなってるということだ。


「なるほどねぇ」


「母に婚約者としてヴェラを会わせた時に、侍女だったと誤魔化せるくらいの儀礼は仕込まないと……」


「あ、だから侍女教育の教師をってことなのね」


 侍女教育に向いてそうな人材なら手元にいる。

 ただ、あのケット・シーはきっとスパルタだ。

 セシリアが耐えられるかどうか。


「逃げる前に妻として迎えておきたいのよ、身分の整合性を確実にしたいから」


「アリバイ的なものってことよね。厳しくてもいいなら完璧な指導ができる人材ならいるわよ」


「……その人材に何を支払えばいいか、ね?」


 アマンダはホッとしたように肩の力を抜いた。


「お金でいいと思うわ。二年間で仕上げる報酬に見合う額ね。引き受けてくれるかどうかは聞いてみないと約束出来ないけど」


「お金でいいなら希望額を出すわ」


「じゃ、聞いておくわね。ただ、私の知り合い何人かに事情をある程度話すことになるけど」


「その方たちが他言しないなら、構わないわ」


 アマンダとの一旦打ち合わせを終え、私は島に戻った。

 ミシュティは……海岸にいるようだ。

 のんびりと波打ち際にしゃがみ込んでいるミシュティに声をかける。


「ジューン様、おかえりなさいませ」


「貝掘り?」


「はい、夕食のパスタ用に。アサリの季節ですから」


「いいわねえ」


「菜花と合わせようと思いまして」


 私もしゃがみ込み、一緒に貝掘りをしながらミシュティにアルバイトの話をすることにした。


「ええっ、あのピンク髪の令嬢の教育をっ!?」


 ミシュティは驚きのあまり、バケツをひっくり返してしまった。

 無理もない。

 ミシュティは数ヶ月前の舞踏会で、セシリアが王太子にパンツ丸見えで飛びついていたのを見て卒倒しかけていたから。


 (良い印象はない、絶対に)


「順を追って説明するわね……」


 ミシュティが必死に散らばったアサリをバケツに戻すのを手伝いながら、私は事情を説明し始めた。 

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― 新着の感想 ―
ピンク髪の中の人の年代的には「ドジでのろまな亀」って叱咤したら案外奮起するかも?
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