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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
スローライフ所望のエルフ

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 今、迎えに行く──


 そう書簡を飛ばし、私は勇者パーティのエルフであるアラインの自宅へと転移した。

 そう。

 彼らは数ヶ月かかってドラゴンオーブを揃え、死の島への海図を入手した。

 島へ向かう準備のため、勇者たちは暫く王都に戻ってきているのだ。


 アラインを回収して、死の島へと転移する。


「ここが死の島、ねぇ……死霊の島か」


「そう。一応座標覚えておいてね。万が一船が壊れたら、あなたが漂流をうまいこと誘導するのよ」


 私の言葉に、アラインは嫌な顔をした。


「承った。で、この廃村は……移設魔法か?」


「そう」


「火山灰が堆積しているが?」


「それは今からこの土地と馴染ませるのよ。あなたは向こう端から」


「何で私が……」


 そう言いながらも、アラインは向こう端へと去っていった。


 廃村が置かれた場所は砂浜の近く。

 地盤は砂混じりで、赤土だ。

 対して村の方は岩石混じりの黒土。


 境目の方を適当に混ぜて、振り積もっている火山灰を風で周囲にまき散らして自然に見えるよう整える。

 海の方は船をつけられそうな深さのある位置を探し、ゼグから預かってきた桟橋の残骸を沈めておけば完成だ。


「で、ここをキャンプ地にすると?」


「そういうことよ。どう、勇者たちはこの島に耐えられそう?」


 普段一緒に冒険してる人に聞くのが一番手っ取り早く済む。


「結界は」


「これから古く見えるよう、やや破損した結界を張っておくから」


「直して使えと」


「そうそう」


 エルフ同士だと、話が早くて助かるわ。


「やだ、この雑誌最近のじゃない。回収しなきゃ」


 半壊した民家の床の雑誌を拾い上げ、私は顔を顰めた。


 数えてみると民家は五つ。


「近代のものは省いて」


「何で私が……」


 アラインはブツブツ文句を言いつつ、民家へと歩いていく。


 その間に雑な結界を張っておく。

 起点は足元に転がっていた白い石。

 祠とかそういうのは無しでいい。

 ただの村って設定なので。


 東の方で土木工事の大きい音が聞こえるが、遺跡を改良するのはゼグの担当だから私はノータッチ。

 やるべきことを終え、アラインが戻ったところでテーブルセットを出してお茶を出す。


「……雑なんだか丁寧なんだかわからないが……いただこう」


 アラインが優雅に腰掛けたところで、雑談が始まった。


「それで、決戦時にこの村も木っ端微塵でお願いしたい」


「あの城から、この村を誤射しろって? ちょっと無理があるのでは」


「魔王が移動タイプならいけるかしらね」


「村方面に立ち位置を取ってもらえるなら……どうせ周囲を鑑定するのは私の役目だ。そこまでしなくてもいいのではないか」


「それもそうなんだけど、後世に調査団が来たら面倒でしょう」


「こんな海の果てまで──いや、人間ならあり得るな」


「そうなのよ。人間って命懸けで究明したがる層が一定数いるでしょう」


 アラインが無表情のまま、頷いた。

 凪いだ風が髪を揺らしていく。


「確かに。人間の探求心は目を見張るものがある」


 数世代に渡って研究されたら、粗が出ちゃうかもしれないので壊すほうが無難なのよね。


 (まあ、人間の出入りはラウバッハが許さなさそうだけれど)


「……結界を張れば休むのは問題ないが、城の近くにも休養場所が必要かもしれない」


「そうね、一応城の近くに古い祠でも置いて似たような結界作っとくわ」


「しかし、こんな妙な場所よく見つけたな。死霊に位相が引っ張られてるじゃないか」


「そりゃそうよ、数千年死霊しか住んでなかったんだし……あ、そうだ」


 私は小粒の聖核を取り出した。


「これで、この島で行動するにあたって悪影響を最小にするようになにか細工しておいて」


「そういう展開を見越して、あらかじめ『私が』作っておくというわけか」


「そうそう」


「軽い結界展開のブレスレットあたりが妥当だな」


「そこは任せるわ。今工事してる遺跡、東の森、北の湖からアイテム集めないと城門が開かないらしいわよ」


「……また物集めか。ちなみに敵は死霊系か?」


 アラインは、深い深いため息をついた。


「八割は死霊なんだけど……ここの主に借りてる人材だから、壊してもいいけど消滅はやめてね」


「主」


「ラウバッハって言ってエルフのリッチキング……あら、知り合いとか?」

 


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