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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
アルシア王国に移住するよ!

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ゴブリンの帰還

グレディスの街についたのは夜更けだった。

馬車と馬で数日かかる道のりを10時間足らずで走り抜けられるってすごくない?

もちろん3回の30分休憩は入れたけれど。

キャンディは早さもだけど、持久力も高い。


王都までの道沿いには幾つか大きめの村があり、だいたいそういう村には貸し馬屋だったり、貴族の個人的な馬房がある。

もちろん王家のお馬さんもいる。

急ぎの用事や伝達がある場合、こういう村で馬を取り替えながら爆走するわけだ。

普通の馬が常歩、つまり普通にトコトコ歩く場合は1日に30km移動できる位。


速歩だと1時間おきに休憩しっかりいれれば45kmは行ける。


駆歩だと時速2、30km出ると思うけれど負担が大きくなってくるので、30分走らせたら充分休憩を取らせて当日だともう一回位は行けるかな?って位。

それ以上は馬体の負担が大きくて無理。


王家の馬房はこの30分が目安らしく、だいたい馬の交換にちょうど良い場所に馬が配備されている。


襲歩は全速力。

多分、時速70kmは出るけど5分走れれば上々。

馬は疲れきっちゃうので、その日は使い物にならない。

移動できるのは5kmくらいかな。


魔馬はもっとポテンシャルが高いので、普通の馬のこれくらい走ると言う目安は当てはまらない。


駆歩~襲歩レベルのスピードで数時間走るのだ。

休憩はさすがに入れてるけどキャンディの様子を見てると彼の中では襲歩ではなくて軽い駆歩か速歩って感覚なのかもしれない。

そこまで息切れしないし汗も大量じゃないからね。

どっちにしても尋常な移動スピードじゃないってことよ。

400km位はあると思うのよね、エリーさんの村まで。

地図にそんな表記無いから体感だけど。


馬丁にキャンディを預ける時にちょっと物音がしたせいか

深夜だと言うのに、貸し馬屋の隣の家からセバ爺が出てきた。

「おお、ずいぶん走らせたようだの!キャンディが汗かいとる」

嬉しそうにキャンディの世話はワシがやる、とセバ爺がキャンディを引いていった。

キャンディの母馬は出産時のトラブルで亡くなっており、セバ爺がミルクを与え手塩にかけて育てたのだ。

セバ爺には懐いている、というかセバ爺以外は受け入れられず赤字馬になっていたのが

キャンディなのである。


セバ爺の不気味な猫撫で声とぷひん、ぷひんと甘えている鼻息が聞こえる。

邪魔しない方が良いだろう……


キャンディにあげるように幾つかのプルナを馬丁に言付けて、商店街の拠点へ。

ヘレナさんは朝イチ報告だね。

私は奥の小部屋に入って家まで転移した。


ポストに連携している箱に幾つか手紙が入ってるけれど、時間のあるときにゆっくり見たいからスルーで。

入念にヘアケア、ボディケアをしてゆっくりお湯に浸かって。

髪を乾かして、タマゴサンドだけ食べて寝た。


起きたのは昼過ぎだったが、とりあえずヘレナさんだ。

顔を洗って歯磨きだけ済ませ、簡素なワンピースに着替えて街の拠点に転移。

そのままヘレナさんの家へ。


「もう済んだのかい!?アンタ、わからんと思って適当なこと言ってるんじゃ無いだろうね?」

ヘレナさんは疑い深そうな顔で私をジロリと睨んだ。


エリーさんの手紙と焼き菓子を渡すと、手紙を確認してゆっくり顔を上げた。

「どんな種族でも、仕事の出来る女は好きだよ。アンタ、やるじゃないか」


ふん、調子に乗るんじゃぁないよ!

だけど、王都に行って困り事が有ったらフレッド商会に行って、アタシの名前を出しな。

息子の商会だがね、息子はアタシに頭が上がんないのさ。

内容にもよるが、一回位は話くらい聞いてやるよ。


ヘレナさんは出掛ける用事があるといい、私は任務完了でスッキリサッパリ。

もう一度街の拠点に戻り、ハグイェア大森林のゴブリンの洞穴に転移した。

案の定ゴブリンは右往左往して大騒ぎになった。

壁にぶつかって気絶したり意味不明に走り回ったり叫んだり。


ゴブリンママ(多分ママで、名前はモディの筈)

「モディは誰だっけ?」


キリッとした顔で一人が歩み出てきた。

「緑のエルフ、私がモディ!」


「代表はモディでいいの?」

「ワタシ一番えらい。子供、旦那は喋るノ下手です」

やはりママだった。

うーん、見分けつかないのは困る。

全員必ず被っているとんがり帽子の色を変えて貰えばいいって話じゃない。


ゴブリンのこの帽子、帽子に見えるけど帽子じゃない。

魔力で構成された髪の毛という方が近いかもしれない。

水玉模様、星模様。チェックだったり無地だったり模様は様々だ。

てっぺんにポンポンもついている。

モディ一家は全員ポンポンが白だったし、色も似たような紫色で水玉も白。

模様の大きさや配置はよく見たら違うけれど、総じてほぼ同じように見える…


ゴブリン族の【帽子】は大体肌の紫色とは違う濃さの紫なのだけれど、ゴブリン自体が50cmあるかどうか?で

小さい上にじっとしていることが無いので

本当に目がチカチカして判別が難しい。


稀に魔力量が莫大なゴブリンは赤い帽子を持っていて、レッドキャップと呼ばれている。

ゴブリン界隈の英雄だ。

有名なのは勇者ヨッシーオと魔王討伐に向かったレッドキャップのペイペイかな。

魔王戦の直前、敵に寝返ったエルフと相討ちになったとかなんとか…


ちなみに勇者パーティーにエルフがいた事実はない。

なんで知ってるかって戦ったことがあるからだ。

当時の魔王はエルフ、魔族、大精霊の数人でジャンケンとかくじ引きをして決めたのよ。

ヨッシーオの時はじゃんけんで負けた私だった。

しかも魔王城とか最後のダンジョンの宝箱の中身は当代魔王の自腹。


エルフが裏切ったんじゃなくエルフが魔王だったのよ。

ま、歴史なんてそんなものね。

伝承側の都合の良いように変わって後世に伝えられていくのはよくあること。

ヨッシーオなんて聖女と結婚したことになってるけど、実際は娼館の女将のハニトラに引っ掛かって女将と結婚してたし。

幸せそうだったから良いんだけどさ。


ちなみに聖女は地球じゃない世界から召喚された女で、新婚の人妻だったよ。

召喚時、キレ散らかしてたもの。

彼女は魔王討伐後、希望通り自分の世界に帰っていった。


真実って意外とつまんないから、ヨッシーオの冒険譚は今伝わってる通りで良いんじゃないかな。


あっちこっちに飛ぶモディの話を根気よく聞き、

モディ達の故郷はイヴォークの砂漠にあることがわかった。

地図は良くわかってないみたいだが、砂漠に行けば帰れる模様。

人里に転移するのと砂漠のオアシス転移するのとどっちが良いのか聞くと

オアシスが良いというので、行き先はオアシス。

なんでも砂漠にはゴブリンの共有財産の使役獣がいて、すぐに帰れるのだという。


いざ転移することになってもゴブリン達はチョロチョロ動き回るもので、一向にまとまらない。

業を煮やした私は結局、全員を縄で縛り上げて転移した。

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