面談
マサオ、セシル、雇用予定のサヨさんはカフェで面談中。
私とミシュティはラメン屋で働くことが決まっている男の子と女の子と別テーブルに居る。
(なるほど。マサオ、春男とスタッフ二人でやっていくのね)
男の子はコウ、女の子はナナと名乗った。
二人は異種族であるエルフとケット・シーに興味津々だ。
「──で、魔法が使えないとかもうショックすぎて。私のスキルなんて、浄化じゃなくて洗浄時短なんですよぅ」
「俺なんて剣とかじゃなくて采配(小)だし。冒険者になりたかった……」
しょぼくれる二人に、ミシュティは不思議そうに首を傾げた。
「いい技能ではないですか? ラメン屋さんでは食器を手早く洗えるのは素晴らしい戦力ですもの」
そうかなぁ、と首を捻るナナ。
私もミシュティに続いて口を開いた。
「それに采配も、こっちで生きていくのに向いてると思うわ。席を決めたりトッピング聞いたりするのにミスが少なく立ち回れるもの」
「仕事決まっただけありがたいと思ったほうがいいとはギルドの人に言われた」
コウはポツリと呟いた。
「ギルドも慈善事業じゃないから、保護期間が終われば援助はないものね」
「そうなんですよぉ、レインさんの店で働いてお金貯めて二ヶ月以内にお部屋を探さないと……一応安いところは紹介してもらえるっぽいけど」
冒険者ギルドが国の補助を受けて行っている異世人保護プログラム。
無償で言葉を学べて、半年は衣食住も保証されているのはこっちの常識的には破格の待遇である。
(でもこの二人は中学生だった……まだ親の庇護下で過ごせる予定だった子たち)
そう考えたら困惑してるのもわからないではない。
たった半年で放り出されることに、不安があるのだろう。
就職先があって本当に良かった。
考え事をしていると、話題は違う方向にいっていた。
「ツガイ、ですか」
ミシュティがナナの言葉を鸚鵡返ししている。
「そう! 運命の番とかそういうのあったらいいなあって。王子様とか」
ナナはそう言って、パフェにスプーンを差し入れた。
「残念ながら、この世界にそういう概念はないのよ。知的生活を送る種族にはね。魔物や動物にはそういう種がいると思うけど」
「ええー、無しですかぁ」
「獣人とかだと遺伝子的に相性のいい相手から、素敵な香りがしてくることもあるみたいだけど。唯一では無いという話よ」
「ナナさんの言うツガイシステムとは……その決まった相手としか子を授かれないと言うことでしょうか」
「そう!」
ミシュティは人当たりのいい笑顔ではあったが、困惑しているようだ。
「恋愛や婚姻をするにあたって浮気は言語道断ですけれど……生物学的にたった一人としか次世代をつくれないとなると、御家断絶のリスクが跳ね上がりますよ?」
「御家断絶! でも確かに現実的に考えたら、番の概念はなんとなくおかしい気もするな」
コウが納得したように頷いた。
ナナも少々しょんぼりしながら同意する。
「小説と現実の差が辛い。主人公になりたかった……」
「ナナさんの物語では、ナナさんが主人公です。黒くて艶々の髪、優しいお顔立ち……私はとっても綺麗だと思います」
「そ、そうかな?」
「コウ君もナナちゃんも、こっちの世界基準で見たら不細工じゃないから安心しなさい」
「ええ、お二人ともとても素敵です!」
ナナの機嫌は上向き修正され、追加のシフォンケーキを注文した。
コウはパフェを食べたあとだというのに、何故かパスタを。
(男の子あるあるね……)
サヨさんの面談が終わり、カフェ側の厚意でテーブルがくっつけられた。
どうやら無事に雇用契約を結んだようだ。
「いやー、助かったッスよ! それに農業初心者じゃないのがありがたいッス」
小柄で小さな顔をしたサヨさんは、恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。
「実家が……苺農家だったもので……」
消え入るような小さな声だ。
マサオが笑顔でサヨさんの肩をポンと叩き、口を開いた。
「サヨさんはコミュしょ……えーと、恥ずかしがり屋? 慣れるまでこんな感じだとは思うけど、真面目だから」
「よろしくお願い致します……」
(決まったようで、なによりね。異世界転移って帰れた人はいいけれど、帰れない人たちは本当に大変そうだもの)




