表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
スローライフ所望のエルフ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

316/339

草原


 今日はアルシア王国の東端に来ている。

 見渡す限り平坦な草原が広がり、周囲に人里はない。


「ここなら魔馬たちも楽しめそうですね」


 乗馬服姿のミシュティが、春の風に毛を揺らしながら微笑んだ。


「ひよこ島は走るとなると、砂浜になっちゃうものね。やっぱり時々は地面を走りたいんじゃないかしら」


 ミシュティは頷き、ペルルの鼻先をそっと撫でた。

 二頭とも転移を嫌がらないので、私たちは時々こうやってあちこちに遊びに来ている。


 私はユーニウスに飛び乗り、足で横腹に合図を送り走らせた。

 ミシュティとペルルもあとに続く。


 飛ぶように景色が流れていく。

 空は澄み渡り、若草色の草原は春の息吹を感じさせる。

 芽吹き始めのまだ丈が短い草は視界の邪魔にならないし、好きに走らせるのに最適だ。

 二時間あまり魔馬たちのペースで遊ばせ、小高い丘に到着。


 春の草原は柔らかく、馬ではない私たちの足にも優しい。


「すっかり春ですね」


 ミシュティが足元を指差し、顔を綻ばせた。

 見れば小さな野花。

 あちこちに小さな花が咲いている。

 

「本当にね。まだ春の陽気で暖かいって感じじゃないけど、寒くないというのは嬉しい」


「このあたりで昼食にしますか?」


「そうね。お腹空いた」


 私は時空庫からテーブルセットを出して、平らな地面に設置した。

 ミシュティがテーブルクロスを広げて昼食の支度をしている間、私はユーニウスとペルルの汗を拭き取って果物を与えた。

 少し離れた場所にたっぷりの水を用意しておく。


「あんまり遠くに行かないようにね」


 そう言い聞かせると、二頭はのんびりと草を食べながら過ごすことにしたようだ。

 連れ立って美味しい草を探し回る様子は、長閑でとても愛らしい。


「野外ですから、簡単なものしか出せませんが」


 そう言いながら、ミシュティはテーブルの端で手早くオムレツを焼き上げた。

 あっという間にトマトソースが絡んだペンネを添えた香草オムレツが皿に乗せられた。

 ミシュティは熱いのがちょっと苦手なので、先に自分の分を作って置いてある。

 私の分は作りたてで熱々だ。


「フワァ、いい香りね」


 (自分だけだったら水とタマゴサンドだったけど。これが簡単なものとは……)


 ミシュティを雇ってから、食生活は劇的に向上している。

 美味しいものを食べ、家はいつだってチリひとつない快適さ。


「今朝、王都の市場で春恋菜が売ってたんです」


「オムレツに入れると一気に春の味よね。このちょっとほろ苦いのがまた美味しいわ」


「春恋菜は今しか出回らないですものね。確かに春だなぁって感じます」


 トマトソースのペンネは作ったものを持ってきたらしいけれど、これもとても美味しい。

 やや濃い味に仕立てたペンネはオムレツとピッタリだ。


 マグカップに注がれたコンソメには刻んだパセリ。

 デザートには小さな焼き菓子と紅茶。


「貴族のピクニックって感じね。すごく美味しかったわ」


「ありがとうございます。次回はサバイバル料理にしますか?」


「サバイバル料理」


「狩ったものを捌いて調理も可能ですから」


「……いいわねえ、幻鳥とか」


 幻鳥の肉は、狩人しか味わえないもの。

 仕留めて数分で溶けて消えてしまうので、絶対に市場には出回らない。

 溶ける前に火を入れられれば、消え去らないので食べられる。


 (調理に成功しても、一時間後には溶けてなくなっちゃうから時間勝負なのよね……)


「あれは美味しいですから、是非食べたいです」


「じゃあ今度はそうしましょう」


「はい。幻鳥って、卵はどうなってるんでしょう?」


 ミシュティが片づけの手を止めて首を傾げた。


「確か……無精卵は溶けて消えると聞いたわ。有精卵は生きているから消えないんだとか」


「卵は見たこと無いです」


「私も無いわ。でも、文献によると卵と雛は猛毒らしいわよ」


「猛毒!」


「ダメよ、探そうとしちゃ」


「何かの役に立ちませんか?」


「毒ならもういっぱい持ってるでしょう?」


「……………………」


 ポチ温泉横の魔条網で覆われたミシュティの家庭菜園は、マンドラゴラをはじめ全て毒草なのだ。

 ただ毒草と言うのは、薬の原料にもなる。

 彼女の家庭菜園はそういう植物が多い。

 食事に出てくる野菜類は、ミシュティの自宅脇の畑で作っているようだ。


 (毒も微量なら薬だったりするし、そこまで凶悪なものでもなさそうだから別にいいけど……)

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
流石悪魔猫!毒に食いつく勢いがすごい!w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ