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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
スローライフ所望のエルフ

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ホムンクルス①


「で、春休みのうち五日間、セシリアは《母親と旅行に行く》ことになったわ」


「そう。いつから?」


「四日後よ」


 アマンダの隠れ家は今日も成金趣味だ。

 表の顔であるフレッドとしての彼の趣味はすごく素敵なのだけれど。

 裏社会は金の力を見せつけてイニシアチブを取る傾向がある気がするわね。

 目の前にいるアマンダとセシリアは、お互いに全く違う世界の住人のように見える。


 (とんでもないトラブルメーカーのセシリアだけど、黙っていれば本当に可憐で頼りなさげよね)


「じゃあ、四日後にここにセシリアを迎えに来る」


「ええ、よろしく」


 短い打ち合わせを終え、私はひよこ島へ戻った。

 既に古代式のホムンクルス製作準備は整っているので、いつセシリアを引き取っても大丈夫だ。

 作業場に寝泊まりするスペースはないけれど、これも問題は無い。

 セシリアはずっと意識を落としておく予定だから。

 

 余計なことは知らない方が彼女のためでもある。

 セシリアのような性格の持ち主は、うっかり余計なことを悪意なく漏らす可能性が高い。

 知らなければ話しようもないから、絶対にその方がいい。


 数日後。

 私はアマンダの隠れ家で、セシリアと最終打ち合わせをした。

 アマンダには一切隠し事はないと本人が言うので、アマンダも一緒だ。


「サイズなんかは製作室で計測するからいいんだけれど。あなた、王太子とか貴族子息と性的な交渉はあったのかしら」


「えっ、そんなこと関係あるんですか!?」


 セシリアが嫌そうに声を上げた。


「あるでしょ。ホクロの位置とか傷があれば細かい部分をどうするか。身体を誰にも見られてないなら、そこまで再現する必要はないと思うけれど」


「…………」


 暫く押し黙っていたセシリアだったが、アマンダに促され口を開いた。


「えっと……少しだけ?」


「具体的に言って」


「あー、あの……上半身だけ……」


「そう。ならやっぱり全身完全に再現した方がリスク低下になるわね」


 アマンダは頷き、私が出した見積り書をもう一度確認した。


「そうなると、一番高い価格設定ってことよね。いいわ、正直痛い金額だけど払えないわけじゃない」


 豪華なお屋敷を先に貰っているから、その分は割引してあるのだけれど。

 それを引いても、私が作るホムンクルスの代金が高額なのは仕方ない。

 古代ホムンクルスは数千年前に失伝している。

 いわゆるロストテクノロジーなのだ。


 この世で唯一、私だけが技法を知っているのだから高額なのは当然よ。


「じゃ、これに着替えて」


 私はセシリアに簡素な白い貫頭衣を手渡した。


「え、今? ここで?」


「そう。下着はなしで」


 セシリアはやや動揺してアマンダを見たが、アマンダに頷かれ諦めたように着替え始めた。

 私は一応後ろを向いてあげた。


「……終わったわよ」


 アマンダの声で私は振り返り、不安げなセシリアをいったん椅子に座らせた。


「このままの格好で、この部屋に帰すからそのつもりで」


「わかったわ。頑張るのよ、セシリア」


「うん……」


 アマンダはセシリアを励まし、そのあと私はセシリアに闇魔法をかけて意識を刈り取った。

 ぐったりと力が抜けたセシリアを見てアマンダは物言いたげに私を見た。


「寝てるだけよ。このまま返すから安心して」


「お願いするわ。よろしくね」


「任せて」


 私はセシリアを抱え、作業場に転移した。

 台の上にセシリアを横たえ、大体の寸法で作ってあった素体を横に持ってくる。


 (まずは正確な寸法……そして身体的特徴の記録)


 今ここにある素体ホムンクルスは記録用だから、完成品とは別物だ。

 完成まで一年以上かかる古代ホムンクルス。

 その間ずっとセシリアを拘束するわけにはいかないから、完璧に外見をコピーしたワンクッションが必要になる。


「首周りは……二十八センチと四ミリ。肩幅三十二」


 全ての寸法を計測し、魔力で素体のサイズを変えながら反映させていく。

 それが完成したら特徴を書き込んでいく作業だ。


「背中のホクロ。胸の下に五ミリの薄い痣、右上腕部七ミリの傷……」


 内臓の位置も正確に再現する必要があるので、しっかり見ていかなくてはいけない。


「ふぅ」


 (助手がいればちょっと楽なんだけどなぁ)


 私は小さくため息をつきながら、作業を続けることにした。

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