宝籤
「じゃ、進捗会議始めるわね」
真っ黒いドレス姿のカルミラが優雅に手を振った。
「一番の進展は決戦地が無事確保出来たことね」
レスターが書類に目を走らせ、渋い顔で呟く。
「原状回復ってなぁ……」
「あー、そこ気になるよね」
「いかにして損壊を最小限にとどめるか」
「修復費用が一番高くつきそう」
「いやいや、派手にやらないと視聴率取れなくね?」
フレスベルグが両手を上げ、壊さないのは無理だと宣言。
それもそうだと一同は同意した。
「そこは腹を括って払うしかないよな? 土木なら俺も得意だからある程度は直せるし」
ゼグがワインを飲み干し、口を開いた。
「業者どこにする?」
「最大手はここ掘れ組だけど、犬妖精だからなぁ」
「死霊島は匂いが独特なんだよね」
「一応聞いておく? お断りされるかもだけど」
「ネモのうちは何の匂いもしないのになー」
全員の視線がネモに集中し、ネモは鎧をガシャガシャ鳴らしながら座り直し厳かに匂い問題について語り始めた。
「スケルトンは無臭である。木乃伊系も乾燥しておるゆえ、ほぼ臭気はない」
「確かに」
「が、ラウバッハ殿の城には様々な死霊がおるゆえ……瑞々しい死体も多い」
「あ、そういうことかぁ」
「まあ、最終決戦らしくていいんじゃないの」
「死霊兵は貸してくれるそうよ。五十万人くらい」
「待て待て、あの島そんなに大きくないよな?」
「霊体も多いから場所取らないんよ」
「勇者大丈夫かなぁ」
「ちょっと多すぎない?」
「あのパーティ、円環召還出来るやついたっけ? いたら不味いぞ」
「成仏させられるのは困るわね……お借りする兵隊だし」
私は手を挙げ、意見を述べてみることにした。
「召還無効のアイテムを配布したらいいんじゃない?」
「五十万人に?」
「御札なら印刷でなんとかならないかな」
「うーん、相手も魔法はなくても召還アイテム持ってくる可能性があるからな」
「御札じゃ防ぎ切れない威力だと困るな」
「数が多すぎるだろ。勇者パーティ五人だぞ」
「エルフがいるじゃん」
「エルフ」
「エルフ」
「五千人戦闘力くらい?」
「いや……」
「アラインは八百長に乗ってくれるから、いいのよ」
新しいワインがあけられ、とりあえずそれを飲んでそれぞれ好き勝手に喋り始める。
(さすがに五十万は多いと思うわ。現実的な数字となると五万人くらい?)
「五万人くらいがいいんじゃないかしら。で、アラインに広域魔法で召還する振りしてもらう」
「勇者の見せ場は?」
「じゃあさ、勇者にあげた聖剣にこっそり細工をして、パァーっとそれっぽい光出すようにしよう」
「発動の……トリガーは?」
「アラインでいいだろ、エルフだしそれくらい余裕だろ」
「どうせあの聖剣作ったの俺だし、デザイン同じで仕込み増やしたのを作ってすり替えるか」
レスターはそう言ってワインの栓を抜いた。
「じゃァさァ〜、回収した古い聖剣は賞品に出来るねェ?」
「お、いいな。勇者の使用済だし目玉になりそう」
「オッケー、宝くじ出しましょう。一口金貨一枚くらいで」
「一等の聖剣のみ?」
「他にも出す?」
「ハナちゃんの毛とかどう? それで小さいキーホルダーとか作る」
「悪くない」
「ドワーフ秘境近くの祭壇回が高視聴率だったから、ドワーフの作った指輪とか」
「それは赤字になる」
「それは二等にして一個限定なら……」
ドワーフの指輪、いいんじゃないかな。
魔界でも大人気だし。
「制作風景で視聴率取れそう」
「素材持ち込み、付与魔法こっち負担でコストカットすればいいのでは?」
「ああ、それなら技術料と先方の儲け程度で済みそう」
「で、三等は?」
「一口金貨一枚でしょ、今までの傾向からして──見込みで三百万口くらい売れそうよね」
「あー、大量に買うヤツもいるから?」
「そこから新しい聖剣の素材費を出したい」
「そりゃそうだよな」
会議は紛糾し、結局賞品は一等聖剣、二等指輪。
三等は歴代魔王+今期魔王の集合写真サイン入りを十名に。
四等はハナの毛入りお守り袋(ランダム付与魔法付き)三百名に決定した。
「三百」
「毛は一本でいいのよ」
「あ、そうなの」
「ジューンは何か提案ある?」
「ハズレくじは敗者復活戦でもう一個賞品あったらいいんじゃない?」
「…………売り上げが上がりそうね」
カルミラの瞳がキラリと光る。
黙っていたフレスベルグが口を開く。
「正規一等が聖剣だから、防具がいいんじゃね?」
「えっ、フレスベルグがまともな提案を……」
「どうした?」
「どうしたの?」
「大丈夫?」
「お前らさぁ……」
「んじゃ、そこそこ性能のいい盾を聖剣と対になりそうなデザインで俺が作るわー」
「素材と技術代金はいつものように組合に請求してちょうだい」
レスターが盾を作ることに決まり、会議はつつがなく終了した。
(決戦地の運用のための会議だったはずなんだけど……)




