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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
スローライフ所望のエルフ

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表裏


 ふうー、とアマンダの盛大な溜息が響き渡る。


「完璧なホムンクルスを準備出来るなら、それに乗ることに決めたわ。ただ……」


 何度目かの密談の場でアマンダは苦々しい顔をしつつ、降参といった様子で言葉を続けた。


「屋敷二つじゃ釣り合わないでしょう? 他に何を差し出せるか、もうお手上げ」


「そうね、釣り合わない」


 私の言葉に、アマンダは頭を抱えた。


「一応、私が危ない橋を渡ることになるけど案はあるの」


 私は黙ったまま、続きを促した。

 アマンダは煙管に火をつけ、深々と煙を吸い込み顔を横に向けて吐き出した。


「ふぅ。フレッド商会の相談役としてあなたを迎えるってのはどうかしら」


「ふぅん? 随分思い切ったわね」


 王家御用達の、表の顔まで使うとは。

 アマンダはよほどセシリアを助けたいようね。

 

 (自分の商会にエルフを噛ませるとは)


  私は正直、少し驚いた。


「相談役と言っても仕事はないんだけれど。フレッド商会の顔を使って社会的信用を得られるわ」


「悪くない提案だけど、ちょっと弱いわね」


 コン、と煙管から灰を落とす音。

 アマンダは今、裏社会の顔を捨てフレッド商会の頭として交渉の場に上がっている。

 私は黙って待つだけでいい。

 しばらくの沈黙の後に、アマンダは再び口を開いた。


「……フレッド商会が続く限り、無期限。商会のトラブルの責任は問わない、負わせない。これでどう?」


 (なにがアマンダをそこまでさせるのか、ちょっと興味が湧いてきたわね……)


 時間が果てしなくある私にとって、人間との契約は損得勘定よりも面白そうかどうかが優先される。

 もちろん損するのは大嫌いだから、全力で利になる物を取りに行くけれどね。

 他のエルフもそうなんじゃないかしらね。


 (決め手は興味があるかどうか、ね)


「それでいいわよ。詳細を詰めましょうか?」


「草案を作って、送るわ。そこから交渉させてちょうだい」


 額の汗を絹のハンカチで拭ったアマンダは、脱力したように椅子に背を預けた。


「あ、ホムンクルスは完全にセシリアを模倣するかたちになるから、セシリア自身の協力も必須になる。そこだけはわかっておいてね」


「セシリアの協力……?」


「刺されようが切り落とされようが、それはセシリアじゃなくてはいけないでしょ。血液とか、サイズもホクロも全部よ」


 完璧なホムンクルスというのは、脳以外は全てセシリアの細胞で構築される。

 もちろん、セシリアを眠らせて何をされたかわからないように事を運ぶつもりだが。

 彼らに詳しい製法を教えるつもりはない。


「なるほど……。まあ、セシリアは大丈夫だと思うけれど拘束期間はどのくらいかしら」


「トラブル無しの最短で三日」


「…………来月末、春の小休暇で学園十日ほど休みになるわ」


「どういう根回しでセシリアから王太子たちを引き剥がすかは、あなたの仕事よ」


「ええ。五日は確保出来るよう善処する」


「じゃ、次は交渉の時にね」


 私は手を振って、王都の拠点に転移した。

 今日得たものは、アマンダが事前に手続きを済ませてあったという権利証二枚。

 北部の旧都市ローランと、王都の屋敷のものだ。


 (事前に用意するほど、真剣なのってすごいわよねぇ)


 貰った王都のお屋敷は、今の家から逆の西側になる。

 繁華街に近い場所だが、貴族区に面している場所のようなので治安は悪くないそうだ。

 とりあえず、見に行ってみなくてはね。

 ミシュティを連れて行こう。

 あれこれ手配して整えるのは、ミシュティだから。


 与えてあるバングルに合図を送ると、数分後にミシュティが転移してきた。


「お待たせいたしました、ジューン様」


「お屋敷貰ったの。今から見に行くわよ」


「お供いたします!」


 チラチラと粉雪が舞う中、私とミシュティは東側から西側へ歩き始めた。


「春っぽい気温になったと思ったら、また寒くなったわね」


「まだまだ春は遠そうですね、ジューン様」


 私は足元の石畳を眺めながら、白い息で気温を確かめた。


「でも、もう積もることは無さそう」


 ミシュティは白い帽子を引っ張り、深くかぶり直しながら頷いた。


「元々アルシア王国では大雪は滅多にないそうですよ。北部は凄いらしいです」


「あー、そうなの? ローランにもお屋敷もらったんだけど」


「まあ。ではそちらも検分に行かれますよね?」


「そうね。ミシュティの暇なときでいいわよ」


「時間は作るものです。もちろん私はジューン様に合わせます」


 ミシュティは、力強くそう述べた。

 

 

 


 

 

 


 

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