龍人
今日は、龍島の視察。
というのは表向きで、ロペさんにフレスベルグの返事を伝えに来ただけだ。
既に完成している寮を兼ねた家は、頑丈で飾り気のない実用重視タイプ。
暖かいけれど、なんだか殺風景なリビングに案内され、お茶をいただくことになった。
「フレスベルグに拒否の気持ちはないみたいよ。でも事情がある子なので、慎重にいきたいみたい」
「おお、ありがたい。もちろん急かすつもりは無いんですよ。歓迎の気持ちを伝えたかっただけで」
ロペさんは笑顔で、熱々のお茶を飲み干した。
龍人のコミュニティといっても、何か強制的にやるようなことはない。
困った時に相談し合えるもの、ということらしい。
今回は──新しい子が産まれた?
みんなで見守りたい!
と、いう総意がありアマネを紹介してもらいたいだけのようだ。
「龍人は世界にちょうど三十人いるんです。新たな同胞は三十一人目……」
「少ないわねぇ」
「そうですな。ここ三千年ほどは子供も生まれてないですから」
「超長命種族はみんなそうね、女性は一万年に一人産むかどうかって統計があった気がする……」
「まあ、増えないけれど減りもしないからでしょうなぁ」
確かに。
寿命が長いことで生存本能は満たされている。
だから新しい世代が生まれないのか、否か。
このあたりは未だに、紛糾している研究題目だ。
「まずはフレスベルグと会って、相談してみて?ここに連れてくるから」
「ちなみに差し支えなければ新しい同胞はどんな子なのか、聞いておきたいですな」
「十二歳の男の子よ。名前は──仮称の可能性もあるから、フレスベルグに確認したほうがいいと思う」
「男の子──そりゃフレスベルグ様も大変だ。龍人の男の子は成人まで、本当に落ち着かないもんで」
「龍人の成人って何歳なの」
「一応、成人は五百歳となってますが、成熟個体になるのは個人差があるんで……五百は目安程度ですね」
「なるほど」
「あと龍人の子供は無限に食べます」
「あ、それはわかる。細い子なんだけど、すっごい量食べるの」
ロペさんはそうだろう、と頷いた。
「まあ食欲は二、三百歳くらいで落ち着いてくると思いますが……」
「フレスベルグに色々情報あげて。慣れない育児で四苦八苦してるから」
「ほう」
「でも、とっても大事にしてるし本人も兄のように慕ってるわ」
「我が同胞が愛されているならば、我々はフレスベルグ様も同胞の保護者として歓迎致しますよ」
(一瞬口を滑らせちゃって、焦ったわ。フレスベルグの育児が大変ならコミュニティで引き取りたいって方向に行かなくて良かった……)
私は疲れているのだろうか。
ちょっと今日はもう誰かと話すのをやめておいたほうが、良さそうだ。
「そう。じゃ、近々またフレスベルグと来るわね」
そう言って、私はひよこ島の自室に転移した。
お気に入りの硬めのソファーに座って、足台の上に靴を脱いだ足を投げ出す。
「はぁ……」
時空庫から蜂蜜たっぷりのミルクティーを取り出してゆっくり飲んでいるうちに、少し落ち着いてきた。
(最近、好きじゃない方向で頭使うこと多かったからかな……)
アマンダたちの件とか、アラインの件とか。
何かを考えるのは好きなんだけれど 。
抜け目のない者とやり合うと、気疲れするのよね。
「うーん」
私が普通のエルフだったら──
攻略対象抹殺か、面倒なことを言うアマンダとピンク髪を抹消すると方向に行くと思う。
人間社会で生活してるエルフは変人だからこそ、交渉が成立する。
私もアラインも、文句を言いながら人間社会のルールに従っている『変わりエルフ』だからね。
アマンダはそのへんを計算して、相談を持ちかけている。
(ほんっと油断ならないオネェなのよね……)
「甘い物食べたい……」
時空庫から、クッキーを出して齧っていると眠気が差してきた。
私は隣にある寝室に向かい、そのドアに紙を貼り付けた。
十日くらい寝るので起こさないで。
簡単に書いたメモは、ミシュティ宛。
しばらくベッドの住人になる、これはセルフマネジメントだ。
肌触りのいい服に着替え、ふわふわのベッドに飛び込む。
(ミシュティを雇ってなかったら、ユーニウスの世話があるから引きこもりは不可能……)
安心して任せられるメイドを雇ってて良かった!




