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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
スローライフ所望のエルフ

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焼芋


「焼けたぞ」


 灰の中から掘り出されたのは、焼き芋。

 私はレスターから芋を受け取り、齧りついた。


「甘っ、熱っ」


「美味いだろ。鬼の里の名産だからな」


 レスターは機嫌が良さそうに笑い、灰の横に半分埋めてあった徳利を引っこ抜いて豪快に飲み干した。

 今日私が呼ばれたのは、先日私が髪を提供して作った魔皇鉄のことだ。

 余ったものでレスターがペーパーナイフを二本作ったから、くれるという。

 片方はミシュティ用だそうで、柄が短くケット・シーが持ちやすいフォルムになっている。


 ミシュティはロロが硬いものを食べられないと聞いて以来、時々食べやすい菓子やお弁当を転送して交流をしているらしい。

 お返しにロロが趣味で磨いた色石や、昔持っていたという変わった植物を貰っているようだから物々交換だ。


  ロロの、外界と唯一繋がる友情。


 レスターはそのお礼を兼ねて、ペーパーナイフを作ったようだ。


「へえ、王都にゴブリンが」


「そうなの。王都の門にゲートが出来ちゃってるの。時期が時期だから、例の魔法陣に関係あるかなと」


 レスターは酒を注いだ徳利を器用に埋め立てながら、肩を震わせた。


「魔法陣からは距離があるから関係ないだろ。しかもゴブリン。無害もいいところだ」


「まあね」

 

「ああ、でもそのワフー料理を出す飲み屋には行ってみたい」 


「近いうちに誘うわ」


「おう」


 しばらく雑談を楽しみ、帰宅した私はミシュティにペーパーナイフを手渡した。


「ありがとうございます! なんて綺麗なんでしょう。銀のようにとろみのある光沢に、薄い青緑の膜がかかっているよう……」


「髪の色に準じてるのよ。赤い髪のエルフので作れば赤くなる」

 

「ジューン様の色……家宝にいたします。すぐにレスター様にお礼状とお酒を贈らなくては!」


 ミシュティはお辞儀をして、パタパタとスカートの裾をはためかせてリビングを出ていった。


 (今、スキップしてたよね……?)


 あんなに喜んでくれたら、レスターも嬉しいだろう。

 私は自分の分のペーパーナイフを取り出し、うっとりと鑑賞した。


 (品質は完璧。デザインは繊細かつ実用的)


 レスターらしい作品だ。

 なんだか楽しくなって、剣のコレクションを並べて手入れが必要そうなものをチェック。

 せっせとメモしていると、夕食が出来たとミシュティがやって来た。


「今日は何を作ったの?」


「クラムチャウダーとお魚のムニエル、ハーブを練り込んだパンに蒸し野菜のサラダです。デザートはブルグ乳のムース、ベリーソース和えです」


「全部大好きなものだわ、ありがとう」


「そういえば──バルフィが金髪のジューン様を見たかったと泣いてましたわ」


 グラスに水を注いでいたミシュティが、いたずらそうに瞳をキラリとさせた。

 ドライアイが治って、しっかり潤んでいる瞳は順調なようだ。


「ああ、変化の……」


「暴虐の女王最終決戦、第二形態のあの姿はレア中のレアですから」


「え、そうなの?」


 ミシュティはにっこりと微笑んだ。


「はい。暴虐の女王の姿絵は、ほとんどが緑の髪に葡萄色の瞳ですから」


「ああ、アレね。二回目のレスターが最終決戦で、第三形態までサービスしたもので、私もやらざるを得なくて──」


「レスター様の決戦は異質過ぎて、男性ファンが多いんですよね」


「ああ、レスターのは今までで一番お金がかかっているのよ、派手好きだから」


 レスターが魔王をやった時、決戦地に集結したのは勇者パーティーだけではなかった。

 世界各国から冒険者たちが集まり、まさかのレイド戦になったのだ。


「調整が大変だったのよ……」


「死者を出すのがいけないとなると、裏方は本当に大変だったと思います……」


「きっと今回も大変よ」


「最終決戦、私はアマネさんの付き添いになりそうです」


 確かに。

 うっかり乱入しちゃったら大事件だものね。

 幼児じゃないから、無いと思うけれど。


 (でも、皆まだあの子のことよく知らないから、慎重に扱うのはいい傾向だと思うわ)


「そうなの? その方が間違いが起こらなくてフレスベルグも安心かもね」


 ミシュティはお茶を淹れる手を止め、頷いた。


「はい。とても大事にされてますから。……フレスベルグ様なりに」


 (早く勇者イベント終わってほしい……)


 夕食はとても美味しかった。


 

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― 新着の感想 ―
子猫なんかは楽しすぎてもやんのかステップしてしまったりするので、ミシュティのスキップがやんのかステップっぽくなってしまったりするのだろうか?という薄っすらの
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