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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
スローライフ所望のエルフ

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副業


「ちょっと、アマネの預け先を探していて……」


「預け先?」


 うん、とフレスベルグは頷いた。


「魔王の仕事の時さぁ、なるべく日帰りになるように調整はしてるけど、無理な日もあるんだよ」


「そうね」


「ネコ美は有能だけど、ホムンクルスには限界があるじゃん。イレギュラーに弱いからさ」


「ああ……想定外のことが多すぎる、と?」


「だからさ、日帰り出来ない日に預かって欲しいんだよね。カルミラには頼みたくないんだよー」


「甘やかすから?」


「そう! 優しいけど心配性だからなー、オレに対してもまだ過保護だし」


「確かに過保護よねぇ、愛されてるわね」


「ネモに預けたら、絶対カルミラ怒るだろ? なんで私に言わないのって」


 私は吹き出し、慌てて座り直した。

 うん、カルミラならそう言うだろう。

 吸血鬼は総じて愛情深いのだ。

 

「そうなると、信用して預けられるのはジューンとミシュティしか思いつかなくてさ」


「え、ここに?」


「滅多にないとは思うけど、お願いしたいなーって」


 そう言ってフレスベルグは頭を下げた。


 もし預かるならば、必然的にお世話をするのはミシュティになる。

 

  ──ミシュティは大喜びで引き受けそうだけれどね。


「そうねえ……ミシュティには副業を認めているから、私じゃなくてミシュティに『お仕事』として打診したほうが確実だと思うわ」


「え、いいの? ジューンがそれでいいなら、ミシュティに交渉するわ」


「ええ、そうしてちょうだい」


 (メイドとしてすべきことは完璧だし、ミシュティが余暇に何をしたって構わないもの)


 私とフレスベルグは揃ってダイニングを覗いたが、そこには誰も居なかった。

 すっかりきれいになった室内にはアップルパイの香りだけが残っている。


「二人は子供部屋に行ったようね。そっちいきましょう」


 部屋からは歓声と笑い声が聞こえている。

 どうやら、壁紙で遊んでいる様子。


「とても上手です。そう、もうちょっと魔力を当てて──あ、ほら踊り始めましたよ」


 ミシュティの優しい声が耳に心地よい。

 フレスベルグは部屋に入ると、壁紙を見て口角を上げた。


「懐かしいな。動く壁紙かー」


 壁紙に無数に散らばる金色のドラゴンは、注ぐ魔力によって様々なアクションを見せてくれる。

 子供の魔力操作に最適の教材でもある。

 アマネは壁紙に夢中だったので、ミシュティとフレスベルグは小声で話し合いを始めた。

 私は時折頷くミシュティの後頭部と、アマネの様子を交互に眺めるだけだ。


 (魔力の練り方、出し方……とてもスムーズに出来ている。この子は器用なのね)


 この繊細な魔力操作能力は、ものづくりと相性がいい。

 ホムンクルス作りにも向いている。

 フレスベルグは一切合切雑だけれど、ホムンクルス製作だけは丁寧にやっているから教えるのも上手なんじゃないかしら。

 最初は小さな動物を模したものから作り始めるのがセオリーだけれど。

 自衛機構が組み込まれた複雑な構造のネコ美ちゃんを解体しそうになるとは──構造を理解したいという学術的探究心よね。

 相手に悪意があれば、ネコ美ちゃんは逃げるはずだし。


 (フレスベルグは好きこそものの上手なれ、だけどこの子はどうなるのかしらねぇ)


 しばらくしてミシュティとフレスベルグの間に魔法契約用紙が浮かびあがった。

 無事に交渉が成立したようで良かったわ。


 (私の使用人だからといって、何でもかんでも投げるのはフェアじゃないものね)


 アップルパイをお土産に包んで貰ったアマネは、ご機嫌でフレスベルグと帰って行った。


「アマネさんは甘党のようでしたわ」


「アップルパイいっぱい食べてた?」


「ワンホール、ペロリでした」


 ミシュティは壁紙に破損がないかチェックし、頷いた。


「お預かりの件ですが。前もって連絡いただいて、受けられそうな時だけお受けすることになりました」


「そう。屋敷や島内は自由にさせて構わないわ。とりあえず、破損や紛失したら困るものは時空庫へしまっておきましょうか」


「そうします」


「今後、私の自室は魔法で閉鎖しておくわね」


「はい。ジューン様」


「ああ、ミシュティは許可しておくわ。お掃除はしてもらいたいから」


 自分で雑菌や埃を除去することは出来るけれど、ミシュティのお掃除には敵わない。

 きっちり水拭きするのと、魔法で済ませるのはスッキリ感が段違いなのだ。


 最近また影から出入りするようになったソフィーが足元から現れた。


「あらソフィーちゃん。お客様から隠れていたの?」


 もちろん返事などはないが、ソフィーは差し伸べた手をスルスルと這ってきた。


 (人見知りなのかしら?)


 相変わらずふわふわの毛を纏った小さなヘビは、私の肩に落ち着いた。


「ジューン様もアップルパイを召し上がりますか?」


「そうするわ」


 (アップルパイ……この世界ではアップルじゃなくてプルナなのに、なんでアップルパイと呼ばれているのか)


 ──そもそも、元々の名前は紅香樹の実。

 地球ではないどこかの異世界で、プルナと呼ばれていたのが定着しているだけだ。

 なので、アップルパイは料理名として定着したってことね。


 

 

 

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