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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

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休日明け、五日目



 休み明けは、朝礼後に読む書類が多い。

 これはどの世界も同じって感じねぇ……?


「あら、ユウコさん帰還したのか」


 帰りたくないと言っていたユウコさんは、昨日の午後に帰還したとのこと。

 帰りたくないという理由はわからないけれど、悩みが解決するよう祈るくらいしかできないかな。

 仕事中の人間関係の距離感は、本当に難しい。

 規則通りに対応すれば冷たいと思われ、臨機応変に親切に対応すれば……要求は小さくとも、際限なくなってしまう。


 結局は職員を守るためにはマニュアル遵守が一番なのだ。

 どこの世界も。


「──じゃあ、今日の午前中は子供たちを転移させて、彼らの今後の王都の生活のために聞き取った情報などの報告書を仕上げます」


「助かるわ、午後はゆっくりでいいから新規のキャンプの聞き取りお願いね」


 リリナさんがすごい勢いで書類を綴じながら、あちこちに指示を飛ばしている。

 今のは私『エイプリル』に対しての指示だろう。

 まずは子供たちをきっちり王都の職員に引き渡して、報告書作成だ。


 魔法酔いを見せた二名以外は転移なので、簡単なものだ。

 私は借り上げ屋敷の侍女長に、口頭で人員についての申し送りをした。


「男子二名は冒険者が馬車で──ええ、転移酔いで。おそらく三十分以内に到着。個々の報告書は書き上げたらこちらに提出しますね」


 こちらの屋敷の職員に報告するのは『名・アレルギーの有無・持病』のような物理的事情だ。

 心理的なものは、これからカウンセリングで対応していくとのこと。


 対策本部に上げる報告書はもっと詳細に記載してあるけれど──その情報を誰に、いつ、どのように伝えるか、は責任者であるリリナさんの仕事だ。


 『エイプリル』の契約は通訳及び翻訳だし、『ジューン』の目的はギルドの動向と異世人の情報収集だかた、余計なことはしないのが一番。

 午前中に所定の書式できっちり報告書を書き上げ、のんびり昼食をとってからユウコさんのあとから来た男性のキャンプに向かう。


 一名ずつ、二つのキャンプだ。


「ソウさんね。ああ、苗字は言わなくて大丈夫。──真名?いえ、そういうわけでは……こっちでは貴族以外の人には苗字が無いだけです」


 真名って!


 (確かに真名システムはあるけど、それって鑑定で出てくるような通称じゃないし……)


「はい、そうです……ではここに説明を受けたというサインを。えっ?ケモ耳……ああ、残念ですが生物学的に、そういうキメラは自然界には存在してなくて」


 ソウさんは、ケモ耳が存在しないことがとてもショックだった様子。

 仕方ないわね、似たような情報をおしえてあげようかな。


 「……そういう格好をした女性がいる娼館は、あったと思いますよ?」


 お金は当然取られますけどね。

 ソウさんの瞳が輝いたけれど、嘘は伝えてはいけないのできちんと説明しておく。


「──娼館にいる半獣っぽい女の子は、人間です。耳と尻尾を飾りとして付けてるだけですから……期待外れの可能性があります」


 異世界への期待が大きかったとはいえ、ソウさんは穏やかで理知的な人だった。

 ただ、ケモ耳が好きなだけの良い人だ。

 帰還調整期間の存在も納得してくれた。


 (全員ソウさんみたいだったら、現場としてはありがたいのかもね)


 ワケアリや子供というのは、配慮が必要な分人件費も跳ね上がるものね。

 まあ、来たくて来た人ばかりじゃないから……苦情が出るのが当たり前なんだけどね。


 (だけど、ギルドの人やこっちの世界の人が意図的に異世人を呼ぶ事は出来ない。必ず精密な魔法陣と対価が必要だから)


 なので、呼ばれたくなかった異世人、呼んでないこちらの世界の人で揉めることがないように──何度もトライアンドエラーを繰り返し、長い期間を経てルールが定められたのだ。


「ふむふむ、システムエンジニアね……」


 ソウさんのある程度の情報を聞いたあと、私は一旦対策本部に戻り簡易報告を書いて、リリナさんのデスクに置いた。

 時間に余裕があったので一旦家に帰ってハーブティーを飲むことにした。


 もう一件の新規さんは、なかなかの強敵そうだったから。

 英気を養うためにタマゴサンドを食べて、休憩してから行こうと思うの。

 

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>「ソウさんね。ああ、苗字は言わなくて大丈夫。 >「──娼館にいる半獣っぽい女の子は、人間です。耳と尻尾を飾りとして付けてるだけですから……期待外れの可能性があります」  コレの返事で、ソウさんが「…
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