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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

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異世人対策始動



 冒険者ギルドと『エイプリル』の契約はサクサク進んだ。

 私の方に異論がなかったから、だけどね。


 (──明日八時に冒険者ギルド出勤、馬車で八箇所のキャンプを回って車内で現状報告を受ける、と)


 一回行かないと正確な転移は出来ないから、初日は物理的移動しかない。

 魔法のある世界だけど、万能ではないのだ。


 明日から忙しくなる……今夜ミシュティとしっかり打ち合わせをしなくてはいけない。

 『エイプリル』の住居ももうちょっとまともな物件にしなければいけないし、やることは山積みだ。

 

 私は溜め息をついて、ひよこ島に転移した。


 ひよこ島ではニーヴとマカロンちゃんとソフィーが、バルフィとボール遊びに興じていた。

 ソフィーは投げられるボールにくっついている。

 ニーヴはボールを取りには行くけれど、返さないのでバルフィが回収してマカロンちゃんに渡しているようだ。


 (マカロンちゃん、投球飛距離が伸びてる……ボール投げが得意なのね)


──どの子も楽しそうでいい風景だったが、ニーヴが特に素晴らしい。

 来た頃のプニプニ感は消え失せ、躍動感がある。

 毛が多いから、ぱっと見は変わりなく思えるが触れれば脂肪の層は薄くなり、指先に肋骨の存在を感じられるようになった。

 いつの間にか近くに来ていたバルフィが言った。


「数日後には引き渡せます……一昨日850kgになっているので、ほぼ仕上がってます」


「思ってたよりハイペースだったわね」


「ええ。マカロンとボール遊びにハマってからは暇さえあれば遊んでますから」


 走ったり跳んだりと楽しそうだものね。

 食事も上質だし。


「殿下に引き渡し日を打診してみるわ。食事のアドバイスも」


「先方が用意できそうなのは蛇か脂肪分の少ない鳥ですかね」


 私は頷いた。


「こっちが食事まで供給する義務はないわ。ニーヴのことは……殿下の責任だから」


 王族だし、用意は難しくないだろう。

 ミシュティが魔界のペットショップ買って来た魔道具で間食禁止にすれば、殿下のところでもコントロールは可能だ。

 私が出した首輪につけるチャーム型魔道具を見て、バルフィは面白そうに笑い声を上げた。


「人間界──いえ、他大陸ではこういうのは出回ってないとか」


「ええ。便利なのにね。ちょっと高額ではあるけれど」


 このチャームをつけていると、水分以外の嚥下運動が出来なくなる。

 ただし、つけられた動物が飢餓状態になれば、壊れて砕ける。

 完全なるダイエットアイテムだ。

 食事はチャームを外して行う。

 これは餓死や事故を防ぐため、誰でも外せるようにはなっているが……巨大なフェンリルの首から何か取ろうと考える人間は、そうそういないだろう。


「ミシュティは?」


「姉は夜までに戻るそうです。魔馬関係の友人に会うそうで」


 ああ、愛♡魔馬倶楽部ね。

 側妃から王子に王女、公爵やその令嬢──平民までと幅広い構成の魔馬マニアたちの集団だ。

 結構頻繁に会合があるとか……。

 ミシュティは多芸多才だから、リア充ってやつね。


 私はミシュティが戻るまで、エイプリルの衣装や小物を別のアイテムバッグ移しておこう。

 メモを見返し、しっかり確認。


 ──エイプリルは付与が得意な魔術師。

 転移は出来るが中距離(五十km程度)まで。

 時空庫と転移はセットみたいな時空魔法だけど、エイプリルは時空庫の容量は無し。

 ……という設定である。


 なので、『アイテムバッグ』に荷物を入れておく必要がある。

 こういう設定は守っておかないとね。


 しばらくして、いい香りが漂ってきた。

 ミシュティが帰宅して夕食の支度を始めたのだろう。

 階下に降りると、ミシュティがテーブルセッティング中だった。


 黄金色のコンソメスープ、サラダと続いて今日のメインはムウル(羊)の香草焼きだった。

 香りよく柔らかく仕上がっている。

 添えられているミントソースも絶品。


「……美味しいわ」


 最近は美味しいしか言ってない気がする。

 料理上手が家にいると、本当に幸せね。


 その後──食後にミシュティと情報共有を行なった。

 ミシュティ側の情報は王族は勇者に注力しており、貴族は異世人対策に協力している家もあるといった感じ。

 平民は特に生活に変化はなさそう。

 以前王城に保護されてた異世人五名は、今回の通訳として借り上げた屋敷の方で働いている模様。


 (幼児二人抱えた夫婦の四人家族と、単身男性一人だったわね)


 男性の方の春男とは多少やり取りはあって知っているけれど、夫婦の方のその後は知らなかったな。

 馴染めているようで、なによりね。

 異世界で仕事に就くというのは生きるために絶対必要だもの。

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