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前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

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情報収集



「……さて」


 まずは『エイプリル』で魔術ギルドをチェックしたが、異世人関係の依頼は無し。

 やはり冒険者ギルドの方が適切ということか。


 王都の冒険者ギルドの機器は旧式だったから、エイプリルとしての二重登録は誤魔化せそうだけれど──

 『ジューン』は故意にトラブルを起こさないという制約がある。

 ここは素直にそのまま行ったほうが良さそうね。


 チェシャの紹介状を携え、私は紺色のワンピースの上に黒いふわふわのコートを羽織って冒険者ギルドへ向かった。


 受付で身分証明を済ませ、紹介状を提出すると個室に通された。

 やってきたのは小柄な人間の女性。

 四十歳くらいだろうか。

 濃い栗色の髪をひとまとめにして、青い瞳を細めてニコニコとしている可愛らしい人。


「お待たせしました。アルシア王都支部で事務長をやっておりますリリナと申します。チェシャとは実の姉妹です」


 ……ご両親が人間と山猫獣人なのね。

 両親がそうだと、種族の違う兄弟姉妹になるのは珍しいことではない。


 さて、どういう名目で首を突っ込むか──

 私は深呼吸をして、話し始めた。


「実は異世人について情報を収集してまして。友人が異世界転移の研究をしていて、ニホン語にも長けてるんですけど……」


「まあっ!ニホン語を?」


「そうなんです。友人であれば通訳などにもお役に立てると思うのですが、既に魔術ギルドに所属していて。冒険者ギルドにまで登録するのは性格的にしたくないみたいで……」


「なるほど。通訳ならば喉から手が出るほど欲しいのが実情です。魔術ギルドに指名依頼として、当ギルドから依頼という形ならどうでしょうか」


 リリナさんは嬉しそうに身を乗り出してきた。


 (思った通り、通訳は足りてないみたいね。この方向でエイプリルを噛ませれば、制約違反にもならないし)


「なら、エイプリルと言う付与術師に依頼を。本人には話しておきます」


 リリナさんは喜び、現在の状況を教えてくれた。

 異世人の数はこの二ヶ月で百人以上。


 (思ったより多い……)


 その場に留まり、元の世界に帰れたのは八割。

 専門で研究している人はいるけれど──帰れる人と、そうじゃない人の条件はわかっていない。

 今日の時点で冒険者ギルドが、抱えている異世人は三十四人。


 (内、学生と思われる未成年が十一名か……)


 八割が帰れるというのも、通常とはちょっと違うようだ。

 通常なら半々というところ。


 (勇者がいた時間軸と、繋がりっぱなしの可能性が高い)


 ただ意図的に帰してあげることは不可能。

 繋がっているであろう時間軸の確認が出来ないから。

 一秒でも間違えば、そこは元居た世界にはならない。

 理論的には、同じ世界に見えていても同じ人物が二人存在してる事になってしまう。

 そしてそれを確認する術もない。

 全て机上の空論だ。


 (帰れなかった人々は、こっちで生きていくしかない……)


 転移場所から遠く離れていても、数十年経ってても帰れている(と、思われる)人はいる。

 稀有な例ではあるけども。


 午前中に指名依頼を出すと言うことで、夕方前に受注できると思うと答えてギルドを辞した後……私は一旦王都の家に舞い戻った。

 庭木に巣作りをしたカラス──チュン太夫妻に餌をやり、暫く眺めて気分転換。


小さな応接セットソファーに腰掛けて、時空庫から昼食を出す。

 今日はミシュティのではなく、コケット村のタマゴサンド。

 マスタードが入ってるのか、ちょっと酸味とピリッとした刺激があって美味しい。

 そもそも美味しくないタマゴサンドなど無いよね。


 五つ目に手を出しかけて思いとどまり、ハーブティーを飲んで食事を終えた。

 エイプリルの拠点に転移し、ジューンとは別人として家を出た。

 一応面談になる可能性もあるので、派手なものは避けて──濃いグレーのワンピースとコートで。


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