班分け
「 ──では、緊急会議を始めるとする」
ネモが低い声で開会を告げた。
カルミラは月イチの輸血(厳密には造血細胞っぽいなにか)で点滴スタンド横に置いたソファーに横たわっての参加だ。
「大変ねぇ、月イチだと」
セレナの言葉に、カルミラが少し怠そうに答える
「正確には五十日周期くらいなの。若い吸血鬼は月イチになるけど」
「そうなんだー、大人だと回数減るのね」
セレナが感心したような声を上げた。
今は冬なので、セレナのプールは少し温められていて快適そうだ。
そういうわけで、今日の進行役はネモが務めるようだ。
「諸君の想像通り、今回は分散して対応にあたるものとする」
そうなるでしょうね。
マルチタスクは事故も起きやすいし。
「──まず歪んだ空間の修正はレスター。処置時のみ吾輩とジューンが同席」
「そうなるわね」
・魔王イベントはフレスベルグ、ティティ、カルミラ、セレナ、ゼグ。
・異世人対策は、レスターを含め私、ミシュティ、ベイリウス、ネモ。
「……魔王組合って十人だったのね」
(なんだか八人のイメージだった……)
「もっといてもいいくらいよねぇ、いい人いたら紹介して」
カルミラが要望を出した。
(増やしすぎるのもどうかと思うけれど。もし増やすなら若手じゃなくてベテランがいいなぁ)
……まあ、勇者が帰ってしまえば千年はイベント無いから、安泰だわ。
今だけ頑張ればいい。
「とりあえず班ごとに会議しましょう。異世組は隣室使ってちょうだい」
カルミラがそう言うので、私たちは別室に移動した。
石造りの白はひんやりしていて、冬だとコートが手放せない。
この城は、冷気を好む種族が多いからね。
ケルベロスは自前の毛皮でホカホカだし。
ヒトに近い種族の使用人は厚着している。
隣室も綺麗に整ったサロンで、上品なクリーム色を基調にしていていい雰囲気だ。
「──で、どうする?俺は魔道具の製作と調整だな」
「それはレスターにしかできないから、お願い」
ふむ、とネモが頷き周囲を見渡した。
「ケット・シーは……ネイシス大陸にもそれなりの数がいるから、そのままの姿で問題ないだろう」
「そうね。私も人間として活動する予定」
「吾輩も魔道具利用で人間に扮する事は出来る故、問題はない。ベイリウスはどうか」
静かに佇んでいたベイリウスが、ソファーに腰掛けながら答えた。
「私は幻魔ですから、擬態は得意です。問題ありません」
ネモは満足そうに鎧を鳴らし、当面の方針を決めた。
「我々はミシュティ以外、『人間』として異世人に対応するものとするが──『ニホン』の言葉がわかるのはジューンだけ故、そこはジューンに負荷がかかるが」
「いいわよ、仕方ないもの」
「うむ、そこ以外は我々でフォローや手配を行うと」
まずは情報収集からね。
個々で持ち寄った情報で色々決めていくのが最適解かしらね。
「じゃ、まず情報収集。三日後にまた会合でいい?辺境の家を対策本部として開放するわ」
全員の合意があったので、それで決定。
私はミシュティと一旦ひよこ島に戻った。
歓喜するニーヴにぶつかられ、よろめいたミシュティに私は尋ねた。
「ミシュティはどうする?私はエイプリルとしてギルド関係で動くけれど」
ニーヴを引き離したミシュティは、エプロンはたきながら答えた。
「私は愛♡魔馬倶楽部から情報収集しようかと。貴族側の事情も必要かと思いますし」
いい感じで分業になりそうね。
ニーヴはバルフィにお願いして、さっさと情報収集を終わらせなくっちゃね。




