アフタヌーンティー
「すまんかった」
「ごめんなさい」
フレスベルグとティティが一緒に頭を下げた。
優しい小雨の降る午後、二人の心中も雨模様のようだ。
そう──フレスベルグの『やらかし』はほとんどティティと一緒にやったことなのだ。
ひよこ島は本当にプライベートスペースなので、謝罪をしたいという二人は辺境の自宅に招いた。
ミシュティはメイドとしていっしょに来てはいるが、会話には参加しない。
スコーンやパイを焼いてくれたようで、意図せずアフタヌーンティーのような雰囲気になった。
「ティティと一緒にベイリウスの授業を受けてるんだ」
フレスベルグが呟いた。
「そう。学ぶ気があるなら、責めたりしないわ。次に何かするときに考えればいいだけだしね」
私はそう答えた。
(無知が原因で起こったことを責めても、仕方ないもの。これから、どうするかよ)
お茶の後、フレスベルグたちは他のメンバーのところに行くらしく帰っていった。
私はミシュティを席に誘い、久しぶりに一緒にアフタヌーンティーの続きを楽しんだ。
──ミシュティは立場をわきまえたメイドだけれど、こうした主人の気まぐれにも付き合ってくれるのだ。
「スコーンはこういうザクザクしたのが好きだわ」
「私はしっとり派ですけれど、両方作ったのでちょうど良いですね」
ミシュティは微笑んだ。
「後でバルフィにも包んで持っていって」
「はい。あの子甘い物大好きだから、喜びますわ。もう一人の弟も甘党で」
……ああ、バルフィは双子だものね。
「竜騎士の」
「はい、国ではなくて、世界境界関係の隊に所属してますの」
魔界は国家という形態を取っていないけれど、軍隊はある。
他大陸や他国相手のものではなくて、妖精界や冥府などのちょっとズレた境界をパトロールするのが主な目的だ。
魔界はそういう世界と接触しやすいので、必須とも言える仕事だ。
「ジャレビは冥府境界の方に所属してまして、結構大変みたいですよ」
「そうねえ、そもそも境界に接触したり入れるのって精霊や妖精だけだものね、通常は」
ミシュティが興味深そうに相槌を打った。
「どの種族も──入ってしまえばどちらの世界にも存在出来るのに、境界には入れない。だからこそ秩序が保たれてるんだろうけど……」
「不思議ですよね」
「知りたいことはいっぱいあるけど、当面は緊急会議がどうなるかよね」
「はい。おそらくイベント班と処理班に分かれて対応になりそうですけれど」
……まあ、そうするしかないよね。
放置は出来ないのだから。
「私は多分処理班になると思うわ」
「でしたら、私もサポートとして処理班になると思います」
「多分そうなるでしょうねぇ」
私はミシュティと、ハーブティーのカップの中で泳ぐソフィーを眺めながら、対応策について話し合った。
「物理的な解決はレスターの魔道具の仕上がり待ちだけれど、私は『帰れなかった』異世人の対応かな」




