表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

173/213

王都の様子


 ニーヴが来て十日余り。

 950kgまで絞ったとのこと。

 バルフィが言うにはここからが大変らしい。

 ボーッと砂浜を眺めていると、バルフィを乗せたニーヴが疾走している…………いや、よく見たら乗ってるのはミシュティだ。


 なんだか毎日楽しそうな姉弟ね。


 ──と、思っていたら遊んでるわけではなくて。

 ニーヴの姿勢を見るためだったらしい。


「フォームは一番大事ですから」


 バルフィは少し離れた場所から、真剣に観察している。


「なるほどねぇ、ダイエットなら私でもいいけれど、本格的な騎乗訓練は無理だわ」


「龍騎手の学校では、獣、馬、鳥の騎乗訓練も必須科目なんですよ。違いを理解させるために。学校の練習ではオルトロス使ってて──」


「オルトロス?珍しい」


 オルトロスは二つ頭の魔獣。

 あんまり魔界じゃ見掛けない。


「ええ。ですがケルベロスは背中に子犬がいるから、騎乗には向かないんです」


「あ、そういう……」


「そうだ、あの蛇肉──700kgの肉が取れました。ただ、ポチが欲しがって蛇肉が足りないです」


 ポチめ。

 龍は魔法生命体に近いから、食料は要らないはずなのに。

 全く食いしん坊な古龍だわ。


 「それでですね、姉が魔界の西に出た暴れヒドラの肉を取りに行くって言ってて……」


「えっ、ミシュティだけで?」

「いえ、私も行きます。問題ないです」


 ああ、そう……。

 ケット・シーが二人でヒドラ討伐ね。


「多分、姉一人でも大丈夫と思いますが、一応心配なので着いていきます」

「ああ、そう……」


 ケット・シーは家政妖精だ。

 戦闘向きの種族ではない。

 龍騎手向きでもない。


 (おかしい、この姉弟!)


 とりあえず私は王都に鳥の餌でも補充に行こうかな。

 チュンチュンと鳴くカラス──チュン太が最近お嫁さんと庭のプルナの木に巣を作っているのだ。

 時々餌を補充する必要がある。

 飼った覚えは無いのだけれど、居着いた以上は餌をやらねば。


 転移して、庭の餌台にパン屑や木の実を置いてしばらく見てたけれど、チュン太は出掛けているようだ。

 代わりにチュン子(嫁)が珍しく、啄みに舞い降りてきた。

 このチュン子は用心深くて滅多に姿を現さないカラスで…………


「んん?カラス……じゃない……?」


 チュン太は鑑定もしてて、間違いなくただのカラスである。

 チュン子、カラスっぽいけど足が。


「足が三本……うそぉ、八咫烏?」


 鑑定してみたら『ヤタガラス』という名称ではないけれど『宵神鳥』と表記されている。


 八咫烏は日本名だから名前が違うのはわかるけども。

 カラスと神鳥?

 チュン太、逆玉の輿?


 (チュン子って名前、不敬だったかしら?)


 確か八咫烏は馬酔木の実が好きだと、日本の本で読んだような?

 私は時空庫からアセビに構成が近い『竜殺しの実』を取り出した。

 毒物っちゃ毒、毒の実である。

 これは美味しいらしいんだけど、食べた竜がまっすぐ飛べなくなるから竜殺しと呼ばれてる。

 死ぬほどでは、ない。


「…………チュン子様、食べる?」


 竜殺しの実を餌台に置くと、チュン子様は大喜びでつつき始めた。

 しばらく見ていると酔っぱらいのようにフラフラと巣に帰っていった。


「ご、ご利益あるかしら」 


 無くてもいいけども。


 (と言うことは。卵はカラスと八咫烏のが産まれるわけね)


 必ず、どちらかの種族になるからね。


 (竜殺しの実いっぱい持ってて良かった!)


 でもチュン太が食べたら死ぬだろうな。

 私はそっと食べ残しの竜殺しの実を回収した。


 代わりに巣の補強に良さそうな、木のような強度の香草とガラス玉を上納しておこう。

 良いことあるかもしれないし。


 久しぶりにエルフ姿で王都をうろうろすると、しばらく見ないうちにちょっと雰囲気が変わっていた。

 王都では嗅ぎなれない香辛料、異国料理……噴水広場の周囲の屋台が増えてる。


 (勇者特需なのかしらねぇ、ちょっと情報収集に冒険者ギルドにでも行こうかな)


 王都の冒険者ギルドにはまだ行ったことがないから、ちょうどいいかも。


 屋台の激辛ソーセージに心惹かれたので、銅貨を使ってお買い物。

 使わないと、中々減らないものね。


 ソーセージにかぶりつくと、ぷちん!といい歯触り。

 スパイシーでジューシー、辛いけどとても美味しい。

 ものすごく好みの味だが……汁が飛び散って服が汚れた。

 ──何故私は白っぽい服を着ているときに限って、トマトソースのパスタとかソーセージを食べてしまうのか。

 ソフィーより謎すぎる。

 わかっているのに、なんで。


 私は腑に落ちぬまま家に戻って出直し、ギルドに向かった。


 髪をギュッと編み込んで帽子に収納してあるのでエルフ騒ぎは起きないはず。

 軽い気配消しをしてから、辺境の冒険者ギルドより遥かに大きい建物の扉をくぐる。

 中はとても賑やかで、いかにもって感じ。


 (魔術ギルドには併設でカフェがあるけど、お酒は出してない……けれど冒険者ギルドには酒場が併設ってのが興味深いわね)


 酔ったら魔法精度が狂うから、控えてる人が多いからなのか。

 私はお酒大好きだけどね。


 辺境の冒険者ギルドは端末から依頼票を見るシステムだったけれど、王都はまさかのアナログ。

 魔術ギルドと同じように、紙の依頼票が壁一面に貼り出されている。


 (利用人数が多いから?何故時代に逆行してるんだろうか)


 昔ながらのやり方じゃないと嫌って層もいるから、そういうものなのかもしれないけど。

 田舎の方が最新技術使ってるなんて面白いわ。


 (辺境の方が儲かってるから?)


 そんなことを考えつつ、依頼票を眺める。


 ・東の森で発生した転移(異世人)キャンプの護衛

 ・地方から来る異世人の護送


 異世人関係の依頼が多い……。

 彼らは異世界転移した直後に、動かさない方がいい。

 転移場所にしばらく留まっていれば、そのまま元の世界に戻れる人も多いからだ。

 なのでキャンプを張って保護するのがセオリー。


(勇者召喚の影響?まさかねぇ……)


 もしその可能性があるなら──いや、召喚魔方陣を改編して使ったのフレスベルグだし……

 うわぁ、あり得る……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ