表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/171

まずは採集


元エルフのリッチキング氏には丁寧に、訪問のお知らせを書いた。


『死霊満つる円環の森』に数時間入るけど、よろしく的な。

好きそうなお酒を添付して発送。


返事を待つ間は勿体ないので、採取魔法をちょっと改編することにする。


基本、魔法の限定は魔方陣(設計図)だけど。

慣れて暗記してしまえば、いちいち魔方陣は描かなくても大丈夫。

もちろん一回一回描く派もいるから、得意不得意か……好みの問題かな。


新しい魔法を創造する場合は魔方陣が必要。

無くても成功する場合もあるけれど、時間があるならきっちり作っておく方がいい。


作業机に広げた魔法紙の上に、既存の採取魔法の魔方陣を展開する。


「ここが面倒なのよね……範囲指定が毎回円形固定なんて、融通が利かない」


私は魔法陣ペンを取り、外周のルーンを少しずつ書き換えていく。


魔方陣は、魔力の流れを制御する設計図のようなもの。

範囲を動的に変えたいなら、拘束条件を緩める必要がある。

ただ緩めすぎると暴走して、世界中のどんぐりが一気に吸い寄せられかねない。


(それはそれで壮観だろうけど、さすがに怒られるわね)


私は指先で光の線を描き、試作陣を半透明の空中に再構築した。


「収集対象はどんぐり、殻付き限定、虫食いは除外……っと」


あ、でもどんぐりとそのどんぐりの殻、で追加した方が効率がいいのかな?

殻付きだけだと少ないかもだし。

ついでに重量別に自動仕分けするルーンも追加。


(あとで選別する手間が半分になるはず)


最後に、魔力の流れが偏らないよう、補強用の三角陣を追加して完成。


「よし、これでテストしてみよう」


机の上の小瓶に入ったどんぐりをターゲットに、魔力を流し込むと──

どんぐりだけでなく机まで浮かびかけ、慌てて解除。


「あっぶな……これで本番やったら森の虫まで根こそぎ吸いそうね」


補強陣をもう一度見直し、ルーンを一画追加してから再テスト。


「うーん、重量は採取後の選別魔法に回すか」


二時間ほどで魔法陣は完成した。

根こそぎはダメ、動物の餌がなくなっちゃう。

なので条件をつけて採取量をコントロール。


リッチキングからの返事はまだ無い。

返事が来る前に行くのは危険なので、先に違う森にしようかな。


──デジュカ大陸は転移で侵入不可だから、最寄り竜駅から数時間かけて行く必要がある。

今ならイヴォーク大陸の上にいるから、三時間で行けそう。

帰りは転移で出てもいいから、竜駅の時刻表次第でどうするか決めようかな。


私はイヴォークの竜駅の一番大きいところに行って、今現在の最寄り駅と発竜時刻を聞いた。


ラッキーなことに行ったことがある駅で、発竜は二十二分後だった。

さっさと転移して、乗竜手続きを取る。


ちなみにデジュカ行きに限り、デジュカ出身エルフは無料である。

世界で唯一、エルフが集落を作って生活している大陸なのだ。

まあ、集落は一部だけど……一番エルフが多い大陸、と言っていい。


この大陸生まれのエルフに限り入国便は無料。

なんでそうなったかは察してほしい。

ほら、エルフだからね……。


竜に装備された籠に乗って、出発。

かなり高度があるので魔法障壁で覆われており、快適だ。

ソフィーは私の影から出ない約束で連れてきてる。

一応今のところ、言い聞かせた約束は守っているのでソフィーは賢いと思う。

人語を理解しているのは、確かだ。


飛行する竜は龍とは別種。

使役可能なおとなしいものだ。

姿は似かよっているけれど……龍は魔法生命体に近いけれど、竜は動物に近い。

知り合いのエルフと喋っていたら、二時間の飛行はあっという間だった。


今回はどんぐり採取だけ、と決めているので古の大森林に転移して、サーチしてみる。

どんぐりのなる木は数種類あるので、この森にもいっぱいあるはず。


(魔界のどんぐりはライバルが多いけれど。魔界以外でどんぐり拾う人はまずいないだろうから……)


あるある。


さっそく魔方陣を立ち上げ、落ちてるどんぐり収集。

そのまま時空庫へ。


選別は後からでいいので、さっさとハグイェアへ行ってしまおう。

こちらでもザーッと収集して、ひよこ島へ。

作業場へ行く前に、我が家のポストをチェックするとリッチキングからのお返事が来ていた。

『是』

一文字のお返事である。


収集は二ヵ所試して十分以内で終るのは確認済みだ。

ならば、さっさと済ませるが吉よ。


「うーん、装備はちゃんとしておくべき……?」


死霊だらけだろうしなぁ……

一応、聖属性の魔道ローブを着ていくか。

無駄な気もするけども。

行ったことがある森だから、さっさと収集して帰ればいいか。

戦闘は避ける方向で──。


『死霊満つる円環の森』

死霊が満ちてるのよ、本当に。

リッチキングの部下だから、傷付けるわけにも行かないしさ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ