ニホンの調味料と魔臓
未知のものを調べるのは、通常より多く魔力を使う感覚がある。
初見でも似たようなものを既に知っていて、それに当てはめて鑑定するのとは全く違うんだよね。
自分の認識とか思い込みで難易度が増減するというか…
そこ除外したとしても、あの魔力の減り方は常軌を逸していて。
長生きの私でも知らないことはまだいっぱいあるんだな。
うとうとしたり起きたりを繰り返して、あの"塊"について考えていた。
時間はかかったものの、私は推測の域はでないけれどようやく結論に達した。
あれがフェンリルがみんな使うものであれば、種族特性であるので
鑑定はそのように出るし、比較的簡単だったはずだ。
そうなると…あの"塊"はオス子犬の編み出した固有魔法である可能性が高い。
オンリーワンの固有魔法は鑑定難易度が一番高いからね。
ヒントがあれば、自分の知識と経験値でどういう部分からアプローチするかを決められるんだけど。
雷の固有魔法を見た時に【雷】【攻撃系】というヒントがあれば最初から雷撃系のものというのを前提に出来るから、鑑定もしやすいってことだ。
それには鑑定する人が雷を知っているかどうかという知識が必須。
知識があればあるほど鑑定精度は良くなるし、推理能力、洞察力も大事。
鑑定魔法は全部を教えてくれるわけじゃないってのが現実の世知辛いところ。
辞書みたいに全部教えてくれれば楽なのにね。
万能感全く無しよ。
ヒントも何もなく手探り状態で鑑定とサーチをしたのだから、効率悪すぎて大量の魔力が持っていかれたってことだと思う。
でも次に似たようなものを見た時に「契約かも?」というヒントになるから、結果オーライとしておこうかな。
オスの子犬は契約後の数日後、詰所を抜け出してきた団長によって
ニーヴという名前を付けてもらった。
名で縛るものではなく、純粋に呼び名として名付けられたみたい。
ニーヴは名付けられて1ヶ月経ったが、まだ我が家にいる。
穴掘り職人のメス子犬の方にも便宜上、ラスピと名前を付けた。
ペロティの傷も癒え、毛も艶を取り戻した。
ニーヴもラスピも健康そのもの。
回復がはやいのは良いことだけど、ちょっと困ったことになってる。
フェンリルの運動不足だ。
良く考えたら当たり前だったわ、ここ狭いもんね。
とにかく番犬番犬!って思い付きで行動しちゃったのは反省ね。
危ないところを保護できたのは良かったけど…
もしかしたらペロティが呼んでたのかもね。
外が暑いので今は室内に居るペロティはずーっと私の足元で寝そべっている。
キッチンで料理をすれば3頭がガン見してくるし、行動はとっても犬!なんだよなぁ。
フェンリルは塩分とか玉葱とか食べちゃいけないものも無いから、厳密には犬じゃないのは私だってわかっているよ。
今日、久しぶりに米を炊いた私はミソをたっぷり塗った焼きおにぎりを堪能していた。
日本の調味料は結構ポピュラーなのだ。
過去に転移してきた先人…ニホンジン達のおかげでね。
流行り廃りは時代で変わっているけど、基本的な調味料はちょっと値段が高めなお店に行くと普通に売ってる。
面白いのはね、日本から転移してきたヒトはニホンの調味料に異常にこだわるんだけど
転生という形で前世が日本だったヒトはそうでもない。
身体も違うし、舌…味覚もこの世界ので育ってるからね。
私はたまたまミソとコメが好きだけど、無きゃ無いで構わない。
パンも大好きだし、それじゃなきゃイヤ!っていう執着は無い。
物欲しげなフェンリル達にもミソオニギリをお裾分けして、いつも通りダラダラと過ごすのが最近のスタイル。
時々人間のメイとして街に遊びに行ったりはしてるけどね。
国民証があればなー。
あっちこっち行けるのに。
あの王子、仕事してんのかな。
ニーヴもう1ヶ月待ってるけど?
そうそう、ギルドに提出した水龍の血は鮮度抜群だったので白金貨4枚の値が付いた。
この国で家に使ったお金がかなり回収出来ちゃったよ。
さすが高価な鮮度保存瓶!だね。
ちなみに一番高値だったのは聖核。
宝石と同じでサイズが大きいと価値が跳ね上がるから…1kg越えだと相当大きい部類。
ほんと、持ってた物でクリア出来て良かったよね。
明日は不動産屋のゼライさんの紹介で、この国の常識の【先生】に会う。
忘れられてると思ってたけど、探してくれてたみたい。
森を抜けて農地を通り抜け、住宅街に差し掛かる手前のまばらに建つ民家に住む未亡人が先生になってくれるらしい。
街の中心部からは離れてる分、我が家からは近いから楽で良いかも。
ゼライさんにはメア大陸の特産品のメア・ビーの巣蜜をあげようと思っていたので、綺麗にラッピングしてある。
未亡人への手土産は何が良いだろう。
好き嫌いも家族構成もわからないし、会ってからかなぁ?
爪整えて磨きながら無難なものを考えてみたが、全くいい案が浮かばない。
お風呂に湯を張ってのんびりつかり、髪の毛ケアもして、清潔感最優先で外見は完璧に磨き上げておこう。
衛生魔法使えば雑菌とか目に見える汚れは落ちるんだけど、入浴はまた別物。
時間と手間はかかるが血行は良くなるし、衛生魔法を使うよりはずっと綺麗になる。
そもそも衛生魔法は除菌目的で編み出されたものだし
不要なものをザッと除去するだけで。
石鹸付けてこすれば落ちる垢とか、毛穴奥の皮脂までは取れてないと思うんだよね。
トリートメント成分も入浴じゃないとプラス出来ないし。
ペロティ達だって衛生魔法で清潔ではあったけど、シャンプーしたら明らかに白さが際立ったしふわっふわになったもの。
魔法は便利だけど、自分でやった方が良いこともいっぱいある。
実際、自己魔力を外に出せないヒトは自分で家事や仕事をやってるし。
過去の転移者や転生者は、どうにか電気を普及させようと頑張っていたけれど
電気や電化製品が根付かなかったのは、この世界に魔力が存在してたからなんだろうなぁ。
この世界の生命体は身体のどこかに魔臓を持っていて…魔力はそこから発生するので言ってしまえば無料電力よ。
外部出力の電気が普及出来なかったのも仕方なかったと思う。
需要が0だった訳ではないのよ、転移してきた人には魔臓が元々無いから。
こっちの生命体にだって例外はある。
生まれつき魔臓がないとか、事故や病気で失った人も居るわけだからね。
なので大都市に行けば電化製品扱ってるお店もあるはず。
どうやって雷核を電気に変換してるのか知らないけど、No魔力のヒトはそれ使えば日常生活に不便は無い。
よし。髪もお肌も艶々だ。
ちょっと早いけど、今日は寝てしまおう。